気づいたら部屋のインテリアがピンク一色だった! なんて女子はいませんか。色の好みには個人差がありますが、色彩心理学では、年齢や性、お国柄など文化によって、かなり好みが左右されているとされています。今回は年齢差で変わる色の好みについて解説します。シニアは、別にくすんだ緑が好きなわけじゃないってご存知でしたか!?
- 赤ちゃんは複雑な色を認識できない
- 男の子と女の子で興味を持つ色の違いがあるって本当?
- 好みの色の差は、大人になるにつれ小さくなる
- シニアは別に「くすんだ色」が好きなわけじゃない!?
- 自分が本当に好きな色味を理解している?
赤ちゃんは複雑な色を認識できない
赤ちゃん用品は明るいパステルカラーのものが多いですよね。これには訳があります。大人の子どもに対するイメージから色味が選ばれているのではなく、色彩に関する脳の発達に合わせて、赤ちゃんや幼児が好む色が取り入れられているのです。
生まれたときの赤ちゃんは、黒やグレー、白くらいしか視認できません。色味というよりは、暗い色か明るい色かといった明度の認識が先に発達するといわれています。黒のグラデーションの次に理解するようになるのが、刺激色である赤、黄、青、緑といった、はっきりした色合いです。
ただ、「青緑」や「オレンジ」といった複雑な色合いの判断ができるようになるのは、月齢が進んでからのこと。赤ちゃんがとくに好むのは、特定の色合いというよりも明度の高い色であるといわれています。だから、赤ちゃん用品にはパステルカラーが多いのですね。
男の子と女の子で興味を持つ色の違いがあるって本当?
幼児期になると、おもちゃや子ども服にはポップな色味が多くなります。男の子には青や緑などの寒色、女の子にはピンクや赤といった暖色の服を着せる人が多いですが、それは子どもの好みと一致しているのでしょうか。
色彩心理学によると、男の子と女の子では興味を持つ色の傾向に違いがあるようです。理由は、明度の差と言われています。男の子は寒色、に限らず、ビビッドな赤や橙、黄色といったハッキリした色に興味を持つことがわかっています。一方、女の子はピンクのほかにも水色など、淡く明度の高い色を選ぶようです。
好みの色の差は、大人になるにつれ小さくなる
女児と男児によって好む色の傾向の違いは、思春期の手前まで続きますが、小学校を卒業するころになると、男女差よりも個人差が強く出てきます。流行に左右されやすくなるのもこの頃で、調査時期によって好みの色がかなり変わってしまいます。バブル期以降、モノトーンの装いが流行し、それまで日常着では避けられる傾向にあった黒を好む人が増えました。明るい色、ビビッドな色を好むとされる子どもの色彩嗜好も、ガラリと変わったようです。
思春期になると、男女で身体特徴に変化がみられるようになるのに、色彩の好みについては逆に差がなくなっていくというのは面白いですね。ただ、児童期までは「色味」として意識していなかった「白」を好む人が、男女関係なく多くなることが調査からわかっています。この傾向は、中年になるまで続くようです。
シニアは別に「くすんだ色」が好きなわけじゃない!?
中年以降、シニアになってくると、明度の高い色を好む人は減り、淡くくすんだ色合いを好む人が増えてきます。くすんだ緑がスーツやネクタイ、セーターなどに取り入れられるようになるのはこのためです。
一方で、赤や黄色といったビビッドな色合いの嗜好率も、若い頃ととくに変わらないという調査結果もあります。それにもかかわらず、我が国にくすんだ色の服ばかり着るシニアが多いのは、「年寄りは大人しい色を着るべき」という暗黙の常識ではないかと考えられます。
「そういえば、外国のシニアはそんなに灰色がかった服ばかり着ているわけではない」と、思い当たる人もいることでしょう。イタリアやフランスのマダムは、とくに明るい色味のファッションを楽しんでいる印象がありますね。パッと明るい色の服は、顔移りもよく、若々しく見えます。
もしも日本の慣習として、シニアが鮮やかな色を着ることに対して積極的に評価するような傾向にあったなら、「おばあちゃんの銀座」巣鴨の町並みは、もっとポップなものだったかもしれません。高齢化が進み、街にシニアがあふれる現代こそ、「シニア色」の先入観をみんなでなくしていけば、世の中にもっと明るい色が増える可能性があるでしょう。
自分が本当に好きな色味を理解している?
最近では、「好きな色より似合う色を」と、肌や瞳、髪の色から似合う色を引き出すパーソナリティー診断が注目されています。自分が本当に好きな色よりも、「その色、いいね」「似合うよ」と言われた色を好きになっていくということも考えられるでしょう。
しかし、身につけて本当の意味で元気になれるのは、直感的に自分自身が一番好きだと思える色ではないでしょうか。ときには人目や流行、社会人としての好ましさなどを気にせずに、思い切り好きな色を楽しみたいですね。持っているのは無難な色ばかりでも、本当のあなたは、もっと明るい色が好みなのかもしれませんよ!
参考:『色彩心理学入門』(中公新書)『色彩学概説』(東京大学出版会)