真のリーダーだけが知っている集団のなびき方!?

「部長の指示には、みんなが従うのに、自分が話をすると適当に流される。やっぱり話し方がいけないのかなー」なんて考えたことはありませんか? 組織への影響力の違いは、ビジネスで成果の差となって表れやすいもの。その差をどうにか埋めたいと思うのも当然でしょう。では、集団から認められたリーダーは集団からどのように扱われるのでしょうか?

真のリーダーだけが知っている集団のなびき方!?

  1. リーダーの行動をメンバーがマネる「行動感染」に注目
  2. 個々人の「能力」はみんなが正確に把握している!
  3. リーダーの姿勢が集団に自然に広まっていく
  4. 指示に従いやすくなるのもリーダーシップの力
  5. キャンプのリーダーを対象とした実験では見えないこと
  6. 企業が期待しているリーダーシップに「行動感染」が必要

2010年度に立教大学経営学部がまとめた「企業が求めるリーダーシップに関する調査」でも、企業が求める従業員に求めるリーダーシップの行動の重要性について、以下のようにまとめています。

「『メンバーの能力を引き出し、育成すること』(97.0%:まあ重要である+とても重要である)が最も多く、次いで「ビジョンをメンバーに浸透させること」(95.1%:まあ重要である+とても重要である)、「チームで協力して働くように働きかけること」(95.1%:まあ重要である+とても重要である)が同率に多い」

この結果からチーム内の従業員に想いを伝え、個々人の行動が変わるようにできるリーダーが、企業で求められているのがわかります。こうしたリーダーの持つ影響力について研究したのが、アイオワ大学で博士号を取った米国の心理学者リピットです。

リーダーの行動をメンバーがマネる「行動感染」に注目

彼はリーダーシップの古典的な研究として、いくつかの重要な成果をあげていますが、今回紹介するのはキャンプでの子どもの「勢力」(「明日人が他の人に特定の行動をとらせる潜在的な能力」〈〈『対人社会心理学重要研究集』(誠信書房)〉)★引用タグ★と行動についてです。この研究でリピットが着目したのが、「行動感染」と呼ばれる現象です。行動感染とは“感染”の名前の通り、一人が始めた行動を周りが同じようにマネをし始めるものです。ただしマネされた当人が、周りに同じ行動を取らせようとした行動ではないことも条件の一つです。つまり、いろんな指示を出して周りの行動を変えるのではなく、いつの間にか自分の行動を周りがマネるケースが「行動感染」というわけです。ちなみに、リピットは同じ行動を取らせようと周りに働きかけたものを「直接的影響」と呼びました。

リピットが実験の対象としたのは、4週間にわたって行われるサマーキャンプの子どもたちでした。ここでそれぞれを面談し、集団内での「勢力」を参加者から聞き取り調査するとともに、サマーキャンプ内での影響力を観察したのです。

個々人の「能力」はみんなが正確に把握している!

個々人の「能力」はみんなが正確に把握している!

まず面白いのは、この「勢力」の調査でした。子どもを研究対象としたこともあり、「勢力」のポイントを「運動能力」「大人のいいなりにならない程度」「遊びのアイデアを考えつく力」「大人びている態度」「周囲の圧力に屈しない程度」の5つに絞りました。この「勢力」について、メンバーに聞き取り調査を実施したところ、自分自身の「勢力」と他のメンバーの「勢力」を的確に把握していることがわかったのです。

では、この「勢力」のポイントを、「プレゼン力」「上司の言いなりにならない程度」「ビジネスのアイデアを考えつく力」「大人の振るまい」「圧力に負けない程度」と変えたらみたらどうでしょう。キャンプでの子ども達と同じように、大人であっても職場での能力の度合いを各人が明確に把握していることを、何となく感じるかもしれません。

「あの人は仕事できるよね」といった評価は、営業のように数値化できない部署でも、意見が一致しやすいもの。その理由は、子どもの頃から持っている「勢力」の分析能力にあるといえるでしょう。逆に、自分の能力を高く見積もり過ぎるタイプの人は、周りから浮いてしまいがちになるのも頷けます。みんなが正確に能力の順位付けをしているのに、自分だけ順位が違うのですから!

みんな順位付けが15位なのに自分だけ3位だと思って、リーダー風を吹かせれば、面白くないと感じる人もいるでしょう。さらにひどいケースでは、陰で笑われるといったことにもなりかねません。

さらに恐ろしいのは、役職と実力が異なっている場合でしょう。

役職上は上司なのに、みんなが認めているリーダーは別の人。そんなことは、当たり前に起こっていることでしょう。上司に取り入るだけで出世した。親族のバックアップで役職を与えられた。そんな形で地位だけを獲得しても、周りは実力をしっかり把握しているわけですから、上司なのにどこか上司として扱われないといった寂しい経験をすることになります。そんな扱いがいたたまれないと感じる人は、自分が実力通りの役割を与えられているのかに注意を払うべきでしょう。

リーダーの姿勢が集団に自然に広まっていく

リーダーの姿勢が集団に自然に広まっていく

子ども達の行動観察では、さらに面白いことが判明しました。勢力を持つ人が「行動感染」を起こす頻度が高かったのです。つまり「勢力」を持つリーダーの行動を、メンバーたちは自然とマネてしまうことがわかったというわけです。

これはなかなか興味深い実験結果です。職場でもチームリーダーがお手本になるような行動をしていれば、それをメンバーが自然にマネるし、逆もしかりということになるからです。そもそもメンバーがリーダーを決める時点で、集団の主な性格が決まってきますので、ビジネスならまったく利益を上げられないタイプがリーダーになるわけではないでしょう。しかし、少々コンプライアンス上で問題があっても利益を取りに行くリーダーなどが、皆からリーダーと認識されたときは、問題行動が自然に広まってしまうことになるのです。

