気が付いたら独り言を言っていたそんな経験はありませんか?それは要注意のサインかもしれません。オフィスやSNSなどで独り言をつぶやく人の心理について調べてみました。
- ストレスの増大が独り言に
- 独り言でアピール?
ストレスの増大が独り言に
気付いたら独り言を言っていた。そんな経験がある人は多いかもしれません。無意識なだけに、そんな行動に驚いたこともあるかもしれません。
では、人はどんなときに独り言を言いやすくなるのでしょうか?
子どもを対象にした独り言の実験では、困難な問題を解決しようとするときに独り言が多くなる傾向が知られています。筑波大学大学院の岩男征樹教授は、大人でも同様な傾向があり、問題を解決しようとするときだけではなく、困難に直面してツライ気持ちを発散するために独り言を言う可能性もあると指摘しています。
じつは困難な状況での独り言は、必ずしもマイナスなことではありません。
ギリシャのテッサリア大学で独り言について研究しているアントニス・ハチジョジアディス准教授も
「人は自分で自分に語りかけることでやる気を出したり、自分を行動へと導いたり、自分の行動を評価したりする」
と分析しています。
実際、自分への語りかけをポジティブにすることで、よりよい一歩を踏み出しやすくなるといった研究も行われているのです。「頑張れ」「さあ行こう」といった独り言は、自分を叱咤する独り言で海外では推奨されているケースもあります。
ただ、多すぎる独り言が問題になるケースもあります。
松井豊筑波大助教授は、「心の不調を告げる部下のサイン」として「独りで考え込み、独り言を言う」という項目をあげています。また地震発生後の被災地で、PTSDの症状を疑われる人が、独り言を繰り返していたといった報告などもあります。
いずれにしても多すぎる独り言は、ストレスが増えている可能性があります。独り言では悩みを解消しにくいとも言われているので、友人に愚痴を言ったり、カウンセラーなどの専門家に相談するのもいいかもしれません。
独り言でアピール?
ここまでの独り言は、当人が意識していないものでした。しかし職場での悩みとして、同僚の「独り言」が取り上げられる場合、「意識的ではないか」といった声が溢れています。
じつは独り言の心理実験は、実施するのが難しいことで知られています。人前では独り言を言うべきではないという意識が働き、実験を意識すると独り言が止まってしまうケースが少なくないからです。
つまり公共の場での大人の独り言は、ややレアなケースといえそうです。
そんな独り言の心理を考える足掛かりとなりそうなのが、ツイッターの心理調査です。「大学生の独り言的ツイートは独り言なのか――発話傾向との関連から」という論文では、2012年の調査では独り言に近いものだったのに、2016年の調査では社会に向けたアピールの度合いが強くなっているといった結果が出ています。
これはツイッターを使う人が増え、プライベートな空間ではないという認識が広まっていった結果でもあるようです。逆に公共の場なのに、プライベート空間のようにつぶやく意識は、オフィスなどでの独り言の心理に近い部分があるのかもしれません。
別の論文では、ツイッターは返信を期待せずにつぶやくことができるため、場の空気を読んだ発言をする必要がないと分析しています。つまりリアルな場では口にしにくいアピールが、ツイートの中にあふれているというわけです。
こうした研究結果をそのまま実際の独り言に当てはめることはできませんが、職場での独り言の中にはツイッターと同じように、空気を読まないアピールが含まれている可能性はありそうです。
心理的な癖について興味のある方は、こちらもご覧ください。
参考:「大人はどのような人が独り言をよくいうのか?」(岩男征樹・堀洋道)/「大学生の独り言的ツイートは独り言なのか―発話傾向との関連から」(澤山郁夫/三宅幹子)/「独り言、「I」より「You」が効果的 新しい仕事では教えるような口調で」(『THE WALL STREET JOURNAL』2014年5月8日)/「部下の異変どう気づく? 職場のストレスマネジメント(過労社会)」(『朝日新聞』2003年3月18日)