交渉前に確認しておきたい4つポイント

交渉に挑むとき、多くの人は互いの条件に注目しがちです。しかし交渉するのは人間同士、条件だけが交渉を決定する大きな要因ではないことも多いのです。そこで交渉に臨む前に注目すべき要因をまとめてみました。

条件と同じぐらい重要なことは?

困難な交渉に挑むに当たって、条件や譲歩できるポイントに注目するのは重要でしょう。しかし条件だけで交渉がうまくいくと思ったら大間違い。むしろ交渉のポイントは条件以外にもあるのです。

そもそも交渉事が互いのメリット・デメリットを含めた条件の調整だけで成立するなら、時間をかけた交渉など必要ありません。難しい交渉が行われるのは、利害が必ずしも一致しないポイントで、互いに歩み寄れる道筋をつくるとき。そこで重要になってくるのは感情です。
「条件は厳しいけれど応援したい」「利幅は少ないけれど将来への投資と思って」といったものから、単純に一緒に仕事をしたいといったものまで。条件を超えて人は決定を下します。だからこそ交渉時に、条件以外のどんなことに気を配るべきかを明確にしておく必要があるでしょう。
 そこでハーバード大学の交渉学プログラムの研究から、いくつかのポイントまとめたので参考にしてください。

①自分の感情を知る

交渉に挑むときの自分の感情について考えてみましょう。過去の厳しい交渉の中で、どんな気持ちで臨んでいたでしょうか? 緊張していましたか? 逆に相手を飲み込もうと興奮していましたか?

交渉時の自分の感情を書き出し、交渉時の理想的な感情についても書いてもみましょう。もっとリッラクスしたいと思う人もいれば、もっとエネルギッシュにという場合もあるでしょう。重要なのは、どんな自分の状態がベストなのかを見極めて交渉に挑むことです。

②相手の感情を見極める

相手の感情についても想像してみましょう。交渉する相手だけではなく、その背後にある利害関係者の感情が、交渉相手に影響を与えることもあるでしょう。さらに、その感情がどこからきているのか推測します。

過去の問題が完全に片付いていないから、どこか怒りを含んだ気持ちになるのだろうといった考察も大切でしょう。あるいは恩を感じている場合などもあるかもしれません。

そうした相手の気持ちに配慮することで、話し合いはよりスムーズになっていくはずです。

③相手が求める「利益」を考える

交渉者の感情の多くは、次の5つの基本的な「利益」から生じています。

1.自立性……自分のことは自分で決めてコントロールしたい
2.価値理解……存在や価値を認められたい
3.つながり……仲間の一員として受け入れられたい
4.役割……有意義な目的を持ちたい
5.ステータス……評価されたい

この5つは人によっても、状況によっても優先順位が変わってくるでしょう。交渉時に特に気を付けるべき「利益」が何なのかを、この5つから考えてみましょう。どのような部分をアピールして、よりよい関係を築いていくのかを考えてみるだけでも、交渉のプラスになるはずです。

逆に交渉によって、5つの利益の何かが損なわれそうなときは、それをどうやってフォローするのか考えましょう。交渉が成立したとき相手の自立性が危うくなりそうなら、話を聴く場を設けるといった方法もあるでしょう。

この5つの「利益」がしっかりと確保できるなら、交渉はかなりスムーズに進むでしょう。交渉条件としては無視されがちな、交渉の「利益」をしっかり見直すことは、交渉前にとても重要です。

④相手のメンツを考える

メンツと聞くと、何となく時代遅れの感じを受けるかもしれません。暗黙の了解や極端な忖度といったものが成立しにくくなり、提示される条件で決定が下される機会が増えたように感じるからかもしれません。

しかし現実の交渉の場面では、条件よりも相手のメンツが優先されることが少なくありません。交渉時に言動が決定を縛られ「前言撤回になってしまうから賛成できない」とか、相手に屈した形になるから合意できないといったことが起きるのです。

だからこそ相手のメンツの立て方を考える必要があります。

メンツを立てることは、必ずしも相手を賞賛することではありません。メンツが保たれたように見えることが、重要なことも多いからです。交渉相手が勝ち自分が負けたような体裁や、相手が前言撤回にならないような表現など、メンツをどうやって立てたらいいのかを考えましょう。

本日は交渉時に気を付けるべき感情問題についてまとめました。結局ところ交渉するのは人同士。条件では折り合えなくても、気持ちで乗り越えられる部分が多いことを覚えておきましょう。

心理学の知識を応用した交渉術について興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:日本産業カウンセラー協会

参考:『ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!』(ロジャー・フィッシャー ウィリアム・ユーリー/三笠書房)

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