東京オリンピックのボランティアは、どうしてこんなに集まった?
2020年の東京オリンピックまであと少し。
次のオリンピックで日本はいくつ金メダルを取れるのか、今からとても楽しみです。
その東京オリンピックのスタッフが無償ボランティアとして一般募集されたことはご存知だと思います。
8月の突き刺さるような日差しの中、会社も休んでタダ働きをする。
そんな人、8万人(ボランティアの募集人数)もいるの? と思ったら、いたんです。
しかもボランティア募集からわずか2ヶ月あまりで、8万人の目標を達成してしまいました。
そのうち44%は外国籍の方だということですが、なぜ8万人もの人々が熱中症も懸念されている中でのボランティアスタッフに立候補したのか?
その理由を「無料になったキャラメル実験」で解説いたします。
- タダとお金を支払うのは、どっちがいい?
- タダだと自分の欲を抑え、周りの幸せを考えるようになる
タダとお金を支払うのは、どっちがいい?
ウリとエルナンは、「スーザンのクッキー」の二つのシナリオを想定。どんな結果になるのか実験しました。
シナリオ1:あなたは学生だ。遅い午後の授業に向かう途中、学生センターの側を急ぎ足で通り抜けようとすると前方に売店があることに気が付いた。
「スターバーストのフルーツキャラメル、1個10セント」という張り紙が目に飛び込んでくる。
そういえばまだランチを食べていなかったな、それに最後にスターバーストのフルーツキャラメルを買ったのはいつだったっけ? そうだ、映画館だったな、と思い出す。おまけに1個たったの10セントだ。そこで店に立ち寄ってキャラメルを10個買う。これが今日のお昼ご飯だ。
シナリオ2:設定は同じだが、今回は「スターバーストのフルーツキャラメル、無料」という張り紙が出ている。
小さい頃映画を観に行って、スターバーストのキャラメルを口に放り込んだ記憶がよみがえってくる。そういえば父さんと母さんが何も言わずに甘いものをたっぷり食べさせてくれた数少ない機会だったなと、懐かしさがこみ上げる。
さて、あなたならどうしますか?
キャラメルを何個取るでしょうか?
需要の法則によれば、無料ともなれば、キャラメルを欲しがる人は増え1人が持っていくキャラメルの個数も増えるはずです。安ければ安いほど需要が増すと、経済学では考えますので。
ウリとエルナンは、学生センターに仮説のお菓子売り場を設けて、無料と1セントの張り紙を交互に張り出して、時々二つの条件を切り替えました。
そして売店に立ち寄った人数と、学生が買うか持って行くかしたキャラメルの個数を数えました。
すると結果はこうでした。
1セント・・・58人
無料・・・207人
需要の法則通り、価格の低下によって商品を手に取る人が増えたのです。
では、個数はどうでしょう?
1セントと無料で約3倍もの人数差があるのだから、持って行かれたキャラメルの個数も無料の方が多いはず。
そう思いますよね?
しかし結果は全く反対だったのです!
タダだと自分の欲を抑え、周りの幸せを考えるようになる
1人当たりのキャラメル平均個数を比べてみると
1セント・・・平均3.5個
無料・・・平均1.1個
キャラメルが無料になると、学生たちはかなり自制したというわけです。
社会規範に沿って全員が礼儀正しく、無料のキャラメルを一つだけしか持って行きませんでした。
これは、需要の法則に反しています。
では、総合的にどんな心理が働いたのか考えてみましょう。
無料のキャラメルを取った学生は、お金を払った学生の3分の1以下しか持っていっていません。キャラメルが他の人も取れるように持っていく個数を制限したのでしょう。
つまり金銭が絡まないとき、私たちはあまり利己追求をせず、他者の幸福を気にし始めるのです。
値段が無料というのは魅力的にはなるものの、同時に人々は他の人のことを考えたり気にかけたりするようになり他の人の利益のために自分の欲望を抑制するようになるのです。
東京オリンピックの無償ボランティアには、もしかしたらこのような狙いがあるのかもしれませんね。
とはいえ、ボランティア=タダというのは間違いで、ボランティアの元々の語源には無償という意味は含まれておらず、志願するということを意味しているのだそうです。
東京オリンピックの募集要項には、1日8時間程度、連続して5日以上で合計10日以上できる人、事前の研修にも参加できる人とあり、交通費も宿泊費も自己負担で、『東京大会を成功させたいという熱意をお持ちの方』と書かれています。
協賛費は現時点ですでに4000億円とも言われているのに人件費はゼロというところに目が向くと過度な利潤追求のようにも思えますが、無料のキャラメル実験結果からすると、その方がより質が高いオリンピックを開催できる気もしてきますね。
何はともあれ、「誰かのために役に立ちたい」というボランティアスタッフの想いに応えられるような2020年東京オリンピックを期待したいですね!