誰でも、頼みごとをするのはちょっと気遅れしてしまうものです。それが好意を持っている相手であればなおさらですよね。「こんなことを頼んで、嫌われてしまったらどうしよう」と不安に思っているなら、その心配はありません。頼みごとをすれば、むしろ好かれるようにななるとしたら!?心理学が恋のヒントを教えます。
- 「尽くすから好き」という逆転心理
- ジェッカーとランディによる認知的不協和の実験
- どうしようもない夫と離婚できない妻の心理も、ちょっと当てはまるかも?
- 狙った相手に頼れることはないか、むしろ探して歩こう
「尽くすから好き」という逆転心理
一般的に、「相手が好きで好きでたまらないからこそ、尽くしたいと思うのだ」と考えますよね。尽くしすぎて「しつこい」と振られるなんて話もよく聞きます。しかし「尽くすから好きなのだと、自分を納得させることも大いにある」とも考えられますよね。
つまり、相手に尽くすことによって、「こんなに相手に良くしているということは、自分は相手のことが好きなのだ」と脳が認知してしまうというわけです。いわば逆転の心理ですが、本当にそんなことがあり得るのでしょうか?
ある心理実験が、驚くべき結果を公表しています。
ジェッカーとランディによる認知的不協和の実験
ジェッカーとランディは、「人に頼みごとをされるとその人に好意を持つ」という過程を立証するために、次のような心理実験を行いました。まず、正解するとお金をもらえる報酬型の実験を行います。実験者はしかめっ面をしていて、とても大多数の人から好意を持たれるとは思えない表情をしています。
実験が終わり、参加者が報酬を受け取った後、しかめっ面の実験者は一部の人にこう申し出ました。「実は、この研究は自費でやっています。研究資金がなくなってしまったので、できれば受け取ったお金を返していただけませんか?」
こうして参加者は、報酬の返金を要求されないグループ、60セントの報酬を要求されたグループ、3ドルの返金を要求されたグループの三つに分かれました。その後、アンケートを取り、実験者にどの程度の好意を抱いたかを尋ねました。
すると、返金を要求されなかったグループよりも要求されたグループのほうが、実験者に好意的であることが分かったのです。さらに、60セントの返金を要求されたグループよりも、3ドルの返金を要求されたグループのほうが、実験者に好意を抱いていました。
心理学でいえば、ここには認知的不協和理論が働いていると考えられます。認知的不協和とは、頭の中で2つの認知が矛盾を抱えた状態になることです。この矛盾を放っておくと不快感にかわり、多大なストレスとなるため、人は自分自身の認知を変化させて不快感から逃れようとします。
参加者は、実験者に返金したことによって、「頼みごとを聞いてあげたのは、自分はこの人に対して好意を持っているからだ」と脳でムリヤリ納得させた可能性が高いといえます。たとえ始終しかめっ面をしている人でも、好きだと錯覚してしまうのです。
どうしようもない夫と離婚できない妻の心理も、ちょっと当てはまるかも!?
世の中には、「どうして離婚しないのだろう」と思うような夫婦の話がたくさんあります。休日、家でゴロゴロするだけならいいものの、なかなか仕事をしない、暇があればギャンブルにお金を使う夫と、それでも尽くす妻。
「どうしてそんな男に尽くしてしまうの?」と首をかしげたくなりますが、認知的不協和理論からすると妻のほうはむしろ、夫への好意を持ち続けるために、無意識のうちに尽くし続けているのかもしれないのです。
狙った相手に頼れることはないか、むしろ探して歩こう
意中の相手がいる人は、「相手にどんなことをしてあげようか」と考えを巡らせるのではなく、「頼れることはないだろうか」と考えてみてください。相手が同僚であれば残業の手伝いを依頼する、サークルの友人であれば「気分が悪くなったので、ジュースを買ってきてくれない?」と尋ねるなど、考えられる頼みごとはたくさんあります。
いうまでもありませんが、頼み事をする時は相手の状況も配慮して、手伝ってもらったら「ありがとう」と感謝の気持ちを示すのを忘れずに。心理学の知識を巧みに使いこなして、恋愛上手になりましょう!
参考:『図解雑学 人間関係心理学』斎藤勇、ナツメ社