他人に仕事を頼むことができなくて、大量の仕事を常に抱える羽目になっていませんか。自分だけで最後まで仕事をやり通すことは、「責任感が強い」とも言えるかもしれません。しかし、ただの「頼みベタ」なら、企業人としては、ちょっと困ります。
頼みごとを快く引き受けてくれるようになる心理効果、ドア・イン・ザ・フェイスの法則を使って、今日から依頼上手になりましょう!
- 頼みベタは出世にとっても障壁に
- 依頼上手になれる簡単な方法、ドア・イン・ザ・フェイスの法則とは
- 拒否させた後の譲歩は、相手にも「譲歩しよう」という気持ちを起こさせる
- 部下の「イエス」を上手に引き出そう
頼みベタは出世にとっても障壁に
部下をはじめとして、他の部署の人間や外部の契約業者など、仕事を依頼しなければならない人はたくさんいます。ときには上司を動かさなければならない場面だってあります。
頼みごとをする際、そのつど躊躇してしまう人はいませんか。基本的に「誰かに依頼することが苦手」と感じている人は、管理職になっても思うように成果が出せず、結果楽しく仕事ができないかもしれません。しかし管理職はまさに部下に指示をして、成果を上げる役割を担っていますから、部下が気持ちよく仕事できるようスムーズに依頼したいものです。
多少なりとも出世したいと思うなら、頼みベタは解消しておきたいもの。とはいえ、急に強気になって部下にあれこれ指示してもうまくはいかないでしょう。ある心理効果の法則を使って、無理なく依頼上手になりましょう。
依頼上手になれる簡単な方法、ドア・イン・ザ・フェイスの法則とは
依頼上手になるためには、ドア・イン・ザ・フェイスの法則を使ってみてはいかがでしょう。ドア・イン・ザ・フェイスとは、セールスマンが飛び込み営業で訪問した家のドアからムリヤリ顔をのぞかせているしぐさを表現しています。
突然訪ねてきたセールスマンがドアから顔をのぞかせて「中に入れてくれませんか」と言っても、二つ返事でどうぞと答える人は、そんなにいないでしょう。しかし、「では、このままでいいので、5分だけ話を聞いてくれませんか」と言われたら、どうでしょうか。多くの人が「5分だけなら」とうなずくかもしれません。こうしてセールスマンは商品説明のチャンスを得ることができます。
このように、ドア・イン・ザ・フェイスの法則とは、「人は大きな要求を断った後、ぐっと小さな要求をされると承諾してしまう傾向にある」ことを指しています。この法則をビジネスシーンで応用し、セールスマンは最初に大きな依頼をして断れてから、次にそれよりもはるかに小さい依頼をして本来の要求を通すケースがあります。
拒否させた後の譲歩は、相手にも「譲歩しよう」という気持ちを起こさせる
例えば、どうしても明日じゅうに必要になる資料があるとしましょう。今は午後4時。今日中に対処してくれる部下がいれば安心ですが、明日の午前中に揃えてもらえれば、業務に支障はありません。
このとき、初めから「悪いけれど、明日の正午までにこの資料を揃えてくれる?」と言うのではなく、「この資料、今日中にお願いできないかな?」から始めます。すると、終業時間までに自分の仕事を優先したい部下からは「今日はちょっと……」という答えが返ってくるかもしれません。そこで、「じゃあ、明日の正午までならどうかな?」と、本来の要望を口にします。
すると、相手には不思議な心理効果が生まれます。一方的な頼みごとをされているにもかかわらず、「あっちが譲歩してくれているのだから、こっちも譲歩しなければ悪いな」という気持ちになるのです。何かしてもらったらお返しをしなければならないという気持ちになる心理効果を「返報性の法則」と言いますが、ここでは「譲歩の返報性」が発生しているといえるでしょう。
こうしてあなたは、無事「明日の正午までならいいですよ」という返事を部下からもらうことができるのです。ドア・イン・ザ・フェイスの法則を使った、頼みごとが成功する瞬間です。
部下の「イエス」を上手に引き出そう
部下に「譲歩の返報性」の心理が発生すれば、のちにまた小さな要求をしたとしても「この前一度断ってしまったし、なんとか埋め合わせたい」という気持ちが起きるのです。つまり、一度ドア・イン・ザ・フェイスの法則を使えば、それ以降はぐっと頼みごとがしやすくなるかもしれません。
こうした心理効果を上手に利用し、部下の「イエス」を上手に引き出していきましょう。依頼上手を極めることができれば、これからどんな大きな仕事を任されたとしても、的確に部下へ仕事を頼むことができるようになりますよ。ただ、依頼がうまくできるようになったからといっても、部下に無理をさせることは厳禁です。
常に部下の仕事量はチェックするようにしてください。
参考:『影響力の武器 説得の秘訣 第三版』ロバート.B.チャルディーニ、誠信書房、