どうしてクジャクは、あんな見事な羽を持っているのでしょうか? 求愛のときには有効かもしれませんが、外敵に襲われたときには邪魔になる可能性も。じつは、その邪魔こそがメスへのアピールになるのです。
- 邪魔な羽だからこそモテる
- タトゥーが健康アピールだった!?
- 実用的ではないモテグッズに注目
邪魔な羽だからこそモテる
クジャクの美しい羽は求愛に大きな力を発揮しますが、じつは自然を生き抜くためには、必ずしもプラスではありません。威嚇にも使えますが、逃げるときには明らかにマイナス。目立つことも含めて、外敵から捕獲される確率は高まります。
こんなムダを持つ生物が、なぜ生き残れたのかという疑問を説明する理屈の1つが、「ハンディキャップ理論」です。邪魔な羽を持っていても生き残れますよというメスへのアピールにメスも反応し、より立派な羽のオスとつがいになるのだそうです。
つまり「ハンディキャップ」をものともしない生物としての強さが、クジャクのアピールポイントというわけです。じつは、こうしたアピールは生物界では珍しくありません。
タトゥーが健康アピールだった!?
この理論が人間にも当てはまるのではないかという観点でおこなわれた実験もあります。
『脳がシビれる心理学』(妹尾武治 著/実業之日本社)に紹介されている、2010年にコジエルやクレッチマーたちが発表した論文です。彼らは、感染症などの健康リスクを抱えてタトゥーをする人は、していない人よりも健康ではないかという仮説を立てたのです。
クレッチマーらはタトゥーショップから出てくる人を実験に誘い、人差し指と薬指の長さ、手首の太さを右手と左手で比べました。左右が同じようなサイズであればあるほど、健康面ですぐれているという別の研究成果に基づいた調査でした。
結果、タトゥーをしている人は、していない人より健康面で優れているという結果が出たのです。つまり健康だからこそ、健康リスクの高いアピールをしていたと、少なくとも実験では証明されたわけです。
さらに、この論文では「強さ」を競う世界で暮らしている男性ほど、積極的にタトゥーをする傾向があることが明らかになっています。その典型は軍隊です。つまり強さをアピールする場なら、感染症など健康リスクを抱えるタトゥーによる一見「ハンディキャップ」にも見えるアピールは成功しやすいということなのかもしれません。
もちろん「ハンディキャップ理論」も仮説であり、実験も興味深い内容ながらやや強引ではと思うところもあります。とはいえアメリカ合衆国における心理学分野の職能団体としては代表的な存在である「アメリカ心理学会」(American Psychological Association:APA)のサイトに掲載されている論文でもあります。
こんな考え方があるという参考にはなるでしょう!
実用的ではないモテグッズに注目
「強さをアピールする必要がない自分にはタトゥーは関係ない」と感じた方には、一見ハンディキャップにも見える「クジャクの羽」が、何をアピールしていたのか考えるといいかもしれません。
クジャクの羽は維持するためのコストが高く、求愛以外ではけっこう役に立たないものです。ただ、そんな生存にとっては邪魔なものを身に付けていても、生き残って生活できているという余裕がメスへのアピールにつながったわけです。
必ずしも実用的とはいえないものに労力や金銭を投資することは、生物的にモテるポイントになるのかもしれません。実用的ではないファッションや装飾品ときに車なども、余裕を示すシグナルとして働く可能性があります。
実際、異性にアピールするものに、実用性が薄いなと感じたことはありませんか? 流行の服やピカピカの靴、高い時計などなど。別に流行の服を着る必要はないし、靴だった動きやすければいいでしょう。それなのに金銭的にも労力的にもコストがかかりがちです。
しかしクジャクに学べば、この実用性のなさこそが重要なのも。実用性のないものを身に着ける余裕こそが、アピールにつながるのですから!
ただ実用的でないものなら、すべてがアピール材料になるかというとそうでもないかも……。
あしからず……。
関連リンク