ホストやホステスは労働者なの?

自分が労働者なのか個人事業主なのかということを、通常気にしない人も多いでしょう。しかし給与が支払われずに解雇されたといった事態となると、とても重要な問題に発展します。ホストやホステスが原告の判決から説明していきましょう。

  1. ツケを回収できないから無給
  2. 労働者かどうかを判断する3つのポイント
  3. 遅刻や欠勤の罰金は違法
  4. 個人事業主だと主張する会社

ツケを回収できないから無給

2015年、東京地裁は東京新宿・歌舞伎町のホストクラブで働いていた20代のホストを店と労働契約のあった労働者と認め、未払い賃金として約176万円の支払いを店側に命じました。判決によれば、男性は2012年12月から同店で勤務。しかし客のツケを回収できないとの理由から2013年1月から無給となり、同年5月には勤務態度が悪いとして解雇になりました。

ここで問題になったのが、ホストが個人事業主なのか、それとも労働者なのかだったのです。店側は完全歩合制の個人事業主だと主張。一方、原告であるホストの男性は、店から指揮監督を受けていたとして労働者であると主張しました。

労働者かどうかを判断する3つのポイント

じつは労働者か個人事業主かの判断は契約書の記述ではなく、労働の実態に即して判断します。その際に基準となる要件がいくつかあるのですが、最も重要なのは次の3つ、「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無」「業務遂行上の指揮監督の有無」「拘束性の有無」とされます。

「許諾自由の有無」とは、具体的な仕事の依頼や業務上の指示に対して拒否する自由を持っているかが問われます。いうまでもなく拒否する自由を持っていれば労働者ではなく、個人事業主となります。また「指揮監督の有無」とは、雇用主から具体的な指揮命令があるのかどうかが問われます。「拘束性の有無」では、勤務場所や時間が管理されているかが問われます。

今回の判決では、「男性が店から指示された接客を断ったことがないこと」「自分の指名客以外でもヘルプとして接客していた」ことから、「許諾の自由」がなかったと判断されました。さらに、「店がタイムカードを使って勤務時間を管理していたこと」から、「拘束性」があったと判断。ホスト男性は個人事業主ではなく、労働者であり解雇は無効。未払い賃金の支払いも認めたのです。

遅刻や欠勤の罰金は違法

じつは個人事業主か労働者かという争い自体は珍しいものではありません。2010年3月9日の東京地裁判決では、客の売掛金をホステスに肩代わりさせ、遅刻や欠勤の罰金として天引きする「銀座ルール」と呼ばれる慣行について争われました。ここで銀座ルールは違法とされ、店側の「ホステスは個人事業主」という主張も否定されました。この判決では、諾否の自由もなく、指揮監督も受け、勤務場所や勤務時間についても拘束されていることなどが労働者である根拠とされました。

さらに2005年8月26日の大阪地裁判決でも、飲食店のホステスについては、業務遂行上の指揮監督権こそホステス側にあったものの、仕事依頼の諾否の自由はなく、時間的拘束性があったことなどをあげて、労働者に当たるとの判決を下しています。

個人事業主だと主張する会社

個人事業主となれば、労働基準法で守られるべき対象ではなく、労働者を解雇するときに必要となる「社会的合理的理由」も必要なくなります。また、1日8時間・週40時間を超えて働くと付く割増賃金も支払われなくなり、有給休暇も労災補償もありません。

こうした背景にあるのは、労働者は会社とくらべて弱い立場なので保護すべきであり、会社同士の契約は自由におこなわれるべきだという考え方です。そのため労働基準法の保護規定を嫌った企業側が労働者を個人事業主だと主張することが少なくありません。その一方で、個人事業主が持っているはずの指揮監督などを認めず、雇用主サイドの思い通りに労働者を動かそうとします。こうした雇用サイドの“良いところ取り”を裁判所が否定すると、積み重なった不払い賃金がかなりの額に及ぶこともあります。

「銀座ルール」に代表される労働者いじめの商習慣がまかり通っている場合、その違法性に気づき、労働者側が声をあげることで、その業界の労働環境改善にもつながっていくのではないでしょうか。

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