ネット炎上の攻撃性を心理学から考える

芸人が訪れたラーメン店の無礼なツイッターに押し寄せた店への攻撃的反応に、芸人自身が沈静化を呼びかける事態となりました。そんなネットの攻撃性について、心理学的側面から解説していきます。

  1. ラーメン店のツイッターで炎上
  2. 匿名だと攻撃性が増す
  3. フラストレーションが攻撃の源に

ラーメン店のツイッターで炎上

事の発端は大阪のラーメン店に人気芸人が訪れたことでした。写真撮影にも応じてくれた芸人を、ラーメン店がツイッターに掲載。しかし「カメラなかったらおもろ無い奴」と書いたことから「炎上」しました。

ワイドショーの取材では、ラーメン店の責任者はワイドショーの取材に応じ、深夜3~4時ぐらいまで無言電話が鳴り響き、電話の総数は1000件以上とも答えていました。

さらにはラーメン店の責任者の名前などが、ネットで拡散したのです。

ついには当事者である芸人が、「ネットの皆様へ もう、やめましょう」と、ラーメン店への攻撃を止めるようお願いする事態にまでになりました。

よくあるネット炎上のパターンですが、それにしてもネットは、どうしてこうも簡単に炎上するのでしょうか?また、気持ちよく撮影に応じてくれた芸人を、ラーメン店はなぜいきなり攻撃してしまったのでしょうか?

匿名だと攻撃性が増す

攻撃性と匿名性の関係を調査したことで知られているのが、米国の心理学者ジンバルドです。彼は3人の女性の実験参加者に目だけが開いた頭巾をかぶってもらい、互いの顔が分からない時と頭巾をかぶらないで互いの顔が分かる時のどちらの状態の方がより攻撃的になれるかといった実験を行いました。結果、何も被らず顔を見せている時より頭巾を被っている状態の方が、より攻撃的になれることがわかりました。

こうした匿名性の状態を「没個性化」と呼び、この状態になる要因として、ジンバルドは次の4つを挙げています。

1:匿名性の保障

2:責任が分散

3:興奮

4:感覚刺激が多すぎる

こうした状況に遭遇すると、人は自己監視が甘くなり、目の前の刺激への感受性が増大し、直情的に反応し、長期的な見通しもなくなると解説されています。

没個性化のわかりやすい例が暴動です。ロス暴動のように人種差別への怒りが、店から商品略奪に結びついたのは、没個性化があったからです。

ネットスラングで「炎上」のことを「祭り」と表現したりしますが、匿名性が担保された中で、みんなでいっせいに攻撃する興奮に酔い、ネットを通してその結果が次々と報告される刺激を味わい続ける状況は、まさに「お祭り」であり没個性化の状態だといえるでしょう。

当然、自分の行動がどれだけ他人に迷惑をかけるのかといった意識もなくなってしまうのかもしれません。

フラストレーションが攻撃の源に

では、こうした攻撃性の源はなんなのでしょうか?

その答えを探るヒントになりそうなのが、心理学者ミラーとダラードの唱えた「フラストレーション攻撃仮説」です。

この仮説では、人は欲求不満状態に陥ると攻撃行動を起こすと説明されます。そしてフラストレーションが大きければ大きいほど、攻撃性は強くなるというのです。

日常生活の中では、フラストレーションの原因に直接怒りを爆発させるのは、なかなか難しくなっています。威張った上司や失礼な客にも怒れない。そんなことは日常茶飯事でしょう。

そうなると攻撃の形式が変化したり、攻撃の対象が変わったりするというのです。攻撃の形式の変化とは、例えば影で悪口を言うといったことです。そして攻撃の対象が変わるとき、処罰されてよいと思える失態を犯したネット炎上の対象者は、格好のターゲットとなってしまうというのです。

この仮説に添えば、ネット炎上の背景には、フラストレーションを溜める社会構造があるといえそうです。

まず、自分の心を落ちつけて、なるべくフラストレーションを溜めないようにしたいものですね。

関連記事

職場で出会う攻撃的なナルシストへの対処法6選... 攻撃的な人と仕事をするのは、簡単なことではありません。中でもナルシストの傾向の強い人は要注意です。そこで職場で出会う攻撃的なナルシストの特徴とその対処方法についてまとめてみましょう。 攻撃的なナルシストの特徴って? どうして攻撃的になる? 自分の権利について考える ...
気づきにくい嫌がらせをしてくる「受動的攻撃性」を持つ同僚への対処法... 攻撃性の表われ方はさまざまです。いきり立って攻撃してはこないけれど、チクチクと棘が刺さるような攻撃を繰り返す厄介な人の心理と対処法を紹介していきましょう。 メンタルヘルスにも悪影響 受動的攻撃性の人の特徴的な行動 受動的攻撃性の人の心理と対処法 やってはいけない行...
ひっそりと他人のエネルギーを奪う人に要注意... パワハラに対する意識も高まり、少なくとも職場ではパワハラが許されないという認識が広まっています。しかしパワハラやいじめとも言えない微妙な形で、他人のエネルギーを奪うタイプにも注意が必要です。 会うと疲れる人 マウンティング 無礼な人 会うと疲れる人 何だか...
お酒や運転で豹変する人の危険性を考える... 性格が豹変してしまう人がいますよね。「それが本性なのかな?」と思うことも少なくないでしょう。確かに豹変すると、相手のことが信じられなくなりますよね。そこで運転やお酒など、人を豹変させる原因についてまとめてみました。 お酒の豹変は本性? 運転の豹変は危険⁉︎ お酒の豹変...
要注意! モラハラタイプ・支配的な人の特徴って... 一緒に居ると息苦しくなる人をパートナーにしていませんか? 妻・夫・恋人がモラハラタイプであることに気づかないことがあります。そこで行動を支配しようするタイプの特徴を、まとめたいと思います。 言動で相手をコントロールする人 【特徴①】条件付きの愛情 【特徴②】罪悪感を活用...

働く人の心ラボは、働く人なら知っておきたい『心の仕組み』を解説するサイト。
すぐに応用できる心理学の知識が満載の記事を配信しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です