旅先で知り合った人やタクシー運転手など、親族でも友達でも仕事関係者でもない人に自分語りしてしまうことってありませんか?気付いたら話してしまっていたという心理を解説します。
- わかってもらいたいけど拒否されたら困る
- 告白しにくい話題2つとは?
わかってもらいたいけど拒否されたら困る
あまり知らない人にこそ身の上話をしゃべってしまう、そうした心理を「通行人効果」や「老水夫効果」と呼びます。「そう言えば、よく知らない人に人生を語られたことがあったな」といった経験を持っている人も多いかもしれませんね。
このような心理について、日本赤十字看護大学教授の遠藤公久教授が面白い実験をしていますので紹介しましょう。
遠藤教授は、「自己開示における抵抗感の構造に関する検討」という論文で、
「開示者にとって自己の内面性を表出することは,その内面性が深いほどその個人にとって重要な意味がある。そしてもちろん,他者からの評価にさらされる危険性を乗り越えた内面性の表出は,その受け手である被開示者にとっても,重要な意味をもつ」
と書いてます。
簡単に言えば、「すっごく深い話をするのは勇気いるし、告白された方だっていろいろ考えよね」というようなことでしょう。
実際、ただの仕事仲間から、いきなり家族のとんでもない事情を聞かされれば驚くでしょうし、そこからつきあい方も距離も変わらざるを得ないかもしれせん。
また、近しい人に自分語りをする抵抗感についても、次のように書いています。
「開示抵抗感は,相手に自分をわかってもらいたいという社会的欲求(この欲求は相手との親密さが増すことでさらに強まる)と,相手から拒否されたり評価されたりすることへの予期や結果のリスクの認知とかが吉抗するかたちで増大すると考えられる」
こう解説されると、ちょっと恋愛の告白と似ていますね!
告白しにくい話題2つとは?
遠藤教授は、女子大生52人に他の人が自己開示したとされる5つの文章を読んでもらい、開示するのに抵抗感が強いだろうと予測される順に番号を振ってもらいました。さらに、その内容について面接したのです。
結果、開示内容は、「異性関係」と「進路」についての文章は開示するのに抵抗感が弱く、反対に「身体」と「対人関係」に関する文章は開示するのに抵抗感が強いと感じたのです。
もちろん年齢や性別によって、どの分野の話が開示しにくい「重い話」なのかは変わってくると思いますが、「身体」と「対人関係」の話は、緊張感の高まる話だと言えるでしょう。
さらに女子大生が開示への抵抗感が強いと感じた話は、「疎外感」や「恥ずかしさ」「孤独感」「うらやましさ」といったものへの傾向が強いことがわかったのです。つまり疎外感を味わっていて、孤独なんだという告白は話す相手も限られてくるというわけです。
そして自分の内面を親しい人たちに見せるのが躊躇してしまうとき、告白しても影響の出ない見知らぬ人たちに、ついつい語ってしまうというわけです。