マイナスばかりではないストレスを管理する方法

ストレスを諸悪の根源だと思っていませんか? ストレスが心身にマイナスに影響することは間違いないのですが、必ずしもそればかりではありません。そこでストレスと機能と影響、その対策についてまとめてみました。

  • そもそもストレスとは
  • 知っておきたいストレスの特性
  • 自分のストレスを知る「ストレス日記」
  • ストレス対策

そもそもストレスとは

ストレスとは、外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態のことです。
ストレスはもともと物理学の分野で使われていた用語で、物体が外側から圧力をかけられて歪んでいる状態のことを指しました。それと同じような状態が、身心に起きていると考えればわかりやすいでしょう。

ストレスの要因は、さまざまです。悪天候、寝不足、多忙といった悪条件だけではなく、就職や結婚、出産などの喜ばしい変化でも人はストレスを感じます。

このように説明すると、ストレスはマイナスの影響だけではないということも納得できるではないでしょうか?

じつはストレスによってパフォーマンスがアップすることもあるのです。試験前や締め切り直前に集中力が上がるといったことは、ストレスがプラスに働いた好例です。つまりストレスを感じたから、すべてを排除した方がいいというわけでもありません。

もちろんパフォーマンスをアップさせるからといって、高負荷のストレスをかけ続ければ、心身が参ってしまいます。だからこそストレス対策として重要なのは、ストレスの管理となります。

知っておきたいストレスの特性

さて、ストレスの管理で最初に知っておくべきことは、ストレスの特性です。重要なポイントを2つ紹介しましょう。

①ストレスの感じ方は人それぞれ
自分には我慢できない音なのに、周りの人は気にしていない。そんなことを経験したことはありませんか? じつはストレスに感じるかどうかは、人によって違います。自分がストレスを感じるものもあれば、気にならないものもあり、どれぐらいの強さでストレスになるのかも人によって違います。

クサヤなど非常に香りの強い食品は、食べる当人にとっては最高の香りでも、周りの人にとってはストレスになったりするもの。つまり自分が平気だから、周りの人もストレスにならないと思い込むのは危険です。逆に自分が耐えられないから、周りの人も我慢できないと思うのも間違っています。

さらに騒音などは、騒音を出している人と親しければ、ストレスに感じる度合いが下がるといった報告もあります。知らない人なら騒音になるヘタなピアノの音が、知り合いの子どものピアノだとわかると成長の軌跡になるといった具合です。

②自分のストレスは自分しか理解できない
人によってストレスの感度はさまざまなのですから、自分にとってのストレス原因は自ら知っておく必要があります。

例えば気圧の変化に弱いのであれば、どれぐらいの気圧の変化が体調不良に繋がるのかを知っていれば、天気予報を見ながら対策を立てることができます。音に敏感であれば、集中したいときには静かな環境を選ぶといったこともできるでしょう。

またストレスの対策ができない場合でも、この場所はうるさくてイライラしやすいから気を付けようというように、ストレスが引き起こす気持ちや行動の変化に注意を向けることもできるでしょう。

いずれにしても、自分にとってのストレスは、自ら調査しないとハッキリしないのです。

自分のストレスを知る「ストレス日記」

自分のストレス原因を把握しようとするときに、役立つのが「ストレス日記」です。その名の通り、ストレスの記録です。ストレスを感じたときに、ストレス度がどれぐらいで、何が原因で起きたのかを記入していきます。記入していく項目は、次の8個です。

①日時
日記に日時は必須ですね。ストレスを受けた日にちと時間をメモリます。

②ストレス内容
ストレスの内容を簡単に書いておきましょう。この日記は続けることが重要なので、面倒くさくなるほど詳細に書く必要はありません。

③幸福度
0~10点の範囲で、ストレスを受けた後の気分をメモリます。この数値を書いておくことで、どのストレスが自分にどれだけのダメージを与えるのかがわかります。

④感情
ストレスによってどんな気持ちになったのかを書いておきましょう。「悲しみ」「怒り」といった単語で構いません。ただ、自分の気持ちを正確に表す言葉を選ぶようにしましょう。例えば「悲しみ」と「哀しみ」では、ちょっとニュアンスが違います。そうした小さな違いを大切にしましょう。

⑤生産性
0~10点の範囲で、ストレスを受けた後の生産性を記入します。人によっては生産性がアップするといったこともあるでしょう。また気持ちはそれほど落ち込まないように感じたのに、生産性が非常に下がったといったケースもあるかもしれません。

⑥ストレス源
「隣の騒音」「上司」といったわかりやすい原因以外にも、「締切り」「ニュース」といった意外なものもあるかもしれません。また「過去の記憶」といったことも、意外に大きなストレスになります。ふっと思い出した昔の失敗で、生産性が大きく落ち込むといったことも少なくありません。

⑦身体反応
頭痛や吐き気といった激しいものから、心拍数が少し上がった、体が熱くなったといった小さな変化もあるでしょう。ストレスに受けたときに、自分を観察しないと意外にわからないかもしれませんね。

⑧対処レベル
そのストレスに、どれぐらい対処できたのかを記入します。「まあまあ」「気にならない」「怒り爆発」などなど、簡単に書き込んでみましょう。

ある程度データが溜まってきたら、ストレス日記を分析して、次のポイントを明らかにしましょう。

1.頻発するストレス
どんなストレスが頻発しているのかを把握します。

2.最も不快なストレス
「幸福度」や「生産性」を確認しながら、自分に打撃が大きいストレスを明確にしましょう。

3.危ないシチュエーション
1と2から自分にとって危険なシチュエーションが見えてくるでしょう。プレゼン前だったり、特定の上司との対話だったり、ママ友とのお茶会だったり。ストレスフルなシチュエーションを特定することで、対策も可能となります。

4.効果的な対処法
対処法には、そもそも危険なシチュエーションを避けるといった方法や、ストレスフルな環境から解放された後に、食事やサウナなどでストレス発散をするといった方法もあるでしょう。
重要なことは慢性的にストレスを受けないように、ストレスをコントロールする方法を考えておくことです。

ストレス対策

ストレス対策で困ることの一つは、過去の記憶でしょう。考えないようにしようと思えば、余計に気になってしまうもの。まずは「考えるのはストップ!」と唱えて、思考をストップするようにしましょう。その上で音楽を聴いたり、スイーツを食べたりといった気晴らしも有効です。

そしてもう一つお勧めなのが運動でしょう。
ストレス対策としての運動の効果は広く知られています。運動をすることで、お酒を飲んで気晴らしが必要なくなったといった報告もあるほどです。
しかも運動はストレスに対するコントロールを強めることにつながるそうです。

今日はストレスについて、改めてまとめてみました。ストレスと聞くと、とにかく排除したくなりますが、まず自分にとってのストレスが何なのかをしっかりと把握するようにしてみはいかがでしょうか。

心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考:『脳を鍛えるには運動しかない!』(ジョンJ・レイティ エリック・ヘイガーマン/NHK出版)/『BRAIN DRIVEN (ブレインドリブン) パフォーマンスが高まる脳の状態とは』(青砥瑞人/ ディスカヴァー・トゥエンティワン)

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