他人の行動にイラつくことはありませんか?ついついイラつかせる相手に怒りをぶつけたくなるかもしれませんが、じつは自分のとらえ方に余裕がなくなっているのかもしれせん。
- 怒鳴っている理由は仕事の質ではない?
- 他人を判断する3つの枠組み
- 自分の幸福感と他人の行動の解釈
自分の幸福感と他人の行動の解釈
対人関係のトラブルに強い人っていますよね。困ったことが起こっても、怒りだすわけでもなく、より仲間の結束を固めて乗り越えていくようなタイプの人のです。
そのようなタイプの特徴の一つは、他人を解釈する枠組みが多いことだそうです。
例えば、ときにピリピリと神経を高ぶらせ声高に叫ぶ上司がいたとしましょう。イヤな人だなと思うのも当然でしょう。上司のイラつきの原因を、彼のパーソナリティーの問題だと判断するのも当然でしょう。
しかし、その上司をよく観察すると、神経が高ぶっているときは常務が出社しているときだとわかったらどうでしょうか?
じつは上司は、「パーソナル・プロジェクト」と呼ばれる、自分にとっての大切な事柄を遂行するために怒鳴り散らしているのかもしれません。つまり仕事の質に怒っているのではなく、自分が管理していることを常務にアピールするために怒鳴っていると解釈できるのです。
もちろん、この事実がわかったからといって、怒鳴られた方の怒りが収まるわけでもないでしょう。しかし少なくとも怒る理由を推測することができます。
では、もっとよく観察してみたら、最近の上司のワイシャツがしわだらけだとわかったらどうでしょうか?昔は笑いながら口にしていた妻への愚痴も聞かなくなったことも思い出したら……。もしかすると家族にトラブルがあって余裕がなくなり、仕事をする余裕がなくなっているのかもしれません。
そんな上司の背景にある「物語」を思い描ければ、たんに上司の性格が悪いからといった見方を超えて、彼のイライラを理解することができるようになるかもしれません。
他人を判断する3つの枠組み
「パーソナリティー」「パーソナル・プロジェクト」「物語」は、他人を判断するときの基本的な枠組みですが、この3つに配慮して相手を判断するだけで、こちらの感情も対処方法も変わってくるでしょう。
先の例で言えば、「パーソナリティー」だけで判断すれば「怒りっぽいイヤな奴」で、対処のしようもありません。しかし「パーソナル・プロジェクト」だとわかれば、常務が来社するときだけ距離を置くといった対処方法を採ることができます。あるいは常務が穏やかな態度を好むといった情報を、さりげなく伝えるだけで上司の態度が変わるかもしれません。
さらに「物語」から判断して、上司が怒りだす前に「お疲れみたいですけれど大丈夫ですか」と気遣ってあげると、対応が変わるかもしれません。
『自分の価値を最大にするハーバード心理学講義』(ブライアン・R・リトル/大和書店)は、次のように書いています。
人は、他者を解釈する枠組みが多くなるほど世の中に適応しやすくなり、逆に枠組みが少ないと、変化していく状況に上手く対処できず、トラブルを乗り越えることが困難になってしまいます。
つまり相手を多様な側面から解釈するだけで、対人関係のトラブルが乗り越えやすくなるのです。
自分の幸福感と他人の行動の解釈
より多様な枠組みを持ちたいのであれば、自分の感じ方に焦点を当てる方法もあります。
自分の感情によって、他人の行動の受け取り方は大きく変わります。不安にかられているときは、いつもより責められているように感じるかもしれません。逆に気分のいいときには相手のミスなども寛大に受け入れることができるでしょう。
先述の書籍『自分の価値を最大にするハーバード心理学講義』(ブライアン・R・リトル/大和書店)にも、次のように書かれています。
意外にも、他者をどのように解釈するかは、自分の幸福に関係しています。
自分では客観的だと思っていても、その判断の根拠は意外なほど主観的だったりするのです。相手が自分をイラつかせるのではなく、もともと自分がイラついているのかもしれないという思考は、対人関係のトラブルを拡大させないことにつながるかもしれません。
じつは幸福感を持つための方法論は、心理学で研究されています。
最も手軽な方法は、日常の雑事から離れて考えることができる時間を選び、週1回、「感謝日記」を付けることです。どんな些細なことでも構いません。小銭を落としたとき周りの人に拾ってもらえた、リマインドのメールをもらったなどなど。「ありがたいな」と感じたことを書き出すだけで幸福感が高まると、心理実験で明らかになっています。
そして幸福感が高まれば、他人の行動の解釈も変わってくるでしょう。
イラつかせる相手への対処法をお伝えしました。
対人関係に効く心理学の知識に興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『自分の価値を最大にするハーバード心理学講義』(ブライアン・R・リトル/大和書店)/『幸せがずっと続く12の行動習慣』(ソニア・リュボミアスキー/日本実業出版社)