新型コロナウイルスの影響で、在宅で仕事をするテレワークが一気に増えました。しかしテレワークが広まったことで、社内コミュニケーションを不安に思う人も増加しています。そこで社内のコミュニケーションをどう変えるべきかをお伝えします。
- テレワークはコミュニケーションが心配
- テレワーク成功5つのポイントとは
テレワークはコミュニケーションが心配
新型コロナウイルスの影響で、職種や地域によっては多くの企業がテレワークを実施するようになりました。楽天インサイトのアンケートでは、在宅勤務が始まったり、頻度が増えた人は23.1%に過ぎません。しかし東京都が行った1万社を対象としたアンケートでは、4月の調査で62.7%がテレワークを「導入している」と答えているのです。
こうした働き方の変化に戸惑いを感じている従業員も少なくないでしょう。MMD研究所とスマートアンサーが共同で実施した調査では、在宅勤務で困った点は何かという質問に、29.1%が「社員同士のコミュニケーションが減った」と答えています。
Zoomに代表されるWeb会議ツールでもコミュニケーションが取れるのではと感じる人も多いと思いますが、じつは実際に会った場合とWebを介した形でのコミュニケーションに違いがあるという研究が、心理学で積み上げられています。
例えば、コミュニケーションの相手が、あたかもそこにいるかのような感覚を、「社会的存在感」と呼び、それらは対面しているときが最大でメディアによって減少していくことが実験によってわかっているのです。
実際、Web会議で話していても、相槌を入れるタイミングがズレることで、ちょっと会話が間延びしてしまうといった経験があるのではないでしょうか。 そのちょっとしたズレが、話の行方に影響を与えることも。例えば何かを打ち明けようとしていたとき、間延びした返事が返ってきて話したくなくなるといったことも起こるのです。
テレワーク成功5つのポイントとは
「組織における電子コミュニケーション研究の新展開」(松嶋登)には、次のような記述があります。
どのような問題なのか事態の定義が不明確であり、とりわけ相手の反応を探り合いながら相互に調整していくことが求められる多義性が高い状況では、やはり対面的状況に典型的に見られるような「リッチ」なメディアが必要である。
こうした心理学の研究に基づけば、「暗黙知を含んだ情報共有」や「組織文化の共有」には対面が必要であり、Webでは難しいという結論になります。
しかし大阪大学の新井田統氏は、この結論に疑問を感じ、大手製薬会社のテレワーク導入をフィールドワークして、「情報共有」「新人育成」「仕事のプロセス評価」「チーム意識醸成」などがテレワークでうまくいく方法を研究しました。
そこで、この研究論文から、テレワークを必要なコミュニケーションのポイントをまとめていきましょう。
①新人であっても積極的に情報を取りにいく
何となく現場に居て、現場の空気を読んでいれば必要な情報が得られるという状況ではなくなります。
「問題点があれば、あえて自分が言わなければ誰も分かってくれないし、困ったことも自分で言わなければいけないわけですよね。そういう部分を積極的にね、どんどん発言していかないと、メールも打っていかないと自分が困ってしまう」(「組織における電子コミュニケーション研究の新展開」)
「見て覚える」ができない分、必要な情報は自ら取りに行くという意識が必要になります。そして積極的に質問できる雰囲気も必要になってくるということでしょう。
②どんな情報が必要なのか考えて会議する
「なんか意識を持ってやらないと、なんか目的をもってやらないと、ことは前に進まないですよね」(「組織における電子コミュニケーション研究の新展開」)
これまでの情報共有は、何となくでもどうにかなりました。対面で一緒にいる時間が長ければ、あえてどんな情報を共有するのかを考えなくても、日々の業務で伝わっていったからです。しかし、何となくの情報が少なくなった分、業務を遂行するためにどんな情報が必要なのかを、テレワークではしっかりと考える必要があるようです。
③わからないことはすぐに聞く習慣をつける
疑問を解消できる機会が少ないのも、テレワークの特徴です。そのためわからないことをためてしまうと、仕事も溜まってしまう傾向にあるようです。そこで、わからないことはメールでも何でも聞いておく姿勢が必要となります。
「まず、分かんないことは、絶対、聞くという習慣はつけていましたし。そこは相手のこと構わずにつかまえても」(「組織における電子コミュニケーション研究の新展開」)
若手は質問する機会に飢え、上司も若手に教える時間が減っているのを自覚しているので、互いの積極性がプラスに働くことを、このフィールドワークは報告しています。
先輩や上司も自分の知っていることは、どんどん教えていくという姿勢が出てきたそうです。
④上司が部下と直接会う機会を均等にする
テレワークは、直接会った方がアピールできるのではないかという意識が働きがちです。だからこそテレワークが進んだ職場では、評価者である上司が部下と会う機会を均等にすることで、不公平感がなくなるようです。
⑤何を評価するのかを明確にする
仕事を結果だけで評価するのが危険だと感じていても、仕事のプロセスが見えないというジレンマがテレワークにはあります。だからこそ、どんなプロセスを評価するのか、それを確認するためにはどうしからいいのかを考える必要があるようです。
心理学に興味のある方はこちらもご覧ください。
参考:「組織における電子コミュニケーション研究の新展開」(松嶋登)
「テレワーク『導入率』緊急調査結果」