部屋の環境によって、子どもの成績が変化することをご存知でしょうか。部屋の環境が成績に影響を与えることは、心理実験でも証明されているんです。教室環境の実験から、どんな子ども部屋が成績アップに役立つのかを考えます。
- 「子どもの成績が上がらない」とため息をつくよりも、模様替えがおすすめ
- ウォーリンとモンタグネの実験
- 明るい環境が役立ったというべき?それともフレッシュさが大事?
- 子ども部屋を勉強にふさわしいレイアウトにするポイント
- 定期的な模様替えで親も子どももリフレッシュ
「子どもの成績が上がらない」とため息をつくよりも、模様替えがおすすめ
家庭教師をつけているのに、きちんと宿題をやるまじめな子なのに、なぜか成績が上がらない……。親もがっかりですが、ちゃんと成果が出なければ子どものモチベーション低下にもつながります。なんとか手を打ちたいと考えているなら、勉強部屋の模様替えをしてみてはいかがでしょう。
ある大学の心理学部で、教室のインテリアをガラッと変えたところ、学生の成績がアップしたという報告があります。どんな風に模様替えして、どれほど効果があったのでしょう。ちょっと興味がわいてきませんか。
ウォーリンとモンタグネの実験
1981年、心理学者のウォーリンとモンタグネは、心理学部の2つの教室を実験教室と統制教室に分け、実験教室のインテリアを大幅に変えました。統制教室のほうは、以前からあるインテリアをそのまま使うものとしました。
以前からの教室は、白い壁に白い天井、灰色のカーペットという、多くの大学に見られる殺風景な内装でした。机は白、オレンジ、青、水色のプラスチック製。統制教室では、机をすべて白に変えるほかは、引き続きこの内装のままで授業を行います。
実験教室のレイアウトは、次のように変えられました。前方と側面の壁はキャメルブラウン、後方は明るい金色。側面には11枚の絵画ポスターが飾られ、優美な雰囲気に変貌を遂げました。また、前方には観葉植物が置かれ、その上に魚や蝶の形をした中国製の凧が吊るされました。
実験教室には、さらに机とは別にじゅうたんが敷かれ、クッションと机代わりの立方体が置かれて、そこへ座って授業を受けられるようになりました。さらに蛍光灯が暖色系のものに取り換えられ、教室は温かくなごやかで明るいムードへと生まれ変わったのです。
「視覚的ににぎやかな部屋は気が散りがちでは?」と考えがちですが、効果は成績に現れました。5週間後に行われた定期試験の結果が、実験教室の学生のほうが良かったのです。くつろいだ環境の中で、学生たちはリラックスしながら学習でき、授業内容にも興味を持って取り組めたことがアンケートからもわかっています。
明るい環境が役立ったというべき?それともフレッシュさが大事?
先の実験結果には、いささか疑問も残ります。リラックスできる明るい環境が、成績アップにつながったのでしょうか。それとも、フレッシュさが大事なのでしょうか。授業を受けるにはいいけれど、一人で集中して勉強するには向かない環境なのでは?という疑問も頭をもたげてくることでしょう。
しかし、これを一つの心理実験の結果として受け止め、活用してみる価値はありそうです。例えば、家では集中できなくても、カフェではなぜか集中して仕事ができるという経験をお持ちの人もいるでしょう。家と違ってカフェには余計なものがないから、というのが理由と考えられていますが、カフェの内装がまとうリラックス感にも、ヒントがありそうです。
子ども部屋を勉強にふさわしいレイアウトにするポイント
実験の例に倣うなら、子ども部屋の模様替えのキーワードは「リラックス感」、そして「明るい雰囲気」です。ベージュや茶などの壁紙には、色彩心理学から見ても気持ちを落ち着かせてくれる効果があります。試してみてください。
また、「気が散るから」とポスターを貼ることを禁止していたり、おもちゃを飾っていなかったりするのは、もしかしたら逆効果かもしれません。明るい雰囲気を演出してくれる、子ども好みのポスターやおもちゃを飾りましょう。何より、「この勉強部屋にいたい」という気持ちが育つのではないでしょうか。
長時間机に向かい、つらくなったときに態勢を変えられるよう、カーペットやクッション、簡易机などを使って地べたでも勉強できるようにするのもいいでしょう。椅子に向かうのとどちらが集中できるかは、そのうち子ども自身が決めてくれます。
定期的な模様替えで親も子どももリフレッシュ
もしかしたら、新しい環境が成績を上向きにするという可能性も捨てられません。模様替えの効果が薄れてきたと感じたら、定期的にレイアウトを変更するなどして工夫してみましょう。リフレッシュ感が刺激になり、また成績が伸びてくる可能性があります。部屋の模様替えは、大人にとっても楽しいこと。子どもと意見を出し合いながら、インテリアの工夫を楽しんで!
参考:「対人社会心理学重要研究集4」