スマホを見るのがやめられず、時間を無駄にしてしまったなんて経験はありませんか。現代人が陥りやすいスマホ依存から逃れるのは、なかなか難しいと思うでしょう。でも、たった一つのシンプルな方法があります!
- 依存症の本当の敵は孤独
- ラットパークの依存症研究
- ラットは仲間と一緒に依存症と闘う!
- 一般化することはできないけど……
- スマホを持ったらお出かけしよう
- リアルな交流をたくさん作ることがカギ
依存症の本当の敵は孤独
依存症の本当の敵は、何だと思いますか。薬物やアルコール、ギャンブルの魅力そのものが依存症の敵であると考える人は少なくないでしょう。だから、依存症に陥りやすい人は薬物やアルコールを遠ざけたり、ギャンブル場に近づくのを避けたりして気をつけています。
でも、その方法を使うことは、スマホ依存症の人には困難です。今や知人との交流に限らず、仕事も家事もスマホなしではこなせない世の中になっていますから。本当にどうすればいいのか、頭を抱えてしまいますよね。
しかし、依存症の研究では、依存症の本当の敵は、依存の対象となるものではないことがわかっています。依存症の敵は、むしろ孤独であるというのです。
ラットパークの依存症研究
一匹ずつ隔離されたラットに薬物を与えると、どんどん自分から薬物を身体に取り込むようになり、果てには依存状態になります。このような実験結果から、長く「薬物には自己管理能力を奪う力がある」「薬物は自分でやめることができず、最後には大量摂取で自滅する」という認識が広まるようになりました。
しかし、カナダの心理学者、ブルース・アレクサンダー教授は、あるときラットによる依存症の検証実験スタイルに疑問を抱きました。注目したのは、ラットが一匹ずつ隔離状態であるということです。実験に使われるラットの祖先は、強い好奇心と社交性を持つドブネズミ。孤立した状態に置かれたラットたちは、孤独に耐え兼ね薬物を乱用するようになってしまったのではと、アレクサンダー教授は考えたのです。
そこでアレクサンダー教授は、自然に近い状況へラットたちを解き放ち、薬物を乱用するようになるかどうかを観察しました。巣作りに最適なわらくずなどを敷き、遊び道具として箱や缶を置き、たくさんのラットと交流できる「ラットパーク」を作って、モルヒネ入りの甘い液体を設置します。
すると、ラットパークにいるラットたちは、モルヒネ入りの甘い液体を何度か飲んだものの、やがて避けて暮らすようになりました。ただし、甘い液体にモルヒネの解毒作用がある添加物を加えると、「飲んでも感覚が狂うことがない」と理解し始め、だんだんと液体を飲むようになったといいます。一方で、ケージに入れられた孤独状態のラットたちは、どんどん解毒剤抜きのモルヒネを摂取し、中毒状態へと陥っていったのです。
ラットは仲間と一緒に依存症と闘う!
また、アレクサンダー教授は次のような実験も行っています。ケージで薬物中毒状態となったラットをラットパークへ解き放ち、自然に近い状態の中でもモルヒネを使い続けるかを観察しました。すると、ラットパークの中では、中毒状態のラットも仲間と交流し、缶や箱で遊び、薬物から極力距離を置くように行動することがわかりました。
モルヒネによる解脱症状は、神経過敏になるなどの苦しいものです。それにもかかわらず、ラットたちはまるで仲間と一緒に解脱作用を耐え抜こうとするかのように、モルヒネ使用を減らし続けたといいます。
一般化することはできないけど……
私たちは、「では、どんな依存症も孤独を解消すれば快方に向かうのだろうか」と、すぐに一般化してしまいたくなります。しかし、ラットパークの実験を行ったアレクサンダー教授こそが、そのように一般化することを最も恐れています。一般化しすぎてしまったら、ケージの中の孤独なラットによる実験結果を安易に人間へ当てはめるのと、同じミスをおかしてしまうからです。
しかし、ラットパークの実験は、いくつかのヒントをもたらしてくれます。例えば、アルコール依存症の自助グループの存在が、いかに患者にとってプラスになるか、その説明に使えるような貴重な実験といえるでしょう。
スマホを持ったらお出かけしよう
スマホ依存に陥りがちな現代人は、バーチャルなSNSやメールで「人と交流している」と思い込みがちです。しかし、人との交流がじゅうぶんにある一方で依存症に陥ってしまっているとしたら、ラットパークの実験は途端に意味を持たないものになってしまうでしょう。この貴重な実験を活かすなら、「リアルに人と交流する」ことが、スマホ依存から抜け出す方法といえそうです。
休日もしもベッドでスマホをいじり始めたなら、せっかくですからお出かけ情報をチェックしてみましょう。休日ならではのイベント、スーパーの特売、バーゲンセールなど何でもいいのです。「よし、行ってみよう」と思い、外へ出ることが何より大事。そして、なるべく友人を誘って出かけましょう。もちろん、友人宅へ行くという用事を作るのでもいいですよ。SNSで交流するなら、「今から会わない?」とメッセージを送るのが、スマホ依存を抜け出す何よりの方法かもしれません。
リアルな交流をたくさん作ることがカギ
リアルな交流をたくさん作っていけば、スマホ依存からは自然と抜け出せます。人と会っている間は、物理的にスマホを見なくなりますから、友人と別れるとき「今日は全然スマホを見ていないな」と驚くことでしょう。
そして夜は、会った人たちに「今日はありがとう」とメッセージを送って眠りにつきます。いつもなら長々とやり取りをしている友人たちとも、その日はたっぷりリアルで話せたのですから、スタンプの応酬程度でやり取りが終わるはず。翌日は、充実した気分で朝を迎えることができるかもしれません。
参考
『本当の依存症の話をしよう』(星和書店)