部下から無言で不満げな視線を投げかけられる、お客様のクレームをなかなかおさめられない……。周りとなんだかうまくいかないと気づいたら、コミュニケーションのあり方に注目してみましょう。ペーシングの手法が、あなたを助けます。
- ペーシングとは、相手にペースを合わせて親近感を獲得すること
- 具体的に合わせたい「ペース」の種類
- 「双子コーデ」は究極のペーシング!
- 親近感が安心につながり、信頼関係の土台になる
- 関係がギスギスしてきたと感じたら、ペーシングを試してみて
ペーシングとは、相手にペースを合わせて親近感を獲得すること
ペーシングとは、簡単に言えば、相手にペースを合わせることです。1970年代に、心理学者リチャード・バンドラーらによって確立されたNLP(神経言語プログラミング)という心理学的手法のなかで、人とラポール(信頼関係)を築くための第一歩としてペーシングが提唱されています。
人との関係性においてペースを合わせることが大事というのは、ジョギングを例にとってみればわかりやすいでしょう。走りながら会話を楽しみたいと考えたときには、相手と足並みをそろえなければなりません。自分だけ先に走って行ってしまっては、コミュニケーションは成立しませんよね。お互いにペースを気にしながら、歩幅を合わせて走ることによって、会話が可能になります。
具体的に合わせたい「ペース」の種類
話をしている相手とペースを合わせるというのは、具体的にどのようなことなのでしょう。合わせたいペースには、3つの種類があります。
・話のテンポ
ゆっくりおっとり話す人もいれば、早口で話す人もいます。この会話のテンポが合わなければ、相手はイライラしたり、違和感を覚えたりしてしまいます。相手が話すスピードやリズムなどを合わせることで、話のペースが合っていきます。
・呼吸
話をしながら相手の肩の動きをよく観察し、呼吸のリズムを観察しましょう。そして、相手が息を吸うタイミングで吸い、同じタイミングで吐き出すことを意識的に繰り返しましょう。同じ呼吸になるよう合わせれば、ペーシングはほぼ完成です。昔から「息が合う」「あうんの呼吸」といわれるように、親密な関係であればあるほど、呼吸がシンクロします。逆に、呼吸から合わせることができれば、親密な関係性を築く糸口になるのです。
・感情の起伏や雰囲気
相手が暗いトーンで話をし、悲しい雰囲気であるならば、自分もトーンを少し落として会話をします。逆に、相手がテンション高く話をするなら、こちら側も気分を盛り上げてトークを楽しみましょう。こうして気分を共有することで、ペーシングが可能になります。
「双子コーデ」は究極のペーシング!
同じ服や小物を身につけ、同じような髪形で街に繰り出す二人連れの女の子たちの格好を、最近では「双子コーデ」と呼び、流行しています。彼女たちはもちろん双子ではなく、仲の良い友達です。
「彼女たちは、仲が良いから同じ格好をするのだ」と考えるのが一般的でしょう。しかし、心理学的観点から見れば、彼女たちは、同じ格好をするからこそ、より仲良くなるのだと言うことができます。髪の毛からつま先まで相手に合わせる双子コーデは、究極のペーシングです。
親近感が安心につながり、信頼関係の土台になる
もちろん、ビジネスにおいて服装上の双子コーデは無理があります。しかし、話し方や雰囲気を、話し相手そっくりに寄せてペーシングを行えば、親近感がぐっと増すでしょう。話をする場に一体感が生まれれば、相手は安心してくれます。そして、その安心こそが、信頼関係を築く土台となるのです。
また、親近感が生まれるのは、会話上のペーシングによってだけではありません。日本におけるNLPの提唱者の一人、山崎啓支氏は、著書『マンガでやさしくわかるNLP』の中で、次のようなエピソードを紹介しています。
私と仕事上の取引関係がある知り合いに、兵庫県北部の高校出身の人がいます。彼は大学を卒業して東京に赴任して営業職に就きました。そこで営業のため訪れた会社の担当者と話していて、たまたま出身高校が同じだとわかったのです。同郷の人も少ない東京で出身高校が同じ二人の会話はとても親密なものだったと容易に想像できるでしょう。二人は意気投合してセールスは大成功だったそうです。
このように、相手と自分との共通点を見つけ、話題にできれば、好感を持たれる確率はより高くなります。何気ない会話の中から、共通点を見つけてみましょう。
関係がギスギスしてきたと感じたら、ペーシングを試してみて
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参考:『マンガでやさしくわかるNLP』山崎啓支、日本能率協会マネジメントセンター/『お客様のココロをつかんで離さないNLP営業心理術――ニーズを引き出す話法』菅谷慎吾、宮崎聡子、キニナルブックス