先延ばしを悩んでいる人は少なくありません。その対策方法も、けっこう知られています。しかしその心理的な原因は意外と知らない人が多いのかもしれません。心理的な原因から考えられた対策方法を紹介します。
- 先延ばしの根源は自尊心の低さ
- 先延ばしで状況はどんどん悪化する
- 「自己破壊サイクル」は少しずつ進む
- 先延ばしを克服する4つの方法
先延ばしの根源は自尊心の低さ
先延ばしを時間管理や意志力の問題だと思っている人は少なくないでしょう。実際、何らかの誘惑に負けて先延ばしをした記憶がある人が多いので、意志力が足りないと思うのも不自然ではありません。
しかし、先延ばしの研究を続けてきたJoseph Ferrari教授は、習慣的に先延ばしをする人の心理的特徴を、自尊心の低さだと指摘しています。
さらにセラピストのElaine BirchalL氏とSuzanne Cronkwright氏は、先延ばしと自尊心の低さは卵と鶏のようなもので、たがいに影響しあって状況を悪化させると説明しています。つまり先延ばしをすることで自分を非難し、それが自尊心と自身の能力を弱めて、結果さらに先延ばしをしてしまうというわけです。
そもそも人は自分の幸せや利益のために、すべてのタスクをこなすことはできないし、期待されたレベルの仕事を達成できないるものでもないのだ、というElaine Birchall氏とSuzanne Cronkwright氏の指摘は思い当たる節が多いのではないでしょうか。
先延ばしで状況はどんどん悪化する
よく言われている先延ばしの対策方法は、手を付けられない行動そのものに焦点を当てるものです。例えば手を付ける心理的な壁を低くするために作業を小分けにしたり、実際に動いてしまうとやる気がでるという作業興奮を刺激するために、5分だけやってみるといったような方法です。
上記の方法はそれなりに効果があるのですが、そもそもタスクが多すぎると、作業興奮を引き起こすことに疲れてしまい、結局、先延ばしをして、それがまた自尊心を傷つけるといった悪循環にはまってしまいます。
さらに状況が悪化すれば、先延ばしは金銭的なペナルティーや人間関係の崩壊にもつながっていきます。こうした副次的な問題にも対処しながら、終わらないタスクがどんどん増えていく中で、不安は強くなり、自身も喪失してしまうのだとElaine Birchall氏とSuzanne Cronkwright氏は解説しています。
そういう日々が続くと、先延ばしの時間はどんどん増え、気づけばタスクを処理する時間を大きく上回るほど、ムダな時間を過ごすことにもなりかねません。
「自己破壊サイクル」は少しずつ進む
自分自身で限界や複雑な状況を作り出し、目標達成を難しくしてしまうことを自己破壊と呼びますが、先延ばしと自尊心の低下によって起こる「自己破壊サイクル」について、コロラド大学ボルダー校Iskra Fileva博士は、その発端となる行為について次のように述べています。
前日に比べて、空想に少し時間を費やし、一日の仕事を少し少なくすることから始まります。
先延ばしは一気に始まるまるわけではないということです。そして重要なことは、ひどい状態の先延ばしと自尊心の低下が魔法のように一瞬にしてなくなるわけではないというのです。少しずつ増やしてきた「空想の時間」が悲劇を生んでいるのですから、その時間を少しずつ行動へと振り分けていくことが必要になります。
先延ばしをするために選んだ時間つぶしの行動(ネットサーフィンやテレビ、ゲームなど)の時間を、少しずつ減らすなかで、自尊心を回復させ、先延ばし癖を克服する必要があるようです。
先延ばしを克服する4つの方法
ここで「自己破壊サイクル」にまで陥った先延ばし癖の対策方法を紹介しましょう。
①タスクを減らす
ダラダラしている時間が多いし、その時間をタスクの処理に充てれば、タスクを問題なく処理できるはず。そんな想いを抱いているなら、それを捨てたほうがいいようです。先延ばし時間を一気に減らすこと自体が難しいので、自尊心が低いままだと、処理できる時間も短いままです。
少しずつ減らしてきたタスクの処理時間を、少しずつ増やしていけば、すべてのタスクをこなせる日が来るかもしれません。しかしまずはタスクを整理して「自己破壊サイクル」から抜け出すことを目指す必要があるそうです。
②自尊心を高める
自分を癒してあげることで、先延ばし癖が克服できたという報告があります。自分を癒す「セルフ・コンパッション」で、自尊心を高めていくことができます。
セルフ・コンパッションについて、もっと知りたい人はこちらのお勧めです。
③タスクを見える化する
タスクを一気にこなせないと感じる原因の1つは、タスクが見える化されていないことです。すべてのタスクをかき出し、1日の時間表に余裕を持ってタスクを配置してみましょう。
このときタスクの処理時間を短く見積もるのは厳禁です。
重要なのは「自己破壊サイクル」から抜け出すことで、一気にタスクが片付くと考えて、自分を慰めることではないからです。
④記録を取りながら「時間つぶしの行動」時間を減らしていく
先延ばしをしながらネットサーフィンやテレビに費やしていた「時間つぶしの行動」を減らしていきましょう。そうした時間をカウントしながら日々少しずつ減らすことで、自分への自信が戻ってきます。一気に「時間つぶしの行動」をなくして、ついでに定期的な運動を始めてみようといった決意は、たいがい失敗します。とにかく少しずつの回復を目指しましょう。
今日は先延ばしの心理についてお伝えしました。
心理学に興味のある方はこちらもご覧ください。
参考:「Procrastination 101」(Elaine Birchall and Suzanne Cronkwright/『Psychology Today』)
「Self-Sabotage」(Iskra Fileva Ph.D. /『Psychology Today』)
Psychology Today