絶対に介護離職をしてはいけない5つの理由

親の介護が生じ、自分しか親を介護する人がいないと思うと、「仕事を辞めて介護に専念すべきでは?」と考えてしまうかもしれません。しかし、できるだけ介護離職は避けるべきでしょう。介護離職をしてはいけない理由を、5つご紹介しましょう。

  1. 辞めてしまったら、介護が終わっても今の賃金で雇ってくれるところがなかなか見つからない
  2. 親が亡くなれば年金に頼れなくなる
  3. 社会的に孤立する
  4. 生活リズムが崩れメンタル疾患を抱えるリスクが増える
  5. 親のために子が職を失うのは、親にとってもつらい
  6. 今が踏ん張りどき!介護休暇や有休を駆使して、介護体制を整えて

①辞めてしまったら、介護が終わっても今の賃金で雇ってくれるところがなかなか見つからない

親の介護が生じる年代は、40代から50代。会社では中堅どころとなり、管理職としてマネジメントを行ったり、重要なポジションに就いていたりする頃です。長く働いていれば、賃金もそれなりにもらえていることでしょう。

しかし、いったん仕事を辞めてしまうと、介護が終わって再就職したいと考えたときには、また一からのスタートになります。今の賃金で雇ってくれるところは、なかなかありません。「一からでもいい、頑張ろう」と張り切っても、若い頃とは肉体的な条件がかなり違い、身体を壊してしまう恐れもあります。

明治安田生命福祉研究所の調査によれば、介護離職後、仕事と介護を両立するために転職した人の平均年収は男性が4割、女性は5割もダウンしているとのこと。正社員から介護のために転職した人のうち、正社員に転職できたのは、男性は3人に1人、女性は5人に1人との調査結果が出ています。介護離職後、厳しい現実があなたを待ち受けています。

参考 :「仕事と介護の両立と介護離職」に関する調査

②親が亡くなれば年金に頼れなくなる

親が生きていれば、年金を受け取ることができます。それで無意識に「離職しても何とか生活できているな」と感じることがあるかもしれません。しかし、介護が終わり、親が亡くなれば、年金には頼れなくなります。平均して14万円ほどが月々の収入から消えるのです。

先に示したように、仕事と介護を両立するための転職でさえ正社員として雇ってもらえる可能性はかなり低いといえます。まして親の介護が終わってからの再就職では正社員の雇用はかなり厳しいのではないでしょうか。そこへ来て14万円の収入減は厳しいですよね。介護中よりも、介護が終わった後のほうが、経済的に辛い状況に陥る可能性が高いと言えるでしょう。

③社会的に孤立する

会社を辞めると、独身者はとくに、親と自分だけの閉じた暮らしの中へ入っていくことになります。日常的に会話をする他人が、格段に減るのです。すると、社会的に孤立してしまう恐れが出てきます。辛いとき、誰にも愚痴さえこぼせず、心配なことがあっても相談できないことが続くと、精神的に追い込まれていくのではないでしょうか。

介護者が社会的に孤立すると、介護に必要な情報にアクセスできる可能性も減ってしまう可能性が高まります。ケアラーズカフェ、オレンジカフェなど、介護者が集まれる場所のある地域も存在しますが、まだまだ十分な状況だとは言えません。

④生活リズムが崩れメンタル疾患を抱えるリスクが増える

これも独身者にありがちなことですが、介護が始まると生活リズムが崩れ始めます。親が起きる時間に合わせて起き、眠ってくれているときは自分も昼寝をし……という生活が続くと、昼夜逆転してしまうことも珍しくありません。

不規則な生活を続けると、神経伝達物質であるセロトニンの分泌に悪影響を及ぼすといわれています。セロトニンは気分をコントロールし、精神的安定に深くかかわる物質です。分泌に乱れがあるとメンタル疾患を抱える恐れがあります。ただでさえ社会的に孤立なになりがち介護者は、精神的に追い詰められるリスクを増やしてしまうことになりかねません。

⑤親のために子が職を失うのは、親にとってもつらい

もし、将来あなたの子どもが「お父さんの面倒を見るのは私しかいないから、会社を辞めるしかないね」と言ったらどう思いますか。とても申し訳ない気持ちになり、できれば辞めてほしくないと思うのではないでしょうか。親のために子が職を失うのは、親にとってもつらいことなのではないでしょうか。

親のためを思うのなら、親の幸せを考えるのも大事ですが、まずは自分の幸せを考えることが大切なことなのかもしれません。あなたが会社を辞めて介護に専念し、経済的にも精神的にも追い込まれていくのを見ながら衰えてゆくのは、親の本意でしょうか。誰よりも親のために、自分が毎日笑って機嫌よく暮らす姿を見せてあげることを考えてみませんか。

今が踏ん張りどき!介護休暇や有休を駆使して、介護体制を整えて

突然介護が必要になると、予備知識のなさから「自分が仕事を辞めるしかない」と思い詰めてしまいがちです。でも、慌てて会社に電話をかけ「辞めます」と言うのではなく、ひとまず「休みます」の一言を。有給休暇、介護休暇、介護休業制度等を使うことで、なるべくまとめて休みを取れるよう努めましょう。

休みが取れて心が落ち着いたら、介護と仕事を両立するためのプランを練ります。地域包括支援センターや役所の健康支援課、親が入院・通院している病院などに相談しながら、いかに自分が日中介護にタッチせず過ごせるかを模索するのです。体勢を立て直すまでは、なるべく休みつつも会社を辞めないのが得策。産業カウンセラーなど、社内に相談体制が整っている人は、そちらもぜひ利用しましょう。

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