子どもって、「ダメ」といいたくなるようなことをやりたがりますよね。親のスマホをいじったり、危険な場所で遊ぼうとしたり……。元気なのはいいことですが、大事になる前になんとかやめさせたいと思うのではないでしょうか。そんなとき、バツを与えて無理やり言うことを聞かせていませんか。それは実は、逆効果かもしれません。
- 「コレで遊ぶのは絶対にダメ」が逆効果な理由
- 禁じられたおもちゃの魅力度を測る実験
- いかにそれを「魅力のないもの」と思わせるかがカギ
「コレで遊ぶのは絶対にダメ」が逆効果な理由
たとえ大人であっても、魅力的なことを我慢するのは相当大変です。それでも夜中のケーキを我慢したり、飲み会の誘惑を断ったりできるのは、「太る」とか「翌日の仕事に差し支える」といった、耐え難い代償が待ち構えているからでしょう。
だからこそ、大人は「いけないことをしたらバツを与える」ことで子どもをしつけようとしがちです。しかし、心理学的にいうと、それは逆に子どもを禁止した行動に走らせる起爆剤になってしまう可能性があるのです。「禁止」をテーマとした子どもの心理実験から、その理由を探りましょう。
禁じられたおもちゃの魅力度を測る実験
1963年、心理学者のアロンソンとカールスミスは、4歳児を集めて5種類のおもちゃがある部屋へ連れていきました。そしてひとしきり遊ばせた後、「どのおもちゃが好きか」アンケートを行い、5つのおもちゃをランク付けさせました。その後、子どもが2番目に好きだと申し出たおもちゃについては「それで遊んではいけないよ」と言い渡して外出したのです。
このとき、4歳児を3つのグループに分けました。一つめは、「2番目に好きなおもちゃを実験者が持ち去ってしまう」グループです。二つめは、「2番目に好きなおもちゃで遊んだら、怒るし罰を与えるよ」と告げるグループです。三つめは、「2番目に好きなおもちゃで遊んだら、ちょっと怒っちゃうかもしれないな」と告げるグループです。
結果、子どもたちはみんな2番目に好きなおもちゃで遊ぶのを我慢できました。しかし、改めて好きなおもちゃのアンケートを取ると、2番目に好きなおもちゃの魅力度がアップしたグループと、そうではないグループに分かれました。
当のおもちゃを持っていかれてしまったグループと、そのおもちゃで遊んだら「怒るし罰を与える」といわれたグループでは、禁じられたおもちゃの魅力度が増大しました。一方で、「ちょっと怒っちゃうかも」といわれたグループでは、禁じられたおもちゃの魅力度は変わらないか、逆に減少するという結果になったのです。
いかにそれを「魅力のないもの」と思わせるかがカギ
おもちゃの魅力度が下がれば、そのおもちゃで遊ぼうとする可能性は低くなります。一方で、厳しく罰せられると思えば思うほど、またそのおもちゃが手元にないと感じるほど、「そのおもちゃで遊びたい」という誘惑をかきたてるのだとすれば、日々のしつけのあり方を少し考えなければならないかもしれません。
厳しい罰を与えるのも、禁じられた行為をしないよういつも見張っているのも、親の体力や精神力を消耗させます。やってほしくない遊び、行ってほしくない場所を、いかに「魅力のないもの」と思わせるかに知恵を使った方が、はるかに効果があるのではないかと、おもちゃの実験は教えてくれます。
「子どもがスマホをいじって困る」という人は、自らがスマホ依存に陥っていないかどうか考えてみましょう。家事をするとき、調べ物をするとき、何かと親がスマホに頼っているのを子どもが見たら、「スマホは魅力的なものだ」と思うのは当然のことです。触ってほしくないものには自分もあまり触らないことを、意識して暮らしてみるのはいかがでしょうか。
参考:『社会心理学ショートショート』p.67