日常生活に役立つ「説得」の3ステップを修得する!

どうしても相手を説得したいとき、必死に説得できそうな材料を集めていませんか?じつは、それこそ失敗の第一歩!データで相手を説得するのは厳禁です。相手が気分よく同意してくれる方法を紹介しましょう。

説得の回避が問題を大きくするかも

「パートナーの実家に行きたくない……」「外食をしたくない」「この仕事は手伝いたくない」などなど。目の前に迫る相手を説得しなければならない困難なことに、頭を痛めていませんか? プレゼンや営業のような膨大なエネルギーを必要とするものでなくても、日々、さまざまな交渉事が行われています。

もちろん説得しないで相手に押し付けてしまったり、逃げ回るといった方法もあるでしょう。しかし、そうしたことが繰り返されれば、問題は必ず自分に跳ね返ってくるでしょう。

「いつも我慢してきたけど、もう限界!」

そんなふうに言われてから説得を試みても、問題解決は容易ではありません。面倒でもしっかり相手に向き合い、話し合う必要があるでしょう。

人はマイナスの情報を無視する

説得をしようとするとき、多くの人は自分の主張を有利に展開できる情報を集めようとします。「値段が高い」「時間がかかる」「混雑する」「休みが合わない」などなど。じつは互いの主張をフォローする情報が並んでも、それで説得できる可能性が低いことが心理実験でわかっています。

ノースカロライナ大学の神経経済学者カメリア・クーネンらの実験では、50名の実験参加者に投資に関する100の決断を下してもらいました。その後、現時点での配当金が後悔され、改めて決断する機会が与えられたのです。

結果的に、実験参加者は最初に下した決断にプラスの情報だけを信じ、マイナスの情報を無視しました。

そもそも人は自分の考えを裏付けるデータばかりを集めてしまう傾向にあります。そして自分の考えに馴染まないデータを無視するのです。

「いやいや、自分はデータ分析が得意だから、公平に判断できる」と思った人は要注意です。米国で行われた心理実験では、

「認知能力が優れている人ほど、情報を合理化して都合の良いように解釈する能力も高くなり、ひいては自分の意見に合わせて巧みにデータを歪めてしまう」(『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』ターリ・シャロット/白揚社)

ことが明らかになっています。

つまり理屈っぽい者同士が自分に都合の良いデータを集めて話し合った場合でも、互いに相手のデータを無視するため説得にはいたらないのです。理屈っぽい話が嫌いといった人を説得するのに、データを並べても意味がないことは説明するまでもないでしょう。

感情に任せた判断は問題があると、多くの人が考えています。

しかし神経科学者のアントニオ・ダマシオは、意思決定には感情が不可欠だと述べています。

実際、感情の起伏に大きな役割を果たす脳の前頭葉が損傷すると、意思決定が難しくなることがわかっています。というのも私たちの行動を決定するときは、それぞれの価値観に影響を受けるのであり、価値観は感情と密接な関係があるからです。

では、説得をするときには、何をすべきでしょうか?

①相手の要求の背景をしっかりと聴く

共通点を提案するためには、相手の気持ちを汲み取る必要があります。反論をせず、相手の話に耳を傾けましょう。どうしてそんな行動をしたいのかに、とても興味があると相手に伝わらないと、意外に本音が聞けないもの。

特に過去にもめた経験のある事柄は、適当な理由を並べるかもしれません。何を言っても大丈夫だという雰囲気が、重要になります。

②共通点を探して提案する

相手が間違っている証拠を探すのではなく、共通点を探してみましょう。

例えばパートナーの実家に行きたくないのであれば、逆に相手がどうして行きたいのかを探ってみましょう。

「親に会いたい」「親戚との体裁を保つため」「上げ善据え膳でラクできる」などなど。その欲求を聞いて、腹を立ててはいけません。「自分はラクだけど、私は!?」といった気持ちを、自分がどれだけ大変なのかといったデータとともに並べたてても説得には近づかないからです。

むしろパートナーも自分もラクだと思えるような過ごし方、実家に赴かなくてもできる体裁の整え方を提案してみましょう。自分の意見が否定されたときには、相手の情報を無視しますが、どちらにとってもメリットのある提案であれば耳を貸してくれるからです。

③感情を刺激する

プリンストン大学の研究チームは、政治家の演説を聴いたときの脳の働きをMRIで測定しました。その結果、魅力的な演説を聴いている人の脳は、活動領域とタイミングが、同期したかのように一致することがわかりました。

またイスラエルのワイツマン研究所の実験では、感情が揺さぶられたときに脳の活動が同期することがわかったのです。

これらの実験から、説得の近道が感情を揺さぶって脳の活動を同期させることだとわかりました。

互いにとってのメリットを提示できたなら、次に感情を揺さぶるような話がベストです。

二人にとってラクな場所が、実家ではなくホテルだとしたら、どんなホテルが素晴らしいのか話し合ってみましょう。思い出の地に出向いたり、共通の趣味を楽しんだりといった未来について語り合うのもおすすめです。

今日は日々の生活で使える説得術を紹介しました。

ビジネスに役立つ心理学の知識に興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:日本産業カウンセラー協会

参考:『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』ターリ・シャロット/白揚社)/「The (Dys)Functionality of Emotions in Human Decision-Making」(Matt Grawitch Ph.D./Psychology Today)

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