攻撃的な人にもいろいろなタイプがいますが、中には相手にしてはいけない人たちも!? 「正義中毒」と呼ばれるタイプも要注意です。その特徴と対策についてまとめておきましょう。
- 海外でも話題になる攻撃的なタイプ
- 「正義中毒」が危険な3つの理由
- Webが引き起こす!?
- 逃げるが勝ち
海外でも話題になる攻撃的なタイプ
自身の考える正義を振りかざして、他人を攻撃する人が世界的にも増えているようです。脳科学者の中野信子氏は、このようなタイプを「正義中毒」と表現しました。海外では「ソーシャル・ジャスティス・ウォリアー」(社会正義戦士)といった言葉もあります。
彼らの唱える「正義」は、さまざまです。少し前にはコロナ禍で自粛をしない人に攻撃する人たちが話題となりました。芸能人の不倫問題などでも「許せない」とSNSなどで攻撃する人がいます。
こうした「正義」は自分に利害関係がなくても発動します。倫理的にはともかく、芸能人の不倫は自分の利害に直接かかわるわけではありません。ただ当人の「正義」に照らすと許されないため、正義を正すために行動するのです。
「正義中毒」が危険な3つの理由
もちろん「正義」に根ざした行動が悪いわけではありません。抗議活動が社会を変えていくこともあります。そもそもモラルのない行動に怒りを覚えるのは、当たり前のことです。
それでも「正義」に駆られた行動がときに危険なのは、いくつかの理由があります。順番に説明していきましょう。
①中毒性がある
中野氏は著作『人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)で次のように書いています。
自分の属する集団を守るために、他の集団を叩く行為は正義であり、社会性を保つために必要な行為と認知されます。攻撃すればするほど、ドーパミンによる快楽が得られるので、やめられなくなります。自分たちの正義の基準にそぐわない人を、正義を壊す「悪人」として叩く行為に、快楽が生まれるようになっているのです。
また心理学者のジェレミーE.シャーマン博士は、このような正義の中毒性が現実を無視させると書いています。たしかに自分に直接的に利害のない問題に首を突っ込むより、当人にとってより重要な問題が「正義中毒」の人にもあるでしょう。ところが正義を掲げて他人を攻撃していると、自らの現実に目を向ける意識がなくなってしまうようなのです。
②他人の主張を認めない
さまざまな意見を持ち寄って議論するのは、よりよい解決策を考える上で有効です。しかし「正義中毒」の人は、他人の意見に耳を貸そうとはしません。自分の主張が絶対の正義だと考えてしまうので、そこに議論の余地が生まれないのです。
③どう行動しても攻撃を続ける
「正義中毒」の人は攻撃すること自体に重きを置いているため、相手の言われた通りにしても攻撃が続いてしまうといったことがあるようです。例えば謝罪をしても「謝って済むと思うのか」と、余計に威圧的な態度を取ってしまったりします。
Webが引き起こす!?
「正義中毒」に注目が集まるようになったのは、SNSなどによって「正義中毒」の人が増加したからだという指摘があります。
「正義中毒」にならないようにするためのポイントについて、中野氏は「メタ認知」だと書いています。「メタ認知」とは、自分を客観的に認知する能力のこと。
例えば他人を攻撃してしまっても、「これは正しいのか?」と自分に問いかけられれば「メタ認知」が機能しているので、「中毒」にはならないそうです。自分の主張を客観的にとらえながら意見を主張することは、さまざまな問題を解決する上でも重要でしょう。メタ認知を働かせながら社会正義を求めることは、多くの人にとってもプラスになります。
しかしSNSなどでは似た考えの人同士で繋がることが多く、自らの主張を検証しないケースも多くなりがちです。結果、閉鎖的空間内でのコミュニケーションを繰り返すことによって信念が強化されてしまう「エコーチェンバー現象」が起きやすくなってしまうのです。
「正義中毒」がWebで起きやすい原因の一つが、このような「メタ認知」が働きにくい状態にあるせいかもしれません。
逃げるが勝ち
では、実際に「正義中毒」の人に出会い、攻撃されてしまったらどうしたらいいでしょうか?
彼らは他人の主張を認めないことが多いので、絡まれたらその場を離れるなど「逃げるが勝ち」といった方法がよさそうです。
どうしても反論や説得の必要がある場合は、中立性を保ち、相手の主張を部分的に肯定するといった方法もあるようですが、なかなか難しいかもしれません。自分だけではなく、話し合いに誰か加わってもらうといった方法もあるようです。
また話が通じないと感じたときに、自分が「正義中毒」に陥っていないかを検証することも重要でしょう。
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監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『人は、なぜ他人を許せないのか?』(中野信子/アスコム)