「やりたくないなー」と思って「後回し」にしていることは、誰にでも一つぐらいはあるかもしれません。しかし、それが習慣化して癖になっているようであれば、改善方法を学ぶべきかもしれません。心理学の側面から改善のテクニックを紹介します。
- ①「スタートコスト」を意識して改善
- ②ルーチンを増やして改善
- ③質問だけで改善
- ④マインドフルネスで改善
①「スタートコスト」を意識して改善
いろんなことを「後回し」にする癖は、不安と関係があることが知られています。そのため恐れや不安を取り除くことで、「後回し」癖を改善するといった方法もあります。
「後回し」や「先延ばし」と不安の関係については、次の記事もおすすめです。
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一方、「後回し」癖を持つADHD患者として『発達障害サバイバルガイド』(ダイヤモンド社)を出版した借金玉氏は、彼が名付けた「スタートコスト」を意識する改善策を推奨しています。スタートコストとは「やるべきことに取り掛かるためのハードル」(『発達障害サバイバルガイド』ダイヤモンド社)という意味です。
自身のスタートコストについて、借金玉氏は次のように書いています。
「普通の人が、スタートコスト1でできることが、僕はスタートコスト10かけないとできない。(中略)実際僕は毎日『歯を磨くぞ!』と両手で顔をたたいて気合いを入れる必要があります」(同上)
歯を磨くのにも「スタートコスト」を感じるのであれば、日々の生活の中で「面倒だ」と感じる一歩を乗り越えるために創意工夫するのも納得でしょう。
これは「後回し」癖を持つ人にも参考になります。
まず、どうすればすぐに始められようになるのか、「面倒だ」と感じないようになるのかを考えてみましょう。ほんの小さな改善でも手を付ければ、「後回し」癖を改善できるかもしれません。
例えば、資格の勉強が面倒だと感じるなら、テキストなどを机などに開いておいたり、コワーキングスペースなどで集中してできるようにするといった方法もあるでしょう。
②ルーチンを増やして改善
ルーチンを増やしていくのも、「後回し」癖を軽減することにつながります。というのも意思決定を繰り返すことで、人は決断を回避する傾向が強まるからです。いわば意思決定のためのエネルギーは、ゲームのライフゲージのようなもので、意思決定をするたびに減ってしまうのです。
だからこそ意志決定の必要がないルーチンを増やすことで、意思決定のためのエネルギーを節約することができます。曜日ごとに着る服を決めたり、食事のメニューを決めたりといったことでルーチン化を増やせば、ここぞといったときの意思決定を下すことができる可能性が高まります。
③質問だけで改善
ニューヨーク大学のヴィッキー・モーウィッツ氏の研究によれば、「あなたは、これから半年以内に、自動車を買うつもりがありますか?」と質問するだけで、質問しなかった場合と比べて37%も購入者が増えたそうです。
ポイントは営業を受けたわけではなく、ただ質問されただけだったこと。
これは自分が行動を起こすときにも活用できるでしょう。
「これから勉強しますか?」と質問されるだけで、勉強する可能性が高まります。人に頼むのが気詰まりなら、リマインダーのアプリなどで質問内容と日時を設定するだけで、行動する可能性も高まるでしょう。
④マインドフルネスで改善
2019年に香港教育大学が発表した論文には、マインドフルネスを定期的に実施すると後回し癖が改善されたと発表されています。ただしマインドフルネスをサボると、後回し癖が強くなったというのです。
マインドフルネスの効果は、さまざまな形で喧伝されているものの続けにくいといった声も出ています。しかし後回し癖に悩むなら、まずは毎日マインドフルネスを実施できるように環境を整えてみてはいかがでしょうか?
携帯のリマインダーに、マインドフルネスの時間を登録するところから始めるといいかもしれませんね。
人の心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:『発達障害サバイバルガイド』(借金玉/ダイヤモンド社)/『世界最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100』(内藤誼人/総合法令出版)