過労死に対する経営者の責任について判例を調べてみました!

過労死の認定基準は定められ、高額の損害賠償も認められるようになっています。そうした判例を紹介します。

  1. 1億円の支払いを命じる
  2. 100時間を超える時間外労働で高額賠償に
  3. 賠償金の減額が認められにくい

1億円の支払いを命じる

2015年9月、京都地裁は36歳の建設会社社員の自死の原因を過労死と認め、原告の請求通りに1億円の支払いを命じました。

自死した男性は京都の建設会社に1997年に入社。2009年以降は、不動産の契約書や家賃請求書の作成を担当してきました。このころから早朝や夜間の残業が増加。自死までの2年間に時間外労働は恒常的に100時間を超え、自死前の半年では最大で月153時間、平均で月129時間の時間外労働となっていました。さらに連続10日以上の出勤についても4回あったとされています。

過労死と時間外労働との関係については、労働基準監督署が過労死を認定する「過労死ライン」と呼ばれる基準があります。発症前の1ヵ月間に100時間以上、または発症前2~6ヵ月間の時間外労働が80時間を超える場合は「業務と発症との関連性が強い」と判断されるものです。

つまり、この事件については時間外労働だけでも過労死ラインを超えています。しかし請求が全額認められた背景の一つには、同社の社長が従業員の精神的な危機を知っていたという事情もありそうです。

報道によれば、2011年5月24日に自死した男性は病院で「抑うつ状態」との診断を受け、その2日後に診断書を会社に持参。同社社長に提出したにもかかわらず、社長が受け取りを拒否しました。その数時間後に自死したのです。判決では診断書を社長に見せたことに触れ、「健康状態が悪化しているのを認識しており、安全配慮義務違反があった」と書かれています。

100時間を超える時間外労働で高額賠償に

過労死について、1億円を超える判決はすでに珍しいものではありません。大手鉄道会社社員の遺族が、自死前9ヵ月間に113時間~254時間もの時間外労働をしていたとして提訴した事件では、今年3月に大阪地裁が約1億円の支払いを命じました。この事件で裁判長は「自殺前に著しい長時間労働が継続し、管理が十分になされていなかった」と断じています。

恒常的に100時間を超える時間外労働をしている従業員が過労死をした場合、企業が高額な賠償を支払うことになることは、多くの企業経営者が知っておくべきでしょう。

また2013年11月には、居酒屋チェーン店の従業員が過労死した裁判において、会社だけではなく社長個人の賠償義務を認める判決を最高裁が下しています。さらにステーキチェーン店の従業員が過労自死したケースでは、会社だけではなく、社長や自死した従業員の上司個人の賠償義務を東京地裁が認めました。

会社の責任を超え個人にも賠償責任を認める流れは、無視できないものといえるでしょう。

賠償金の減額が認められにくい

さらに過労自死事件として非常に有名な大手広告代理店事件の2000年3月の最高裁判決では、賠償金の減額となる過失相殺を限定する判決を出しています。具体的には「うつ病親和的といった病前の性格」や「両親の監督責任」について、高裁判決を覆し相殺過失を認めませんでした。

先に紹介したステーキチェーン店の事件では、会社側が「金銭問題や家族との確執などが自殺の原因」と主張したものの、東京地裁は「証拠がない」と断じ、過失相殺を認めていません。

つまり時間外労働80時間を超える中で過労死が起きた場合、企業の責任として経営者が賠償責任を回避することや過失相殺による賠償金の減額が、認められにくい状況になってきているのです。

勤務問題を原因とする自死は2011年を最高に、2013年は2323件と前年比で149件下回っています。しかし自死原因としては、依然として勤務問題が高い割合を示しています。働きやすい職場をつくりあげることは、時代の要請ともいえるでしょう。

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