忍耐強い行動が必要なことは多いでしょう。苦しいときにもじっと耐えて再起を図る人は、結果的に成功にも近くなります。でも、どうすれば忍耐力を強めることができるのでしょうか?忍耐力を高める方法について解説していきます。
- 他人からの賞賛で面倒な作用も我慢できる
- 誇りを持てば誘惑に負けない
- ポイントの一つは自己効力感
- 自己効力に影響する4つのポイント
他人からの賞賛で面倒な作用も我慢できる
米国ノースイースタン大学のデイヴィッド・デステノ氏とニューサウスウェールズ大学のリサ・ウィリアムズ教授は、「誇り」と忍耐強さの関係について面白い実験をしています。
まず、多くの人が関心を寄せない「視覚空間能力」を測定し、実験参加者の一部にだけ「これは驚くような得点だ」と誇りを抱かせるように研究者が声掛けをしました。その上でほとんどの人がちょっと面倒だと感じる「頭に描いたイメージを回転させる作業」をいつまで続けられるのか測定したのです。
そうすると声かけをした実験参加者は、自らの資格空間能力を伸ばすために、誇りを抱いていない人に比べて40%も多く面倒な作業を続けたそうです。面白いことに、「視覚的空間能力」の順位が高いことを知らされたのに、研究者から称賛されなかった実験参加者は、一般の実験参加者と同じ程度にしか面倒な作業を続けられませんでした。
つまり、ただ順番が高いだけではなく、他人から称賛されて「視覚的空間能力」への誇りを持てた人だけが、忍耐強く作業に取り組めたというわけです。
誇りを持てば誘惑に負けない
また、まったく違う方法で誇りと忍耐強さにアプローチした学者もいます。
心理学者のウィルヘルム・ホフマンは、実験参加者に1日7回、先延ばし、過食、飲酒、睡眠などの誘惑に抵抗しようとしたことがあったのかを報告してもらいました。その結果、より強く自分に誇りを感じた人が、目標から目をそらすことになりかねない誘惑を振り切ることができたというのです。
つまり忍耐強く物事に対処するためには、自身の誇りが大きな効果を発揮するというわけです。
一流のスポーツ選手がストイックに身体を鍛え続けられる理由の一つは、選手としての誇りがあるからでしょう。逆に誘惑に負け続け、忍耐強さを発揮できない人は、自身の行動にプライドを持てないケースが少なくありません。
ポイントの一つは自己効力感
では、誇りを持つためには、どうすればいいのでしょうか?
先に書いた「視覚空間能力」のように、誰もが気にしていない能力でも褒められれば「誇り」を持つことができます。ただし、その誇りは実験室を出たら消え去るだろうと、実験者のデイヴィッド・デステノ氏は予想しています。というのも実社会に出たら、ほとんど意味のない能力に対する誇りだからです。
実際、長期間にわたって忍耐強く物事に当るためには、瞬間的に他人に褒められるといったお手軽な経験では厳しいでしょう。もっと自分の能力を信じる力が必要です。
課題達成のために必要な行動を自分ならできるという意識は、「自己効力感」と呼ばれるものです。この意識は自尊感情とも深く結びついています。
自己効力に影響する4つのポイント
誇りを持つために重要なポイントとなる「自己効力感」に影響する4つの源があるとされています。順番に説明していきましょう。
①個人的達成
自ら課題に取り組んで成功する体験です。今回もできたから、次も大丈夫だと思えれば、それが努力にもつながります。小さな達成感の積み重ねが、大きな成功にも、自分の誇りにもつながるのです。
小さな目標を設定して自己効力感を高めていくことが、忍耐力を付けることにもつながるでしょう。
②代理学習
ロールモデルと呼ばれるものです。自分がお手本としたいような人と同じ行動をすることで壁を突破できると考えられることから、自己効力感は高まります。そうした感情が行動を生み出せば、当然のことながら誇りも生まれてくるでしょう。
③言語的説得
これは「やればできる」と励ましたり、「よくできた」と誉めたりする行為です。これは冒頭に紹介した実験での「誇り」のつくり方と同じような方法です。
③情緒的覚醒
これは心や体に起きる情緒的な反応のことです。心が安定して平静な状態なら自己効力感はアップし、逆に普段から不安にさいなまれている人は自己効力感も低い傾向にあります。
つまり自己効力感を高めて、誇りを持った行動ができるようになり、忍耐強くなるためには、安定した心で、ロールモデルを思い描きながら努力し、その成果を他人から褒めてもらうようにすればいいのです。
大きな目標だけだと、努力できない自分に失望してしまうこともあるでしょう。小さな成果を積み重ねながら自己効力感を育てていくことが、誇りを持った生活への近道かもしれませんね。
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参考:『なぜ「やる気」は長続きしないのか』(デイヴィッド・デステノ 著/白揚社)/『自尊感情の心理学』(中間玲子 編著/金子書房))