「○○が自分の邪魔をする」と感じたことがありませんか?それはもしかすると、自分の何かを隠すための言い訳かも!?交流分析の創始者エリック・バーンの書籍から、行動の裏にある心理を解説します。
- 「ゲーム」は本音を隠したやりとり
- 「もしあなたがいなければ」
- 問題を打ち明ける
- 自身の欠点をアピールする
- 「ゲーム」の危険性
「ゲーム」は本音を隠したやりとり
「エゴグラム」という単語を聞いたことがありますか?CP・NP・A・FC・ACなどの尺度を使って性格判断をするものです。有名な性格診断テストなので、実際に受けてみたことのある人もいるかもしれませんね。この性格診断の下になっているのが、エリック・バーンの交流分析です。
心理学者の有名人ですが、その著作の一つが『人生ゲーム入門』です。バーンは、人間関係がいつも決まったパターンで現れることを発見しました。しかも、その「ゲーム」は本音の部分を隠したやり取りになることも見破ったのです。
こうした「ゲーム」については一般のテレビゲームと違って、バーンは「一定の結果を望みながら、本音を隠して一連のうわべを取り繕った交流を行うこと」「繰り返し行われる一連の交流で、最後には両者が不快な感情を残し破壊的に終わるもの」と定義しています。
そして『人生ゲーム入門』には、「ゲーム」の実例が上がっています。1964年の世界的なベストセラーですが、現在でもその実例と分析は人間関係の大きなヒントが詰まっています。
さっそくいくつかの実例を紹介していきましょう。
「もしあなたがいなければ」
本当はしたいことがあるのに、誰かが邪魔で実行できないと考えたことは、一度や二度はあるのではないでしょうか。「部長が心配性だから新規のプロジェクトが進まない」「嫁が落ち着かないから資格の勉強が進まない」などなど。
こうした「ゲーム」を、バーンは「ほとんどの人は自分を制限してくれるような配偶者を無意識に選んでいる」として、次のような例をあげています。
ある女性がダンスを習いたかったが、夫が人づきあいを拒むため社交範囲が限られてしまう。その女性は「夫がいなければ」と思っていたのですが、実際にダンス教室に参加したら、人前で踊るのが怖くてやめてしまった。
ここでのポイントは、「もしあなたがいなければ」というゲームは、相手を非難する理由が、自分の問題であるというもの。人前で踊るのが怖いという恐怖心に向き合いたくないために、「夫がいなければ」と思い込んでしまうというわけです。
つまり「もし〇〇がいなければ」と思ったら、その相手を非難する理由が自分に当てはまっていないのかを検証してみましょう。もしかしたら、自分の欠点を見たくないために、自分で「邪魔者」を作り出しているのかもしれません。
問題を打ち明ける
親しくなると「こんなことがあってね」と、悩みを相談されることもあるでしょう。こうした相談に次々と解決策を提示することが、相手の望んでいる対応ではないという話は聞いたことがあるかもしれません。
この「ゲーム」をバーンは、他人に同情してもらうためのものだと解説します。解決したいのではなく、たんに同情してもらいたいというところがポイントです。じつは解決しようとすれば、それなりの労力やリスクを負わなければなりません。それまでの覚悟がない人がほしいのは同情だけなのです。
カウンセラーであれば、傾聴の技法などを使って自ら解決に向かうように寄り添うこともできますが、一般的にはそうもいかないでしょう。相手が望むように、思いっきり同情してあげるのも、この「ゲーム」では必要なのかもしれません。
自身の欠点をアピールする
「どうも遅刻癖が治らなくて」「体力がなくて」など、自分の欠点をアピールする人いますよね。こうした「ゲーム」の本心を、バーンは「木製の義足」と呼びました。その本心は、「木製の義足を持っている人に何を期待するのですか?」だと解説しています。
自らの欠点をアピールすることで、責任逃れの言い訳をするというのです。もし、自分が欠点をアピールしているなと感じたら、責任逃れをしたいのかもと考えることも必要でしょう。
「ゲーム」の危険性
ゲームは心の未解決の問題に直面しなくて済む反面、ゲームをすればするほど他の人に参加してもらいたいと思う気持ちが強くなり、ゲームに関連した人のメンタルにマイナスの影響が出るとも、バーンは警告しています。
本音を隠して、うわべを取り繕った交流を続けることの危険性について、私たちは少し考える必要があるのかもしれませんね。
参考:
『世界の心理学 50の名著』(T.バトラ=ボーン 著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)