悲惨なニュースばかりをネットで追いかけ続け、気づいたら数時間が経過している。そんな行動を繰り返していませんか?それは欧米でも話題の「ドゥームスクローリング」かもしれません。その対処法についてまとめてみました。
- スマホでの不安解消が逆効果に
- 1日10回以上の情報収集が2割も
- 時間を制限する計画を
スマホでの不安解消が逆効果に
気が付くとニュースサイトで暗いニュースばかりを追っている。そんなことをしている人は少なくないようです。新型コロナウイルスの第1波が吹き荒れていたころ、「コロナうつ」といった単語がメディアでも大きく取り上げられ、新型コロナ関連のニュースを見過ぎないようにという注意も流れていました。
そして現在、緊急事態宣言が出され、緊迫した状態が続いています。そうした中、暗いニュースばかりを追ってしまう人が増えているかもしれません。こうした行動は、「ドゥームスクローリング」と呼ばれています。「ドゥーム」は絶望、「スクローリング」はスマホをスクロールするといった意味です。
テレワークなどで生活時間に余裕ができても、遊びに行けるわけではありません。そんなときにSNSなどで不安を解消しようと、新型コロナウイルス関連の情報を収集し始めると、どんどん不安が増すのにスクロールを止められないといったことが起きてしまうようです。そもそも不確実性の強いパンデミックでは、安心するような情報に巡り会うことが難しく、過度な情報収集は安心感を高めることにつながりにくいのです。
「ドゥームスクローリング」は身体的にも精神的にも悪影響がある、と『BusinessTimes』は報じています。不安や憂鬱、非生産的な行動、人とのつながりの減少といったことが起きる可能性があるそうです。
1日10回以上の情報収集が2割も
2020年6月に総務省が発表した「新型コロナウイルス感染症に関する情報流通調査」によれば、95%以上の人が、平均して1日に1回以上新型コロナウイルスに関する情報やニュースを見たり聞いたりしていました。また、1日20回以上の人が9.1%、1日10~19回の人が13.5%と、全体の2割程度の人が1日に10回以上、新型コロナウイルスに関する情報やニュースを見聞きしていたのです。
1日に20回以上となると、「ドゥームスクローリング」である可能性は高まるでしょう。
じつは「ドゥームスクローリング」でなくても、SNSを過度に利用すると幸福度が下がるという心理実験の結果もあります。
ペンシルバニア大学の実験では、「Facebook」「Instagram」「Snapchat」3つのSNSの利用時間を各10分に抑えたグループは、利用時間に制限のないグループより孤独感や憂鬱な気持ちが減少したことがわかったのです。この研究チームによれば、SNSの利用を1日30分以内に収めるだけでも、憂鬱や孤独感を減少させる効果が期待できるそうです。
また最近、ネット上でウソの情報が増大したと報道されましたが、「ドゥームスクローリング」はそうした情報を信じやすくなってしまう一つの要因だと、評論家の真鍋厚氏は分析しています。
つまり悲惨な情報だけを集め続けていると、精神が不安定になるばかりではなく、より怪しげな情報を信じてしまう可能性もあるということです。
時間を制限する計画を
何だか最近、スマホを握りしめている時間が長いぞと感じたら、自身の幸福度を高めるために動き出す必要があるかもしれません。
神経科学者のアダム・ガザリー氏は、マイナスの情報ばかりを集める悪影響を認識する必要があると指摘しています。「ハムスターが回し車で走り続けるように、ニュースを消費する生活をしたくない」と思うことが、大切だそうです。
暗いニュースばかりを追っていることで、どんな影響が出ているのかを具体的に考えてみれば、こうした悪い習慣を手放す決心がつくでしょう。
次にすべきは、ニュースを読む時間を計画することです。そして読み始めて10分たったらアラームをかけるようにすることで、無限のスクロールから解放されるそうです。
さらに休憩時間をスマホに費やすのではなく、散歩やエクササイズなどに変えてみるのも効果があるとのこと。
生活習慣が以前と変わってしまったため、ついついWebに接続してしまうこともあるでしょう。しかし過度な使用は気を付けたいですね。
心理学に興味のある方はこちらをご覧ください。
参考:「秘密結社が裏にいると信じる人が増えている訳」(真鍋厚/東洋経済ONLINE)/「Here’s how to snap out of doomscrolling」(『BusinessTimes』2020年7月18日)