良い人間関係を構築するためには、自分を受け入れる「自己受容」が大切と言われます。そこで「自己受容」の意味と、そのトレーニング方法を調べてみました。
- 他人との関係の基礎にある自分との付き合い方
- 自己受容と自己肯定は違う
- 自己受容が出発の起点となる!
- 自己受容の訓練方法って?
他人との関係の基礎にある自分との付き合い方
自分自身をあるがままに受け入れられるようになると、他人ともよい関係が築けるようになると言われています。『「これでいい」と心から思える生き方』(野口嘉則/サンマーク出版)にも、次のように書かれています。
私たちは、自己受容をできる度合いに応じて他者受容もできるようになり、健康的・建設的な人間関係を築いていけるようになるのです。
自分自身との付き合い方が、他人との付き合い方の基本となるのです。自分を受け入れられないと、他人も受け入れにくいというのは感覚的にわかる人も多いのではないでしょうか。
自己受容と自己肯定は違う
さて、自分を受け入れると聞いて、「自分を好きになること」だと勘違いする人もいるでしょう。しかし自己受容と自己肯定は違います。自分の性格の嫌いな部分があったとしても、それを無理に「素晴らしい」と肯定する必要はありません。 無理に好きになり、ポジティブにとらえ直そうとするのではなく、
「今の自分をいいも悪いもなく認めて、ゆるすこと」
「ありのままの自分を認めて、そっくりそのままだきめる」(『「これでいい」と心から思える生き方』)
ことが自己受容です。
自分をネガティブにとらえての自己批判も、必要以上にポジティブにとらえる自己肯定も、自分の肯定に条件が付いてしまいます。
例えば、明るい自分が好きで内気な自分が嫌いだったとしましょう。そのとき「内気な性格さえ直せば素晴らしい」という考え方も、明るい自分だけを見つめるのも、「内気は思慮深いに通じるから好きにならなくちゃ」も、自分のすべてを認めていません。自己受容は、自分が好きになれない「内気」も認めて許すことです。
自己受容が出発の起点となる!
自己受容は、変化の出発点だと書いている本もあります。
例えば、食べ過ぎてしまうことが苦痛だとしましょう。このときやりがちなのが、自分を責めること。しかしこうした自己批判から自分の行動を変えようとしても長続きしません。
太っていることを恐れないで、なぜあなたが太っているのかについて関心をもとう。そうすることが、やせることの始まりである。(『人を伸ばす力』エドワード・L・デシ リチャード・フラスト/新曜社)
まず、自分を変えたいなら行動に興味を持ちます。どうして食べてしまうのかを考えるのです。そうすると特定の日だけ、食べていることに気づくかもしれません。さらに考えてみたら、上司と長時間話したときだけ暴飲暴食にはしっていることがわかったりするかもしれません。
そうした因果関係がわかれば、自分を非難するのではなく、上司と距離を取ることで食べすぎも少なくなっていきます。そうやってストレスで食べてしまう自分をも認めることで、行動を変化させ続けることができるのです。
意味のある変化は、自分を受け入れ、自分の行動の理由に対して興味をもち、そして、今までとは違ったようにしようと決めた時に起こるのである。(『人を伸ばす力』)
自分の行動を変えたいと考えている人にとっても、自己受容は力を発揮するようです。
自己受容の訓練方法って?
さて、何の条件を付けることもなく、生きているだけで素晴らしいと思えるようになるための訓練方法を以下に紹介しましょう。
(否定的な)感情がわいてきたときに「自分を見つめる自分」がそれに気づいて、感情が湧いてきたこと自体を受け入れようにするといいのです。(『「これでいい」と心から思える生き方』)
これを具体化する方法が、
「自分が悲しい気持ちになっていることに気づいたら、『悲しいんだね』と自分にささやきかける」(『「これでいい」と心から思える生き方』)
ことです。心の中でつぶやくだけでも、自分だけに聞こえるぐらいの小声でもかまいません。
私たちは孤独感や無力感など自分に否定的な感情が湧いてくると、「これはよくない感情だ。感じてはならない」と、マイナスの感情を心の隅に押し込めようとします。しかし悪感情はなくならないので、ずっと暴れ続けます。
一方、「悲しいんだね」とか「怒っているんだね」と自分に声をかけると、私たちは自分の感情を見つめる側に立つことができ、隅に押し込めた感情に振り回されずに客観視できるようになります。
ダメ出しをせず、冷静に自分の感情を扱うことで、自分を受け入れていく。その地道な訓練が自己受容につながり、結果として自分を変え、他人との関係性も変えていくようです。
心理学に興味のある方はこちらもご覧ください。
参考:『「これでいい」と心から思える生き方』(野口嘉則/サンマーク出版)
『人を伸ばす力』(エドワード・L・デシ リチャード・フラスト/新曜社)