ママと赤ちゃんは「匂い」でつながってる! 嗅覚が導く母子の絆

映画を見たり、ファッションを楽しんだり、音楽を聴いたり、趣味のドライブに行ったり……日々の生活では、五感のなかでもとくに嗅覚を意識的に使うような場面はあまりありません。「人間はほかの動物に比べて鼻が利かない」と思っている人も多いでしょう。しかし、ママと赤ちゃんの間では、とくに嗅覚が重要な意味を持つようです。心理実験を通して、人間の動物的な能力を知ることができます。

  1. 生まれたての赤ちゃんがママのおっぱいを探り当てられる理由
  2. ママの嗅覚もすごかった!乳児かぎ分け実験
  3. パパは残念ながら……
  4. 匂いでつながる母と子
  5. 出産体験で研ぎ澄まされる人間の本能

生まれたての赤ちゃんがママのおっぱいを探り当てられる理由

生まれたての赤ちゃんは、目がほとんど見えません。でも、きちんとママのおっぱいを認識して、乳首をくわえることができます。考えてみると、実に不思議だと思いませんか。目隠しをしているようなものなのに、どうしてピンポイントで母乳の出る部分を探り当てられるのでしょうか。

実は、赤ちゃんは嗅覚で母乳をかぎ分けていることが知られています。この世に生まれてきてすぐに、たくさんの匂いがあふれるなかで、自分の食料をきちんとかぎ分けられるというのはすごいことですね。

「赤ちゃんには、まだ動物的な本能が残っているんだな」と考えるかもしれません。でも、大人だって負けていませんよ。出産直後のママたちが協力した心理実験で、それがわかっています。

ママの嗅覚もすごかった!乳児かぎ分け実験

心理学者のラッセルは、大学付属の医療センターで出産した26人の母親に対して、次のような実験を行いました。出産後、少し休んだ後に目隠しをして、3人の新生児のうちどれがわが子かを、匂いをかいで答えてもらったのです。被験者は半分に分けられ、半分は6時間後に、もう半分は48時間後にテストされました。

医療センターでは、出産直後の30分間、ママと新生児が触れ合える時間を設けています。新生児は沐浴を受け、毛布にくるまった状態でベッドに寝かされ、母親は触れ合いの後、別室で休んでいました。

単純に考えれば、3人の新生児のうちどれがわが子かを言い当てられる確率は1/3です。しかし、出産6時間後のテストでは、なんと61%もの正答率をたたき出し、48時間後も58%と、高い正答率が得られました。母親は、匂いで我が子をかぎ分けられるという仮説が証明されたのです。

パパは残念ながら……

この結果については、「自分と同じような匂いだから、かぎ分けられたのでは?」という疑問も生じてきます。そこでラッセルは、普段妻の匂いをかぎなれている夫、つまり新生児の父親に対しても、誕生から24~48時間の間に同じ実験を行いました。すると、正答率は37%。期待値の33%と、大して変わりません。

「そもそも、夫が妻の匂いを覚えているかどうかわからない」と疑問視する声もあるでしょう。しかし、夫が妻の匂いをかぎ分けられることは、1977年に心理学者のホールドとシュライドが報告済みです。新生児に妻と似た匂いを感じることができれば、夫は我が子を言い当てられるはず。でも、そのような結果にはなりませんでした。

匂いでつながる母と子

したがって、出産後の母親は、初めのごく限られた時間のうちに、わが子を匂いで覚えているのだと仮説を立てることができます。これは、「間違いなく自分の子どもに自分の母乳を飲ませなければ」という感覚ともつながるのかもしれません。

母乳は、赤ちゃんが生きる源でありながら、母親の体内環境すべてを引き受けて出される体液です。新生児に欠かせない栄養素のほか、母親が持つ菌やウィルスも混じっています。それらが新生児の免疫力を高める助けになることもありますが、体に有毒な菌やウィルスが含まれていたら大変です。自身の安全な母乳を飲ませたいというのは、母親の本能といえるでしょう。赤ちゃんは「お乳を」ママは「わが子を」と嗅覚で求め合うことは、以後の赤ちゃんの成長のためにも大事なのです。

出産体験で研ぎ澄まされる人間の本能

現代人の私たちはパソコンやスマホで目を酷使し、耳を使ってコミュニケーションを行っています。鼻を使うシーンはなかなかありませんが、出産というとても本能的な体験では、嗅覚が一番大切な役割を果たすのだから不思議なものですね。

目には見えない母子の絆があることは漠然と理解できても、その正体が匂いだったとは……。目からうろこの心理実験をご紹介しました。

参考:「対人社会心理学重要研究集4」

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