仲良し集団は吉か凶か? 「みんな、仲間だよね♡」なテンションが経営者にとって危険なワケ

職場がフレンドリーで明るい雰囲気に包まれることは、現代の企業において大事なこととされていますよね。人手不足で超売り手市場の中、社員は「居心地が悪い」と思うようなら、すぐさま転職を考えてしまいます。でも、社員みんなが仲良し集団になってしまうのもまた、困りものです。居心地のいい会社づくりが経営者にどんなリスクをもたらすかを、心理実験からひもときます。

  1. 「うちの社員は仲がいい」と思っているなら、諸刃の剣にご用心
  2. シャクターの生産性実験
  3. 手紙によってコントロールされた生産性
  4. モチベを上げるのは難しいのに、ボイコットは全員が簡単にやるかも!?
  5. 定期的な採用や異動、席替えが「空気の入れ替え」に有効

「うちの社員は仲がいい」と思っているなら、諸刃の剣にご用心

会社の雰囲気がいいと、経営者もほっとくつろげますよね。上司、部下を問わず何でも相談できる環境が整っていて、ときには砕けた話もできる関係性が確保されていることは大事です。人間関係がピリピリしていると、それだけで離職の理由になりえますし、コミュニケーションが十分に取れないことによるトラブルが起こりがちです。

でも、仲が良すぎることは、なあなあの関係性を生みがちです。ときにはダレた姿勢で仕事をすることにもつながり、経営者から見れば「だらしない」と思う場面もあることでしょう。「でも、仲がいいことはいいことだ。メリットのほうが、デメリットよりも多いはず」と思い込んでいるなら要注意。その諸刃の剣は、デメリット面の方が多い場面もあるからです。

シャクターの生産性実験

構成員がお互いに好意を持っていて、まとまりが良いことを、「凝集性が高い」といいます。心理学者のシャクターは、凝集性の高さが生産性にどんな影響を与えるかを実験しました。

凝集性の高い集団は、一丸となって働き、「しっかり頑張ろう」と誰かが言えば、生産性が高くなるという予想があります。その一方で、誰かが「サボろうよ」と言いだしたら、全員が同調しかねません。さて、どちらの効果が高かったでしょうか。

実験は、次のように行われました。参加者である女子学生150名に、まずはパーソナリティ・テストを行います。そこでフィーリングがぴったりな学生を3人ずつのグループを25つくり、「あなた方は相性抜群、すぐ仲良くなれる人たちで作られたグループです」と告げました。そして、相性が合わない3人グループも同様に25作成し、「残念ながら、あなた方のグループは相性が悪い人たち同士で作られています」と告げました。

その後、3人を3つの部屋に一人ずつ案内し、3人の協力が必要な作業をそれぞれ行ってもらいました。3人は手紙でコミュニケーションできるようになっていましたが、実際にはその手紙は実験者の用意した手紙にすり替えられ、本人たちの書いた手紙がそれぞれに届くことはありません。

手紙によってコントロールされた生産性

彼女たちのもとに届く手紙は、最初は当り障りのないものでしたが、時間がたつにつれ、生産性について訴えるものになっていきます。半分のグループには、「もっと作業の速度を上げてくれませんか、隣の人から急かされてしまって……」などといった、生産性の向上を要求する手紙が届けられました。そしてもう半分のグループには、「疲れたんで、もう少しゆっくりやりましょう」といった、生産性の低下を促す手紙が届けられたのです。

結果、凝集性が高く、かつ生産性の低下を促す手紙が届けられたグループの生産性が、最も悪かったという報告がなされました。そして「もっと頑張ろう」といった、生産性の向上を促す手紙が届けられたグループの生産性は、凝集性の高低で差がつくことはなかったのです。

モチベを上げるのは難しいのに、ボイコットは全員が簡単にやるかも!?

つまり、仲がよかろうが悪かろうが、誰かが生産性を上げようとしたときの成果はとくに変わらず、逆に誰かが生産性を下げようと促したときには、仲良しグループのほうが簡単に同調したと言うことができます。これは、経営者にとっては由々しき問題ではないでしょうか。

モチベーションを向上させるのは難しいくせに、ボイコットは全員が簡単に参加するかもしれない集団ができあがってしまうということなのです。会社の状態が良いときには、何も問題が起こらないかもしれません。しかし、いざなにかアクシデントが起こったとき、踏ん張れない組織かもしれないというのは非常に危険です。

定期的な採用や異動、席替えが「空気の入れ替え」に有効

まとまりが良いのは好ましいことですが、なあなあになってしまうのは問題でしょう。なんとか、コミュニケーションが活発な中にも緊張感が漂い、ビジョンを共有しながらも多様な考え方を持った集団を作り上げたいですね。

そのためには、採用段階で必要な能力を見るだけではなく、新しい刺激としてオフィスにいい影響を及ぼしてくれるかを考えるのが有効です。また、定期的な移動や席替えは、固まった人間関係をいい意味でいったん崩してくれるでしょう。「空気の入れ替え」で、居心地の良すぎる会社のリスク管理を行いましょう。

参考:「対人社会心理学重要研究集1」

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