労働時間に見合わない給与、上司のパワハラ。職場で降りかかる理不尽は自分のせいだと思っていませんか?それは自分ではなく、周りが悪いのかも!「公正世界」という思い込みについて説明します。
- 雨乞いと同じような思い込み
- 「地道に頑張れば報われる」という意識
- 不幸は悪人に起こる!?
- 他人に話を聴いてもらう方法も
雨乞いと同じような思い込み
未開の文明では、雨乞いは立派な儀式でした。雨乞いなどの呪術でよく使われていたのは、似たものは似た結果を呼ぶというもの。そのため雲と見た目が似ている煙を空に飛ばし、雨が降るようお願いしたりしていたのです。
自分の居る市町村の天気予報ですら調べることができる現代では、こんな雨乞いは非科学的な気休めに過ぎないと思えます。しかし同様の非科学的な思い込みによって、日々の生活が支配されているのは珍しいことではありません。
例えば、宝くじ当選などの幸運に恵まれた友達の話を聞いたとき、「いつも頑張っていたからご褒美だね」などと口にしたことはありませんか?逆に降って湧いた不幸に見舞われた人に、「チャラチャラしていたしね」といった感想を抱いたことは?
「地道に頑張れば報われる」という意識
偶然の幸運や不幸に見舞われることは、少なくありません。ビジネスの現場でも、たまたま飛び込んだ会社で大きな仕事をもらえたといった幸運に恵まれることもあります。逆に予測できない機械の故障などで、納期に間に合わない事故も起こります。
ただ、こうした自分の力でコントロールできない問題を人は認めたがらない傾向にあります。
心理学者のメルヴィン・ラーナーは、「公正世界仮説」を唱えました。感単に言えば、「地道に頑張っていればいつかきっと報われる」という世界観です。この考え方は教育の場面でも、しばしば強調されます。しっかり努力することで、きちんとした未来が約束されるという世界観は、社会秩序の維持にもプラスに働き、ボランティア活動への参加や弱者への寄付などの額も増えることが実験でも明らかになっています。
不幸は悪人に起こる!?
ただ「公正世界仮説」はプラスの面ばかりではありません。マイナスの影響もあります。
例えば犯罪被害者への非難などは、「公正世界仮説」に拠るものと説明されています。「あんな事件にあったのは、派手な生活をしていたからだ」といった批判を聞いたことは、誰にでもあるでしょう。
こうした考え方と「公正世界仮説」の関係性について、少し説明しましょう。
「地道に頑張っていればいつかきっと報われる」という世界観は、「秩序だった世界に住んでいる」という意識の表れです。つまり善人にはよいことが起き、悪人には悪いことが起きるという考え方です。
それが「不幸が起きたのは、悪いことをしたからだ」という考え方に繋がるというわけです。そうした考え方は、他人だけではなく、自分の不幸にも当てはまると考えてしまいがちです。
他人に話を聴いてもらう方法も
職場環境が悪ければ、問題が起きることも多いでしょう。仕事量が膨大であればミスも起きがちです。そんな「不幸」をすべて自分のせいだと感じているのであれば間違いです。偶然に起きた不幸もあれば、組織が招いた問題もあるのですから、本当に自分の責任なのかは、しっかりと考える必要があるでしょう。
自分だけが悪いと感じるようならば、誰かに話を聴いてもらうことも大切です。非合理的な思い込みにとらわれないで、楽しく仕事できる環境を整えたいですね。