同じ会社であってもリーダーごとに集団の行動が違うのも、こんなところに理由があるかのしれませんね。

指示に従いやすくなるのもリーダーシップの力

じつは集団でリーダーとして認識されると、行動を自然にマネされるだけではなく、指示するような直接的な影響も受け入れられやすくなることも、この実験でわかっています。このような経験は、誰にでもあることはないでしょうか。自分が指示をしても仕事が進まないのに、別のリーダー的な人物が指示したらあっという間に仕上がったというようなケースです。こうした事態に「指示の仕方や頼み方がまずかったのかな?」と考えるのは間違っているかもしれません。指示の仕方や頼み方がリーダーより適切であっても、相手がリーダーとして認めない分、言うことをきいてくれない可能性があるからです。

こうした状況が、役職と実力が合っていない人の職場で起こると悲惨です。役職こそ上なのに指示通りに仕事が進まず、職場をコントロールできなくなるからです。こうした事態は、現場に管理者が派遣された場合や中央から支社に派遣された場合に起こりがちです。現場サイドには別のリーダーが居て仕事を完全に仕切っているため、役職が上の管理者が「お客様」として仕事にタッチできないような構造になりがちだからです。上司としてもてなすが、一切の管理ができない。そうした権力の二重構造は、時に思わぬ問題を引き起こすことになります。あくまでも真のリーダーを目指して実力を示していくべきか、逆に「お客様」として任期中だけやり過ごすのか、現実の対処方法は組織や人によって分かれそうです。

では、強い「勢力」を持つリーダーは、どのような行動を取るようになるのでしょう。実験によれば、メンバーに指示的に影響力を行使しようとし、成功することも多かったとのことでした。「あいつは役職についた途端、上から偉そうに次々と指示をだすようになったよ」と愚痴ったあなた。じつは、こうした行動こそリーダーとなった人が取りやすいものなのです。その指示が的確であればリーダーシップを発揮していることになりますし、冒頭のアンケート結果でも触れた「ビジョンをメンバーに浸透させること」にもつながります。

とはいえ、自分がリーダーだと感じると、より他のメンバーより影響力を行使したくなるといった行動特性は、ちょっと覚えておきたいポイントかもしれません。無意識に指示を乱発してしまえば、メンバーからリーダーシップは認められても、メンバーの心が離れてしまう可能性があるからです。ついついやってしまいがちな行動特性を意識できるようになり、自分の行動をコントロールできるようになるのも、心理学を学ぶメリットの一つかもしれません。

キャンプのリーダーを対象とした実験では見えないこと

さて、この実験について詳しく説明してきましたが、実はこの実験からビジネスシーンを読み解く場合、注意点がいくつかあります。それは実生活と子どものキャンプでは、リーダーを判断するポイントの数が違うということです。この実験でリーダーと目された子どもたちは、身体的に強く、キャンプ技術もすぐれているという特徴がありました。つまりキャンプで最も活躍できる基礎的な能力が、この2つだったということです。

では、大人の社会生活おいてどうかというと、判断材料は無数にあります。売上げを上げる能力、コミュニケーション能力、癒やしの能力、相手の話を聴く能力などなど。所属するチームや社会状況によって、リーダーに条件も変わってくるというわけです。状況によってリーダーが変わる可能性のある社会に住んでいることは、誰もがリーダーになれる可能性を持っているということかもしれません。

企業が期待しているリーダーシップに「行動感染」が必要

企業が期待しているリーダーシップに「行動感染」が必要

さて、ここで冒頭に示したアンケート結果を、改めて見直してみましょう。「メンバーの能力を引き出し、育成すること」「ビジョンをメンバーに浸透させること」「チームで協力して働くように働きかけること」の3点のうち、ビジョンの浸透とチームの協力は直接的な指示だけでは達成しにくいものです。むしろリーダーの背中を見て、自然とその姿勢をマネる中で実現していくリーダーシップといえるでしょう。

その意味で企業が望むリーダーシップは、「行動感染」を期待したともいえます。リーダーとして認めた人とメンバーの間で起こる自然な心理と行動こそが、リーダーシップの鍵といえるでしょう。しかし、この実験ではリーダーシップをどのように得られるのは明らかにしていません。リーダーシップのポイントとして注目されるものは、集団によって違ってくることでしょう。ただ、どのようなポイントであれ、多くのメンバーがリーダーを自然に選んでいく可能性は高いと考えられます。

今回の実験結果からわかる最も重要なポイントは、集団の順位付けをメンバー個人個人が正確に行っているということでしょう。その順位付けを超えてメンバーが選出されると、真のリーダーとの間に問題が生じます。

そしてもう一つのポイントが、リーダーは直接的な指示を出す頻度が増えていく傾向にあるということです。これは自分がリーダーになったときの注意点となるだけではなく、新しくリーダーに選出された人の「張り切り」を無意識のリーダー的な行動だと優しく見守る際にも役立つはずです。

多様な職業形態が生まれる中で、リーダーのあり方も多様になってきています。一方的に指示を出す、いわゆる「体育会的」とも呼ばれるリーダーシップは、多くの組織で機能しなくなりつつあります。ヘタをすればパワハラと取られる可能性すらあるのです。何がリーダーシップとして重要なのかという問題は、自分自身が何をリーダーシップとして感じているかという問題でもあります。多様なリーダーシップ像を捉える上で、自身が組織の中でどのようなリーダーとして考えているのかを書き出してみるのも、リーダーシップについて考えるときの一つの方法かもしれません。

参考:『対人社会心理学重要研究集』(誠信書房)

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