完璧主義と聞くとマイナス面を思う浮かべる人が多いかもしれません。しかし完璧主義には、うつ病などになりやすいタイプと、高みを目指して努力を続けられるタイプがいます。そこで2つのタイプの完璧主義の特徴と、問題の多い完璧主義からの脱し方を紹介しましょう。
- 完璧主義には2つのタイプが
- 簡単に試せる5つの方法
完璧主義には2つのタイプが
完璧を目指すことは悪いことではありません。実際、医師など失敗が許されない職業は完璧を目指さざるを得なかったりもするでしょう。ただ行き過ぎた完璧主義が、さまざまな問題を引き起こすのも事実です。
では、その線引きはどこにあるのでしょうか?
それは失敗への恐怖です。
完璧主義には、プラスの効果が多い「適応的完璧主義」と、マイナス面の多い「不適応的完璧主義」があることが、近年の研究でわかってきています。
それぞれの特徴は以下の通りです。
■適応的完璧主義
・目標は高いが理にかなっている
・積極的に努力する
・秩序立てて計画的に行動する
・人からの評価を過度には気にしない
■不適応的完璧主義
・高すぎる目標を掲げているのに気付かない
・失敗を過度に恐れる
・失敗によって人から評価されないと不安になる
・自己批判が強い
失敗したくない、人からの悪い評価を受けたくないと強く思うようになると「不適応的完璧主義」へと傾いていきます。そして「不適応的完璧主義」は、悪い結果を出したくないために、挑戦を回避したり、先延ばし傾向が強くなることも知られています。また自尊心が低くなりがちで、自分には価値がないと感じる人が少なくありません。
「適応的完璧主義」の人たちは自尊心が高くて失敗を恐れず、それを糧に成功に向かって前進していくのと、真逆の姿勢といえるでしょう。
また、「不適応的完璧主義」の人たちは抑うつ的な傾向があるのに対して、「適応的完璧主義」は完璧主義ではない人よりもメンタル的に健康であることがわかっています。
完璧主義者は、自分の高い要求水準を達成できなかったときに、強い疲労感を抱くことが心理学の調査から明らかになっているので、自分の実力を把握しないで目標設定する「不適応的完璧主義」の精神的な負荷が強いのは当然かもしれません。
簡単に試せる5つの方法
では、「不適応的完璧主義」から脱するには、どうしたらいいのでしょうか?
さまざまな方法が各種メディアにに紹介されているので、比較的簡単に実行できそうなものを紹介していきましょう。
① 自分の実力をしっかりと把握する
「不適応的完璧主義」の特徴の一つが「行動と要求水準の不一致」です。つまり自分の実力を把握できれば、マイナスの感情に振り回されることが少なくなります。
② 情報を整理し計画的に実行する
「適応的完璧主義」の特徴の一つが「秩序と整頓」であり、この特徴が成功を引き寄せる要因の一つだと言われています。だからこそ秩序と整頓に注目して、情報を整理し計画的に実行していけば、目標達成の可能性も高まります。
③完璧じゃなくても愛されることを理解する
(1)「完璧じゃなくても愛される」と繰り返しくちずさむ
(2)さらに愛される理由も口に出す
「不適応的完璧主義」の人が他人からの評価を非常に気にする理由の一つが、完璧じゃないと愛されないといった思い込みにあると、心理カウンセラーの根本裕幸氏は指摘します。そうした間違った思い込みをただすために、
「完璧じゃなくても愛される。完璧じゃなくても愛される。それは成果に関係なく一緒に笑ってくれるパートナーがいるから」といった言葉を繰り返すといいそうです。
④ 楽しんで実行する
「不適応的完璧主義」の人は失敗を恐れるあまり、その行動を楽しむことができません。自分がすべきことに楽しめる面があるのかをしっかり考えることで、結果だけに着目するような意識が薄くなっていく可能性があります。
⑤ 外に出る
散歩に出かけたり、自然の中で過ごしたりすると、創造性や問題解決能力が高まることが知られています。エネルギーレベルが高まれば、「不適応的完璧主義」が悩みがちな先延ばしを終わらせることもできるかもしれません。
いかがでしょうか?試してみたい方法は見つかりましたか?
海外の研究によれば、過去30年間で若者の完璧主義傾向は強まっているそうです。ソーシャルメディアの普及によって、他人と比較することが多くなったことも、完璧主義を増やす要因になっているという分析もあるそうです。
メンタルヘルス不調を招きかねない完璧主義に陥らないように、しっかりと自分の実力を把握して、結果だけにこだわらない姿勢を維持することは重要かもしれません。
心理学の知識を使ってより快適に過ごしたいと感じる方は、こちらもご覧ください。
参考:『「いつも無理をしているな」と思ったときに読む本』(根本裕幸/大和書房)/「第2回 完璧主義は良くない??」(海原純子/ハヤミミ|Dr.純子のメディカルサロン)/「完璧主義の適応的構成要素と精神的健康の関係」(中野敬子・臼田倫美・中村有里)/「Five Ways to Overcome Fear of Failure and Perfectionism」(Christopher Bergland/「Psychology Today」)