新型コロナウイルス感染症の影響によって、ライフスタイルや人生の目標が変わったと感じる人も少なくないかもしれません。そこで「真の成功」を考えるための4つのヒントを紹介していきます。
お金や地位では幸福になれない?
社会の大きな変化を感じている人は多いのではないでしょうか。営業の方法も消費の仕方も変わり、過去の成功体験が通用しない場面も出てきています。
国税庁『民間給与実態統計調査』によれば、2019年の会社員の平均年収は436万円。7年ぶりの減少となりました。しかし長期的に見れば、1997年の467万円からゆっくりとマイナスの方向に動いているのです。コロナ不況などによって、今後も平均年収はマイナストレンドになるといった予想もあり、今後、社会的な要因による大幅な年収アップを期待するのは難しいのかもしれません。
また地位や権力についても、パーソル総合研究所がアジア14ヵ国で行った調査では、管理者になりたいと答えた人は21.4%で、日本は14ヵ国で最も低かったそうです。出世をしても幸福になれないかも。そんな意識が、この調査結果に出ているのかもしれません。
では、「真の成功」を手に入れる鍵は、どこにあるのでしょうか?
ローレンス・サミュエル博士が掲げる、いくつかのポイントを紹介していきましょう。
①成功の標準モデルを疑う
お金・権力・名声などを成功の基準とする「古典的な成功の物語」が、実際の幸福に結びついていない研究結果があると、ローレンス・サミュエル博士は自身の成功の定義を見直すようにすすめています。
実際、年収800万円程度で幸福度は頭打ちとなるそうです。それ以上は年収がアップすることで、仕事のプレッシャーや人間関係の問題も増えていき、幸福度が下がっていくとのこと。
権力についても、出世をすると大変になりそうだと感じることが増えているのではないでしょうか? もちろん成功の基準は人それぞれであり、お金や権力などが自身の幸福と密接に結びついていることもあるでしょう。
ただ、その価値を疑ったことがないなら、改めて検証してみるものおすすめです。
②他人と比較しない
「真の成功」を幸福ととらえるなら、成功の形は人それぞれです。実際、人がうらやむような生活であっても、まったく幸福を感じないケースはあります。
経済学者のロバート・フランクは、満足が得られるものを大きく2つに分けています。周囲との比較で満足を得るものを「地位財」と、他人とは関係なく幸せが得られる「非地位財」です。
「地位財」には、収入や社会的地位、持ち物や財産などが含まれます。
「非地位財」は、健康や愛情に加えて、自主性や社会への帰属意識、自由なども含まれます。
さて、この2つの最も大きな違いは何だと思いますか?
それは幸福を感じる持続性の違いです。「非地位財」の方が、長く幸福を感じる傾向があるのです。例えば、高級車のフェラーリを購入するよりも、社会で自分が役立っていると感じる方が、幸福感が長続きするというわけです。あるいは社長になるよりも、愛情溢れる家族に囲まれている方が幸福感が長続きするというのです。
確かに「地位財」は、手に入れても時間とともに飽きそうな感じも……。
自分にとっての重要な「非地位財」が何なのかを考えてみてもいいかもしれませんね。
③失敗を受け入れる
何かにチャレンジしようとすれば、失敗するときもあるでしょう。「真の成功」に近づくためには、そうした失敗を次のステップと考える必要があるそうです。
前野 隆司・慶應義塾大学大学院教授は、人が幸せになる4つの因子の1つとして、自己実現と成長をあげています。なりたい自分に向けて努力するためには、失敗を受け入れる必要があるのです。
④他人との関係を優先する
ローレンス・サミュエル博士は、個人の利益にだけに注目するより、他者への貢献に力を注ぐべきだと書いています。自分の目指す成功が他者にどんな影響を与えるのかを考え、他者の生活を改善できる方向性を探ることで幸福感は高まるそうです。
これは「非地位財」の話とも通じるでしょう。利益を上げるだけではなく、「非地位財」である愛情を刺激し、社会への帰属意識が高まる方が幸福も長続きすると考えられるからです。
今日は「真の成功」について考えてみました。幸福と結びつく成功に向けて動いていきたいですね。
心理学の知識を応用した幸福に興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:日本産業カウンセラー協会
参考:「ビンボーでも幸せな人は、なぜ幸せなのか 米国発『ポジティブ心理学』が解明」(前野隆司/PRESIDENT Online〈2016年9月12日号〉)/「パーソル総合研究所、日本の「はたらく意識」の特徴を国際比較調査で明らかに 国際競争力低下の懸念。日本で働く人の46.3%が社外で自己研鑽せず」(パーソル総合研究所)/「The 7 Keys to Real Success」(Lawrence R. Samuel Ph.D./Psychology Today)