完璧主義に悩んでしまうことはありませんか? 些細なことが気になってすべてを壊したくなったり、過度に自分を批判したり……。そんな完璧主義に困っている人に教えたいメソッドや考え方のルールをまとめました。
- 自分だけではなく他人を傷つけてしまうことも
- 今日から実行したい考え方のルール
- 自分を丁寧に扱う
- 評価の低いときはチャンスに
自分だけではなく他人を傷つけてしまうことも
完璧主義はプラスに働くことも多い反面、自分にも周りにも悪影響を及ぼすことが少なくありません。細かなことが気になってしまうためにストレス度は高いですし、自分に批判的なため自尊心が育たないこともしばしば。自己批判も強く、その刃が他人に向かってしまうことも……。
また不完全な行動が許せないことから期日通りに仕上がらなかったり、ときに途中でプロジェクトを投げ出してしまうこともあるでしょう。また周りからの評判を気にし過ぎてしまうといった態度に悩んでしまうこともあるかもしれません。
結果、仕事などで評価されていても、「もうヘトヘトだ」と感じていませんか? 周りの人は適度に手を抜き、素早くプロジェクトを終わらせているのに、自分の仕事は一向に終わらないといったことがあると、周りに腹も立ったり、逆に自分を責めてしまったり。あるいは完璧にできない仕事が怖くて手が付かず、先延ばしを繰り返したりしていませんか?
こうした状態を抜け出したいと思っても、なかなか考え方は変えられないものです。そもそも完璧ではない落としどころがよくわからないといったケースもあるのでしょう。
ただこうした傾向に疲れたと感じるようなら、今が自分を変えるチャンスかもしれません。
今日から実行したい考え方のルール
さまざまな仕事は必ずしも完璧を求められているわけではありません。完璧さよりスピードが重視されることも少なくないからです。それをわかっていても、どこまでやればいいのかがわからないし、完璧にしないと不安に駆られてしまうといったこともあるでしょう。
そんなときに試してもらいたいのが、「50-80-100 ルール」です。
これは一種のシミュレーションです。やり方を説明していきましょう。
①100%の出来を想定する
まず、いつもの自分が手掛けるような100%の出来を考えます。
企画書であれば、関連する資料をすべてチェックしたくもなるでしょうし、デザインもしっかりとしたものにしたいと思うでしょう。あるいは企画書が出たことで影響があるかもしれない部署に、軽くヒヤリングしたくなったりもするかもしれません。そうなると出来は素晴らしいものの、今日から残業して仕事にかからないと終わりそうにありません。
②50%の出来を想定する
次に自分にとって50%の出来を想定します。使いものにはなるけれど、褒められる出来ではありません。ギリギリ体裁を保てるのに何が必要なのかを考えていきます。凝ったデザインもヒヤリングもカットし、集める資料も大幅にカットします。最重要ポイントだけに絞った構成を考えてみましょう。
思い切って出来の悪い完成形を考えることで、重要な問題と些末な問題の区別がつくようになります。本当に必要な骨組みが何かを確認できれば成功です。
③80%の出来を想定する
100%の仕上がりを、50%で想定したものを参考に再構成していきます。自己満足だった部分を思い切って切り捨てることで、時間の短縮に成功するかもしれません。あるいは何となく慣例にしていたムダに気づくこともあるでしょう。
80%の出来が想定できたら、それをゴール地点に定めて作業を進めていきましょう。
もしかすると、こうした想定に時間を取ることへの抵抗があるかもしれません。さらに80%のパフォーマンスによって、手抜きをするような罪悪感にさいなまれることもあるかもしれません。しかし完璧主義で自分が疲弊していることや、そうした行動が必ずしも評価につながっていないことを思い出してください。
もちろん、仕上がりに一見影響がないように見えても、そのこだわりが高い評価を生んでいることもあるかもしれません。80%の出来で仕上げようとしたときに、逆にその「ひと手間」の重要性に気づく可能性もあります。これまで当たり前にやってきた方法を見直すことでわかる気づきです。
こうした「ひと手間」はカットすべきではないですし、逆にどうして価値があるのかを改めて考える必要があるかもしれません。
