終電まで働き、上司に罵倒される毎日。そんな状況なのに「自分に転職なんてできるわけない」「我慢するしかない」などと思っているなら、学習性無力感に陥っているかも。ブラックな環境から抜け出せるヒントをご紹介します。
- 学習性無力感とは、高ストレスの長期化による自己効力感の低下
- 学習性無力感から抜け出す2つのヒント
- 「あの頃の自分の精神状態は異常だった」と振り返られるように
学習性無力感とは、高ストレスの長期化による自己効力感の低下
高いストレスを与えられ続け、またその場から逃げ出せない状況が続くと、人や動物はその状況から抜け出そうとあがく努力をやめてしまいます。これを、学習性無力感といいます。「もう、何をやってもムダだ」というわけです。
こうした状況はブラックな環境とよく似ています。
会社に長時間拘束され、疲れていても弱音を吐くことは許されない。パワハラ上司から理不尽に罵倒される。どんなに残業しても給料はあがらない。もしそんな環境にいるなら、自分が学習性無力感に陥っていることに気づくことが、ブラックな環境を抜け出す第一歩なのです。
学習性無力感から抜け出す2つのヒント
自分が学習性無力感に陥っていることに気づいたら、抜け出す努力をしなければなりません。しかし無力感に襲われているだけに、かなり困難なことでしょう。そんな状態で会社と闘おうとしても、気力不足で負けてしまうかもしれません。
まずは、他人の力を借りることが大切です。
・周りに相談して視野を広げよう
まずは両親や兄弟、友人など身近な知り合いに相談しましょう。直接の対面、電話、SNSなど、手段は何でも構いません。ブラックな環境で働いている同僚は同じような無力感に陥っている可能性があるため、なるべく違う環境を教えてくれる人がいいでしょう。
『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』でブラック企業に勤めていた実情を描き、話題となった汐街コナさんは、同著の中で上司のパワハラから抜け出した人にインタビューし、「苦しんでいた当時の自分に声をかけるとしたら?」という質問をして、以下のような答えを引き出しています。
“世界は広いのだということ辛いときは信頼できる人に相談してみること
思い切って休んでみること
必ず誰かが、自分の頑張りや苦境を理解し、心配してくれているということ“
周りに相談すれば、様々な環境にいる人が、様々な立場からアドバイスをくれます。決して、アドバイス通りに行動しなければならないというわけではありません。学習性無力感によって狭くなってしまった自分の視野を広げるために、いろんな人の声が必要なのです。
・専門家に相談して対処法を一緒に考えよう
先ほど紹介した汐街コナさんのインタビューは、以下のように続きます。
“最初に理不尽な仕打ちを受け入れると、相手はどんどんつけあがるので戦うべき時はしっかり戦うこと
自分で戦えないなら人事や産業医に頼ること“
パワハラ上司から抜け出した人へのインタビューなので、ブラックな環境そのものから抜け出すためのヒントとは少し違う部分もあるかもしれません。しかし、「産業医に頼ること」という言葉から、専門家に相談することの大切さがみてとれます。
産業医はいないということであれば、無料で相談できる働く人のための相談窓口を利用してみてはいかがでしょう。
参考:厚生労働省委託事業の無料電話相談
働く人の「こころの耳電話相談」
「あの頃の自分の精神状態は異常だった」と振り返られるように
うつ状態になる前に、また過労で取り返しのつかない事態になる前に、ブラックな環境から抜け出しましょう。「同僚はみんな頑張ってるし、自分もこのくらいなら大丈夫」と思っていませんか。その職場から一歩離れれば、異常な光景に見えるかもしれません。
ブラックな環境から抜け出し、学習性無力感から解き放たれたとき、はじめて「あの頃の自分の精神状態は異常だった」と気づくことでしょう。一度きりの人生、貴重な時間を、一秒でも多く自分自身のもとに取り戻したいですね。
メンタルヘルスや産業組織心理学に興味のある方はこちらをご覧ください。
参考:『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』汐街コナ、ゆうきゆう、あさ出版