誰かを説得しようと考えたとき、どんなポイントに注意を払いますか? 破綻のない論理? 経済性?などなど、いろいろと気になるポイントはありそうですが、もっと根本的な部分に目を向けるべきかもしれませんよ!
- 説得には原則がある!?
- 好感度を上げる
- 前例を示す
- 専門家としての権威をまとう
- 「好きに決めてください」と付け加える
説得には原則がある!?
仕事でもプライベートでも、説得が必要なシチュエーションは多々あるものです。プレゼンのような形で「説得」を試みることもあれば、お酒を飲んだりして相手のグチを聞きながらといったシチュエーションもあるかもしれません。そして説得の技術に長けた人がいることも事実です。じつは近年の研究によって、説得には基本的な原則があることもわかってきました。
そこで今日は、説得の可能性を高める方法を、紹介していきましょう。
①好感度を上げる
説得がうまくいくのかを気にするとき、多くの人が説得の内容に神経を尖らせます。しかし、まず気にするべきなのは、相手に与える好感度です。
ジョナサン・フレンツェン氏とハリー・デイビス氏がホームパーティーを使った商品販売を調査したところ、購入決定の影響力については「主催者の好感度」が「製品の印象」の2倍あったと報告しています。もちろん販売したい商品の値段との関連があると思いますが、説得したいなら相手から好かれることは非常に重要でしょう。
そして自分に対する相手の好感度を上げたいのであれば、相手との共通点を見つけておくことや相手を褒めることが重要だということもわかっています。多少、自分と性格が合わないと感じても、自分との接点を探し、心から尊敬できる部分を発見して口にする。こうした行動が説得の可能性を高めていくのです。
②前例を示す
サウスカロライナ州の住民を対象にした心理実験では、一般家庭に訪問して寄付を募る時に、すでに寄付してくれた人々のリストが長ければ長いほど、訪問先から寄付をもらえる確率が高くなることが判明しています。
しかも、このリストが「友人」や「隣人」など、自分に関係があると思わせることが重要なのだそうです。
このような「説得」の手法は、新聞記者なども使っています。官庁など前例にこだわる組織の場合、同様の組織が情報を開示しているといったことを耳に入れるだけでも、情報入手の提供率が高くなるのです。
仕事では、他のメンバーの成功例を前例として出すことで、説得に応じてくれる可能性が高まるそうです。以前に同じような方法で成功しているなら、今度も大丈夫だろうと思わせるわけです。環境が似ている前例を調べておくと、この手の説得に有効かもしれません。
③専門家としての権威をまとう
専門的な知識がないからこそ、専門家の勧める商品の信頼感が増す。そんな経験は誰にもあるでしょう。実際、広告でも専門家のコメントを掲載するのは、非常によくある方法の一つです。
権威を持つ専門家は説得力があるという原則を個人が活用する方法として、アリゾナ州立大学のロバート・チャルディーニ教授は、説得する相手に自分の専門性をさりげなくアピールすべきと説いています。この人に任せておけば安心だという意識を持ってもらえるように、これまでの経験などを会話に散りばめておくといいそうです。
④「好きに決めてください」と付け加える
西イリノイ大学の発表によれば、説得の最後に「好きに決めてください」と付け加えるだけで、2倍も説得の可能性が高まったと報告しています。これは「BYAF法」と呼ばれているもので、「but you are free」の略だそうです。
説得している側はあまり気にしませんが、相手は説得されることで自由を制限されたように感じてしまうのだそうです。そうした反発から説得を拒む人が少なくないらしいのです。他人から行動を矯正された、選択肢が制限されたと感じてしまうと、特にこの傾向が強まるとのこと。
そこで説得の最後に、「あなたの意志は尊重する」という言葉を付け加えるだけで、説得の可能性が一気に跳ね上がるのだそうです。相手が感じる説得への精神的な抵抗に負けないように、「どちらでもいいですよ」「任せます」といった言葉を付け加えてみましょう。
今日は説得力をアップする4つの方法をまとめました。説得にはテクニカルな部分もあるといえそうです。もちろん説得する内容も重要ですが、上記のような視点から説得の方法をチェックすることも、成功の秘訣になるかもしれませんね。
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監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「『説得』の心理学」(ロバートB.チャルディーニ/『コミュニケーションの教科書』ダイヤモンド社)/Your Biggest Obstacle in Persuading Others(Jake Teeny Ph.D./Everyday Psych)