「子供の頃怖かったもの」がツイッターでかなりつぶやかれているようだ。ツイートを眺めてみると、なぜ怖かったのかわからないものばかり。というわけで恐怖だった理由を心理学で解説します。
- 『パンを踏んだ娘』は怖い
- 心理学では有名な「アルバート坊や」の実験
- 成長とともに怖くなるもの、怖くなくなるもの
『パンを踏んだ娘』は怖い
最近、トレンドワードに入っていた「子供の頃怖かったもの」。いろんな人が怖かったものを並べていますが、かなり楽しめます。個人的には、『パンを踏んだ娘』(歌まで頭に浮かびます)や「あなたの知らない世界」、横溝正史の小説のカバーは、確かに怖かった!
でも、大人になった自分には、どうして怖かったのか分からないものも……。
筆者自身、子どもの頃は幽霊関連がいっさいダメ。『エクソシスト』なんかも一切見れませんでした。それがいつの頃から怖くなくなり、ゾンビものとか笑って見られるように……。
実際、幽霊らしきものも見たことがありますが(毎年のように死亡事故が起こっていた道路で!)、正直、人間よりは怖くないかも! 元殺人犯に取材先で凄まれたときの方が、幽霊の数百倍も怖かった……。
というわけで、子どもが怖いと感じる理由について、心理学的に調べてみました。
心理学では有名な「アルバート坊や」の実験
子どもの恐怖に関する研究では、実験自体が恐ろしい「アルバート坊や」の実験があります。まだ心理学実験の倫理規定も緩かったためか、生後1年にも満たない乳児だったアルバート坊やに、実験用のネズミを触らせてバケツを叩くような音を大音量で聞かせ続けたのです。
その結果、最初は音に恐怖を感じていたアルバート坊やは、ネズミだけではなく、ウサギ、クマのぬいぐるみ、毛皮のコート、サンタクロースのお面のひげと、ふわふわしたもの全般に恐怖を感じるようになってしまったのです。
つまり恐怖も学習されると証明したというわけです。
今では考えられないような実験ですが、ツイートされたものの中にも、そのもの自体が怖いのではなく、何らかの恐怖と一緒に刷り込まれたものがありそうですね。
成長とともに怖くなるもの、怖くなくなるもの
三重大学の富田昌平教授は、「幼児期における恐怖対象の発達的変化」という論文で、幼児の恐怖対象がどのように変わるのかを、当人へのインタビューや保護者のアンケート調査で明らかにしています。
その論文によれば、幼児期の多くの子どもは怖いものがあるものの、その恐怖の度合いは4歳から5歳にかけて減少するのだそうです。また、怖いと感じるものとしてあげた物の中で、「被り物・動く人形」は年少児と年中児だけ。「怖い夢・想像」への恐怖は年長児だけに見られるとのこと。
これは本物に似せた被り物を「偽者」と感じ取れないために、年少・年中児には怖いが、年長児になると「偽者」だと見破れるから怖くなくなるのだという。
「怖い夢・想像」は死につながる想像で怖がることが多いため、死を認識できるようになる年長児から怖くなると解説しています。
また「お化け」を3歳ぐらいまでに怖がらなくなる理由を、お化けや妖怪は具体的にイメージできるから怖くなくなり、具体的にイメージしにくい幽霊や死が恐怖の中心になるとも説明しています。
実際、ツイートにあげられた「怖かったもの」も、具体的にイメージしにくい恐怖につながっているのかもしれません。
「はじめての人・場所」への恐怖について、これは男児よりも女児が怖がる傾向があるそうです。富田氏は「一般的に女児は男児よりも共感性が高く、人間関係により関心を持つ傾向にあるため(Baron-Cohen,2003/2005)、人間関係に困難さを感じた時に恐怖や不安の対象になり易かったのかもしれない」と結論付けています。
もう幼児にして人間関係の怖さを感じている人がいるということのようです。これは大人になった時の方が、より怖く感じるようになるものかもしれませんね。