パートナーとの関係性を悪くする言葉の一つに、「~すべき」という言い回しがあります。「これは彼女がすべきことなのに」とか、「こんなときは〇〇すべきじゃないのに」といった言葉を、つい発してしまうときは自身の言動を見直す必要がありそうです。
- 「べき思考」って?
- 「べき」を「ほしい」に変える
- 可能性の芽を摘む「べき思考」
- 人はいつでも変われる
「べき思考」って?
「~すべき」という考え方は、「べき思考」と呼ばれます。よく生きづらい考え方の癖として紹介されるもので、「~すべきだ」あるいは「~すべきでない」と思考に支配されている状態を指します。
しかし「~すべき」という考え方の根拠は、意外に脆弱だったりするものです。例えば「仕事は会社ですべき」といった考え方は、新型コロナウイルスが流行る前なら当たり前だったかもしれません。しかしテレワークが当たり前となった今では、そんな「すべき」を当たり前だとは言えないでしょう。常識を根拠にした「すべき」も、国や土地、集団が変われば通用しないことも多いものです。
そして「べき思考」が強い人は、メンタルヘルスの問題を抱えやすいことでも知られています。例えば「男性なら妻子を養っていくべき」という思いが強い人は、仕事がなくなった途端、非常に強いプレッシャーを抱えてしまいます。しかしそうした「べき思考」がなければ、「今は妻に経済を任せて職を探そう」と考えやすくなります。
「べき」を「ほしい」に変える
さらに問題なのは、「べき思考」は他人に向かう可能性が少なくないことです。自分が思い込んでいる理想像に当てはめ、「~すべきだ」とパートナーに口にするようになると、二人の関係性は悪化してしまうと、心理学者のジェフリー・バーンスタイン博士は指摘します。
自分の「べき思考」が強いと感じた人は、パートナーと話すとき「~すべき」という言い方を改め、「~してほしい」と伝えるようにしてみてください。このように変えるだけで、自分が考える正しいことを実行しろといった命令から、お願いへと表現が変わります。
その上で、自分が「すべき」と考えていたことの根拠も、改めて考えてみましょう。その根拠は自分が思っているほど「正しい」ものか、他人から見ても「当たり前」と言ってもらえるかを、少し考えてみましょう。
可能性の芽を摘む「べき思考」
「べき思考」の人は、メンタルヘルス不調になりやすいという話をしました。それは自分を追い詰めてしまう可能性がある考え方だからです。というのも「べき思考」は、いろいろな可能性の芽を摘んでしまいがちです。
いま「すべきこと」ができないからこそ、違った方法で目標に向かう道を探すことができるかもしれません。あるいはゴールとなっていた「すべきこと」は、最終のゴール地点に設定する必要すらないかもしれないのです。
例えば「収入を増やすべき」と思っている場合、そうして収入を増やす必要があるのかを考える必要があるでしょう。その根底あるのが「家を買うべき」といったものなら、どうして賃貸だとダメなのかを考えてみましょう。
自宅を買うにしても都心でなければ、値段も下がるでしょう。自分の家事分担を増やして、パートナーが世帯収入をアップするために頑張るといった方法もあるかもしれません。
「~すべき」だと考えたときには、それ以外の方法がないのかも考えてみましょう。
人はいつでも変われる
「べき思考」のワナに陥らないための考え方の一つに、人間はいつでも変わることができるという考え方があります。
自分の「べき思考」に気づいたとき、ときに「正しい」と思い込んでいた自分の常識を捨てるのが怖くなるかもしれません。しかし、そんなときこと、人は変われるのだという事実を思い出してください。
自分の生き方を窮屈にする思い込みを捨てることは、パートナーとの関係性にプラスの影響を与えるでしょう。より生きやすい自分になるために挑戦を続けることは、よりよい未来を手に入れる一つの方法かもしれません。
人の心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:『「こうあるべき」をやめなさい 「いまある悩みがさっと消える」9つの思考パターン』(和田秀樹/大和書房)/「This One Word Is a Relationship-Killer」(Jeffrey Bernstein Ph.D./Psychology Today)