子どもが生まれたら、夫婦の生活は金銭的にも時間的にも負担が大きくなります。それはママだけでなく、パパも同じです。「赤ちゃんが生まれてから、不安やイライラで眠れない」と感じたら、男性もうつを疑ってください。そして上手に育休をとりましょう。
- 産後うつとは
- 男性も産後うつになる可能性がある
- 女性には産後サポートがあるが、男性はほったらかし?
- 男性が産後うつになる前に、思い切って育休を!
- 家族全員が健やかに過ごせるような働き方を
産後うつとは
産後うつとは、出産後に抑うつ状態が数週間から数か月続くものです。なぜか極端に悲しくなる、怒りっぽくなる、何もかもに興味がなくなるといった状態になり、周囲から「出産おめでとう」と言われる祝福された状態にもかかわらず、暗い気分で過ごすことになります。
産後うつ病の原因は、さまざま考えられます。、産後エストロゲンや甲状腺ホルモンといった女性特有のホルモンが急激に低下することなどが作用していると言われています。また、夫やその他家族からのサポートが得られないと本人が感じてしまうことも、一因に挙げられるようです。
男性も産後うつになる可能性がある
産後うつは、その原因の一端を産後のホルモン分泌に求める説があることから、出産を経験する女性に特有のものと捉える人が大多数でしょう。しかし、新生児を世話する慣れない生活に疲労するのは、男性も同じようです。
兵庫医療大学の西村明子教授らが2012年から15年にかけて行った研究では、およそ2000組の乳児の親に調査を行ったところ、13.6%の父親がうつ状態と診断されました。女性が産後うつにかかる割合が10~15%程度とされているので、父親も母親と同様、うつに陥る危険性があるといえます。
女性には産後サポートがあるが、男性はほったらかし?
女性の産後うつは比較的よく知られており、各自治体の保健福祉窓口など、健康支援機関がサポート体制を敷いているケースが多く見られます。女性が母子手帳を取得申請しに行くと、自治体によっては30分から1時間程度、不安なことについての聞き取りや食事指導が行われ、精神科への通院経歴があるかなども調査されます。
また、産後1ヶ月ほど経つと、自治体による新生児訪問が行われます。新生児の体重測定と授乳指導、そしてうつ状態に陥っていないかをチェックするためのアンケートが渡されます。アンケートでうつ傾向にあると判断された母親については、定期的に電話相談などでのサポートを行うなどして見守り体制が敷かれるのです。
一方で、今の日本で男性が産後うつに陥ると、認知度の低さゆえ、サポートしてくれる仕組みがなかなかありません。母親は妊娠や出産によって自治体から認知され、サポート情報が集まってきますが、父親は孤立してしまいがちで、情報もうまく集められないのが現状です。
男性が産後うつになる前に、思い切って育休を!
子どもが生まれると、夜中も赤ちゃんの世話をしなければならないことから、寝るのは深夜でまた早朝からの出勤が続き不眠になりがちです。それを抜きにしても、不安が頭をよぎって眠れなかったり、イライラすることが多くなったり。子どもと向き合うのが辛く感じるようになったら、思い切って育休をとってみてはどうでしょう。
育児・介護休業法により、子どもが一歳に達するまでの間は、性別を問わず育児休業を取得できると定められています。また、子どもが一歳を超えても、保育園に入れないなど休業が必要とされる場合には、子どもが最長2歳に達するまで取得可能です。
また、夫婦で取得すれば、「パパ・ママ育休プラス制度」により、子どもが1歳2ヶ月になるまで育休期間を延長できます。雇用保険に加入していれば、原則として賃金の67%の給付を受け取ることができるため、経済的な不安もやわらぐのではないでしょうか。
家族全員が健やかに過ごせるような働き方を
育児休暇は男女問わず利用できる制度にもかかわらず、厚労省の調査によれば男性の育休取得率は6%程度にとどまっています。いくら給与の3分の2は保障されるといっても、キャリアが止まってしまう育休を選ぶのは、勇気がいることかもしれません。
しかし、産後うつに陥ってしまっては、働きたくても働けなくなります。うつ状態がひどくなれば、育休どころか退職に至ってしまうかもしれないことを考えれば、自分のためにも家族のためにも早目に育休をとることが肝心なのではないでしょうか。
不調が続いたら、まずは自分の心の訴えをじっくり聞いてみてください。そして、家族全員が健やかに過ごせる働き方を考えてみてはいかがでしょう。
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参考:父親・母親に対する産後うつ病予防統合プログラムの開発/平成30年度雇用均等基本調査(速報版)