やる気はどうして続かないのでしょうか?多くの人は意志が弱いからだと考えています。しかし重要なのは感情を使い方ではないかという研究が進んでいます。紹介しましょう。
- 意志力の限界
- 感謝日記をつけてみる
- 小さな成功を祝う
意志力の限界
やる気を継続して、努力し続けることの重要性は改めて強調する必要はなないでしょう。ただ問題はやる気が続かないことではないでしょうか。やる気に満ち満ちて、数日前まではしっかりと計画を立てていたのに、その計画を見直すことすら面倒になってしまう。勉強もダイエットも貯金も、日々の雑事に紛れてしまいます。
そうした状況を前に、多くの人は「意志力」がなかったからだと考えます。それは半分は正解ですが、半分は間違っているようです。というのも意志力だけを鍛えても、結果は付いてこないという心理実験の結果があるからです。
例えばミネソタ大学のキャスリーン・ボッシュ教授は、やり抜く力が強いと思われる人の習慣を調査しました。その結果、日常的に誘惑に抵抗することに成功しているように見える人物たちは、そもそも誘惑をうまく避けていることがわかったのです。つまり意志力を使わないような生活習慣を持っていたということです。
例えばカジノに行くときにクレジットカードを持って行かなければ、意志力を使わなくても使う金額を制御できます。そうした工夫を積み重ねが、彼らの生活にあふれていたそうです。
またスタンフォード大学のジェームス・グロスの研究によれば、感情や欲望を意志の力で抑えつけると、記憶力が悪くなってしまうという結果もあります。つまり意志力を発動して勉強や仕事に取り組んでも、成果が上がりにくい可能性が出てきたのです。
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キーポイントは感謝の心
では、意志力よりも自制心を働かすのに有効なものは何でしょうか? それがどうやら感情らしいのです。
意志を強めるのではなく、気持ちを整えていく。例えば感謝の気持ちは、自制心を強い関連性があることがわかっています。
ノースイースタン大学の心理学者ディヴィッド・デステノ氏によれば、感謝の気持ちの度合いをテストで数値化したとき、平均的な人と比べて約33%感謝の気持ちが強かった人は、平均的な人と比べて33%感謝の気持ちが低かった人達と比べて2倍の自制心を示したそうです。
つまりやる気を維持して、日々、努力を続けたかったら、感謝の気持ちを育み続けることが必要だというわけです。
またディヴィッド・デステノ氏によれば感謝の指数が高い人は、物欲もあまり激しくないという研究結果もあるようそうです。
さまざまなものに感謝している人は、日々、努力を続け、バカみたいな浪費もしない。まるで「道徳の時間」のような結果ですが、この成果は道徳の研究から生まれたものではなく、上記のような数々の自制心の研究から生まれたものなのです。
感謝日記をつけてみる
感謝については、幸福をポジティブ心理学でも重要なポイントと指摘されています。それは感謝が幸福感を高めることがわかっているからです。そのため感謝の気持ちを育む研究も進んでいます。
その最も簡単な方法の一つは、感謝日記をつけることでしょう。
1日の終わりに、その日、感謝したことを振り返って書き出すだけです。1日3つを書き留めるだけですので、わずか5分程度の作業ですが、書き出すほどにいろんな感謝に気づけるようになります。
もちろん感謝の対象は人以外でも大丈夫です。環境やペットに感謝をすることだって、立派に感謝なのですから。
やる気を持続したいと思うなら、ぱっと見、遠回りなようですが、感謝日記をつけてみてはいかがでしょうか?
小さな成功を祝う
やる気を維持するために重要なものに、小さな成功をお祝いするといった行動があります。人は成功よりも失敗を覚えていることが多いそうです。実際、小さな失敗はいつまでも覚えているのに、小さな成功の記憶はあまりないものです。
しかしやる気を維持するためには、小さな成功こそが重要になります。記憶に刻み付けるためにも、小さなお祝いをしましょう。目標達成時ではなく、中間目標などごとに自らをお祝いしていきます。小さなご褒美を自分にあげるといった方法もあるでしょう。
あるいは誰かに祝ってもらうといった方法もあるかもしれません。重要なのは成功をしっかりと記憶に刻み、嬉しいと感じることです。
今日はやる気を感情についてまとめてみました。意志が弱くて、やる気が続かないと思う人は、ぜひ試してみてくださいね。
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監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『なぜ「やる気」は長続きしないのか』(デイヴィッド・デステノ/白揚社)/「Why It’s Important to Celebrate Small Successes」(Benjamin Cheyette, M.D., Sarah Cheyette M.D./Psychology Today)