いじめに悩む子どもは少なくありません。その一方で、大人がどんな援助をできるのかに、頭を悩ませてしまう人もいることでしょう。大人にいじめの相談をしない子ども多いからです。子どもをいじめから救うための方法をまとめてみました。
- 子どもの3割は相談しない
- 相談の訓練も必要
- 相談を受けたときのNGワード
子どもの3割は相談しない
2019年度に全国の小中高校などでいじめが発覚した学校は、全体の82.6%と過去最高となりました。それだけではなく児童生徒の自殺も平成以来初めて300人を超えた332人に次ぐ317人という深刻な状況が明らかになりました。
このようないじめを止めたいと思っている大人は多いでしょう。特に自分の子どもがいじめられている親は、子どもへのいじめをどうやって止めるのかに心を砕くケースが多いでしょうし、そもそもいじめられてないのか不安と感じる人も少なくないでしょう。
子どものいじめを深刻にする要因の一つは、いじめの被害者当人がその被害を相談しないことです。大津市の実施したアンケート調査によれば、小中学生のいじめ被害の経験を持つ子どもの相談状況は以下の通りです。
・親に相談 36.5%
・友達や先輩に相談 8.0%
・学校の先生に相談 13.6%
・上記以外の人に相談 2.3%
・誰にも相談しない 28.3%
・無回答 11.3%
約3割が誰にも相談しないという結果です。しかも中学生だけを抜き出せば、「誰にも相談しない」割合は、35.3%に跳ね上がるのです。
相談の訓練も必要
では、どうして子どもは相談しようとしないのでしょうか?
アンケート結果には、「親に迷惑をかけたくない」「いじめがより悪化する」といった回答が寄せられたそうです。
子どものいじめでは相談すること自体が恥ずかしいとされる傾向にあり、誰に相談していいのかわからないというケースも少なくありません。また、すでに相談して状況が変わらなかったという経験から、無力感に支配されている子どもいるようようです。
こうした状況を改善するためには、以下の4つのことが大切だと評論家の萩上チキ氏は指摘しています。
①いじめが起きにくい環境をつくること
②相談しやすい環境をつくること
③本人や周囲が相談するための訓練を行うこと
④本人が相談しなくても解決できる状況をつくること
この4項目のなかで、あまり耳にしたことがないのが、「③本人や周囲が相談するための訓練を行うこと」でしょう。これはいじめにあったときに、どこに相談するのかといった相談先や、被害の記録を付けるなどの対策などの確認を含む準備行動です。
親や教師などに相談しにくい場合は、LINEのいじめ相談など、行政機関や民間団体の連絡先も教えておくといったことも、いじめ被害者の力になるようです。
相談を受けたときのNGワード
では、実際にいじめの相談を受けたときは、子どもの話にしっかりと耳を傾けることが重要になります。そして以下のようなリアクションを取らないことが重要になります。
【被害者の避難】
「あなたに隙があったのでは」「あなたが強くならなくちゃ」「縁を切れって言っただろう」「喧嘩両成敗。お互い様だ」
【受忍の押し付け】
「許してあげなさい」「その年齢ではよくあることだ」「一年生のうちは我慢することだ」
【楽観的な不関与】
「かまってほしいだけだから、無視していればなくなるよ」「別のことでいつか見返してやりなさい」
【非対応の宣言】
「距離がないと何もできないよ」「それぐらい自分で解決しなさい」「問題を起こさず仲良くしなさい」
こうした態度をつい取ってしまうこともあるのではないでしょうか。しかし、こうした態度はいじめ被害者をさらに絶望させるだけではなく、相談する意欲も奪っていきます。どんな状況かを把握できないと、いじめから子どもを助け出すのが難しくなりがちです。
せっかく相談してれくれた機会を逃さないためにも、相談者をがっかりさせる上記のような言動をとらないようにしましょう。
大人になると、子どもの頃の感覚を忘れがちです。些細なことに見える問題にも向き合うことが、いじめを解決する糸口の一つかもしれません。
子どもの気持ちをもっと知りたいと感じたら、こちらの記事もご覧ください。
参考:『「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるのか』(松本俊彦 編/日本評論社)