完璧主義は自分のこだわりから「完璧」だと評価しているケースがあります。そうした傾向を、客観的な評価に近づけられるメソッドです。
自分を丁寧に扱う
完璧主義の人は、先延ばしをしやすいことが知られています。いろいろなこだわりから時間が足りなくなってしまうだけではなく、完璧に仕上げようとするプレッシャーから手を付けられないといったことも起きるそうです。
この手の先延ばしに効果があるといわれているのが、セルフ・コンパッションです。セルコ・コンパッションは、「自分への慈しみ」と訳したりしますが、わかりやすく書くとあるがままの自分を受け入れ丁寧に扱う行為です。完璧主義の人は自分を攻撃する人も多く、自尊心が育ちにくいとも言われています。その根本を変えてくれるのが、セルフ・コンパッションです。
セルフ・コンパッションは第一人者でクリスティーン・ネフの書いた著作に、大量のエクササイズが掲載されていますが、その中でも比較的、簡単に実践できるモノを紹介しましょう。
①自分を親友にように扱う
まず、「どうしてできないんだ」「自分は本当にダメ」といった形で、自分を責め始めてしまったときに、親友ならどんな言葉をかけてくれるのかを考えましょう。「そんなに自分を責める必要はないよ」「十分に評価できる内容だよ」「環境が悪かったよね」など、どうにか励ましてくれるではないでしょうか? 自分が親友にそんな風に声をかけるなら、自分にも同じようにしてみましょう。
自分自身への思いやりのレベルを高めることで、物事を実行することへのハードルが下がり、先延ばしも改善することが多くあるようです。
②自分を抱きしめる
自分を抱きしめるように両手を交差したり、心臓の上に置いたりするだけで心が落ち着いてきます。安心するまでその姿勢を保ちましょう。
ドイツにあるルートヴィヒ・マクシミリアン大学の研究チームによれば、情報の正確な把握は触覚よりも視覚が強いが、触覚は視覚にない安心感が得られるのだそうです。結果、目で見るより指先で触った方がより信頼できるといった現象が生まれます。
そのためガスの元栓や水道の蛇口などは、見るだけではなく触って閉まっているのか確認しないと気が済まないといったことも起きるのです。
だから自分の身体を触ることで、私たちは安心できるのです。ぜひ、試してみてください。
③自分を受け入れてくれる人に囲まれる
自分を受け入れてくれる人と過ごしてみましょう。自分に批判的な人と必ずしも一緒にいる必要はありません。他者からの受容と承認は、自尊心の強化につながるという研究結果もあります。
逆に自分を非難する人と距離を取ることを検討してもいいでしょう。もちろん職場など距離を取りにくい場もあるでしょう。しかし自分は批判されてもいい人物だと思わず、イヤなら距離を置けると考えることで相手との関係性も変わってくる可能性があります。
評価の低いときはチャンスに
他人からの評価を気にして自分を責めがちな人に、ちょっと覚えておいてほしい心理的な知識も書いておきましょう。
それは低い期待を裏切る方が、満足度を得やすいということ。
これは2015年に発表された実験です。ゲームをする前に否定的なレビューを見て予想以上に気に入ったと答えた人は、予想通りだったと答えたグループより62%も高い評価を得たのです。
前評判で高い評価を得ているものが、期待に応えられずに評価を大きく落とすことはよく知られていますが、期待値の低いものが予想外によかったときの落差もかなり激しいものなのです。
つまり低い評価のときは、プラスに評価を変えるチャンスでもあります。完璧な行動ができなかったとしても、それは次につながるチャンスなのです。結果だけに注目しないで、自分の成長に意識を向けるようにすると、自己批判が弱まるかもしれません。
今日は完璧主義の自分を変えていく方法についてまとめました。完璧主義はプラスに働くことも多いため、必ずしも完全に取り去る必要はりませんが、もう少し楽に生きたいと感じたときには、ぜひ活用してみてください。
心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「触感にあって視覚にないのは『安心感』だという研究」(ナゾロジー)/「Have You Been Procrastinating?」(Amelia Aldao Ph.D./Psychology Today)/『セルフ・コンパッション』(クリスティーン・ネフ/金剛出版)