上司やクライアントが感情的だなと思うことはありませんか?ビジネスは理性的に進めたいと考えている人にとってはストレスかもしれません。でも、そんな想いは前提が間違っているのかもしれませんよ!
- 感情がなくなると意思決定できない
- 気分がよければ検討時間も短い
- 接点を増やして好感度を上げる
感情がなくなると意思決定できない
大人になると、私たちは物事をなるべく理性的に選択しようとします。「これは嫌いだから」とか、「あれがイヤだから」と言っても誰も納得してくれませんし……。
ビジネスの現場では選択には説明がついて回るので、より理性的になろうと努力するのです。価格や納期など数値化しやすい判断材料を並べて比較検討し、合理的な判断を下そうとします。
しかし、そもそも人は感情で判断を下す傾向が強いという研究結果があるのを知っていますか?
脳神経科学者アントニオ・ダマシオは、脳腫瘍の外科手術で前頭葉と感情を結びつける部位を切除したビジネスマンの例を報告しています。この手術の結果、ビジネスマンは感情を失ってしまったそうです。と、同時に決断を下すことができなくなってしまったとのこと。
感情が引き起こす「動機づけ」や「目的」がなければ、物事を決定することができないというわけです。
つまりビジネスであっても、相手の感情に注目することは、客観的な数値や情報を集めるより重要なのかもしれないのです。
気分がよければ検討時間も短い
じつは感情と意思決定については、心理学的な実験もかなり行われています。IsenとMeansという学者の研究では、楽しい気分だった実験参加者は決定に要する時間が短く、一度、検討した情報を再検討することもなかったそうです。それどころか、あまり重要ではないと思われる情報を無視したというのです。
また、Forgasの研究では、悲しい気分の実験参加者は対人関係に集中して決定までに長い時間がかかると報告されているのです。
この実験結果を、営業の見積もり提示に当てはめて考えてみましょう。
もしクライアントの機嫌がよければ、見積もりを提示してから決定までの時間は短くなる可能性がありますし、あまり重要ではない、細かな部分への質問も少なくなるかもしれません。
一方、担当者が悲しみに沈んでいたら、ゴーサインは出にくくなる可能性があります。しかも社内外を含めた人間関係に注意を払い、不安な要素を見つけ出してしまうかもしれません。
つまり会うことで相手の気持ちをほぐすような人は、仕事を得るチャンスも膨らみますし、仕事の進み方も早いという結果になるようなのです。
接点を増やして好感度を上げる
こうした意思決定の心理を学ぶと、ビジネスで必要なのは必ずしも完全なプレゼン資料だけではないことがわかるでしょう。担当者の気持ちをどのように汲み取るのかといったことも、ビジネスの決定に大きく関わってくるのです。
では、相手が気持ちよく仕事するためには、どうすればいいのでしょうか? 話をきちんと聞く、気が利くなど多様な方法がありますが、まず試してみたいのは積極的に相手との接点を増やすことです。
感情と意思決定について、重要な発見をした心理学者のロバート・ザイアンスは、目にすれば目にするほど好感度が上がることを実験で明らかにしています。
CMで何度も流れる曲をいつのまにか好きになってしまう心理ですね。
しかもザイアンスは意識しないような「接触」であっても、好感度が上がると説明しているのです。つまり話さなくても視界に入っただけでも、回数が多くなれば好感度が高まるということです。
もちろん一緒にいる時間が増えたからこそ嫌いになるパターンもありますが、相手を不快にしないで、とにかく顔をだす機会を多くすることはネットが発展した現在でもビジネスに良い影響を及ぼすといえそうです。
参考:
『心理学大図鑑』(キャサリン・コーン 著/三省堂)
「不快感情と関与が意思決定過程に及ぼす影響」(秋山学 同志社大学/竹村和久 筑波大学)