コントラストの原理を使って、売りたい商品を効率よく売る!

何かを選択するとき、自分がどのような判断基準を使って物事を決定しているか、考えてみたことがありますか。商品を購入するときにもしかしたら、セールスのテクニックに、いともたやすくかかってしまっているかもしれませんよ。自らもモノを売る立場ならなおさら、コントラストの原理について学び、売りたい商品を効率よく売るすべを身につけましょう。

  1. この商品、安い?高い?その答えは、比較にある
  2. 人は二番目以降に提示されたものの価値を絶対的には判断できない
  3. 不動産会社の内見でよく行われるノウハウ
  4. コントラストの原理を使った商法は、身近にわりとよくある!
  5. 商談のときには本当におすすめの商品を提示する順番を熟考しよう

この商品、安い?高い?その答えは、比較にある

例えば、宝石がちりばめられた鳥の置物があったとしましょう。その価格を「1千万円です」と告げられたとき、その置物が高い商品なのか、それともお買い得なのか、とっさに判断できるでしょうか。たんに1千万円という価格のみを見たとき、「安い」と思える人はそうそういないでしょう。でも、置物の価値を問われているとなると悩みますよね。「果たして、相場はどのくらいなんだろう?」と考え込んでしまいます。

ここで参考になるのが、他の「鳥の置物」の値段です。次に提示された、別の置物の値段が5千万円だったとき、初めに提示された置物の値段は「安い」と感じるでしょう。逆に、次の置物が500万円だったら、初めの置物は「高い」と思えるはずです。そう、とくに相場がよくわからない買い物の場合、提示された商品が安いか高いかの答えは、いつでも比較にあるのです。

人は二番目以降に提示されたものの価値を絶対的には判断できない

ものの価値がよくわからないとき、さまざまな商品を比較して検討するのはよくあることですよね。でも、この手法は、賢いようで実は決定的な欠点を持ち合わせています。それは、われわれは二番目以降に提示されたものの価値を絶対的には判断できず、必ず相対的な判断が入ってしまうという心理効果があるためです。最初と2番目のものに違いの差があると実際の差よりも大きな差に感じます。これを、コントラストの原理といいます。

コントラストの原理は、あらゆるシーンで認められます。軽いものを持ち上げた後に重いものを扱うと、実際よりもずっと重く感じられますし、冷たいものを食べた後に温かいお茶を飲めば、やけどをしそうなくらい熱く思えることがあります。そして、コントラストの原理を商売に応用すれば、顧客心理を操作することも可能なのです。

不動産会社の内見でよく行われるノウハウ

コントラストの原理を使った心理誘導としては、不動産会社のノウハウが有名です。希望の中古物件や賃貸物件の条件を聞いた後で、予算や間取りなど条件にぴったりの物件を内見しに回ります。このとき、1件目はわざとボロボロの物件を見せ、客にショックを与えるのです。

「自分が想定していた間取りと予算では、このくらいが関の山なのか……」と思い込ませたうえで本命物件を見せると、ぐっと印象が良くなります。たとえその物件が希望の間取りよりちょっと狭くても、予算よりちょっと高くても、「この機会を逃すと、このような物件には出合えないかもしれない」と思わされ、即決につながるのです。

1件目と2件目のコントラスト条件がない場合は、どうなってしまうでしょうか。客は同じような間取りや予算の物件をさんざん見て回った後に、「もうちょっと考えてみます」と不動産会社を後にしてしまうかもしれません。もしかしたら、他の不動産会社に立ち寄り、巧みなセールストークを受けて即決してしまうかもしれません。

コントラストの原理を使った商法は、身近にわりとよくある!

不動産の例のように、コントラストの原理を知っているのと知らないのとでは、セールスの成果にかなりの差が出てきそうです。不動産会社では、「先にボロ物件、後から狙いの物件」という順番でしたが、「先に高額商品、あとから売りたい商品」という順番で紹介する手もあります。

婚約指輪を買ったことのある人なら、初めにおすすめされた指輪がとても高価な美しい品物だったことを覚えているのではないでしょうか。また、単体であればとても手が出ない車のオプション商品も、新しく車を購入した後にはなぜか安く思えて買ってしまった……という経験のある人もいるでしょう。

以上のように、コントラストの原理を使った商法は、身近にわりとよくあるものです。セールストークを受けた際には、「この人には、どんな思惑があって、いま私にこの順番で商品を紹介しているのだろう」と考えなければなりません。

商談のときには本当におすすめの商品を提示する順番を熟考しよう

自らもセールスをする側の場合には、本当におすすめの商品を提示する順番をきちんと考えてみましょう。「あえてそっちを選ぶのか!?」と、客の選択にびっくりするようなときは、もしかしたら自分が提示の順番を間違えているのかもしれませんよ。コントラストの原理を、巧みに使えるセールスマンになりましょう。

参考:『影響力の武器 説得の秘訣 第三版』ロバート.B.チャルディーニ、誠信書房

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