「売り上げが上がったらボーナスも上がるぞ!」と、社員のやる気を引き出そうとするのは、よくある手法です。しかし先に「ニンジン」をあげたほうが、きちんと走ってくれるみたいですよ。研究者や経営者が指摘しています。
- 時給を1ドル引き上げるたびに、売り上げが28ドル増加!
- コストコの高時給は日本でも話題に
- 難しい取り組みだけど、「同一労働同一賃金」から始めるのはアリ
時給を1ドル引き上げるたびに、売り上げが28ドル増加!
慶応義塾大学名誉教授でビジネスコンサルタントのボブ・トビン氏は、著書の中で次の2つの研究事例を挙げ、「従業員を大事に扱えば業績向上につながる」と述べています。
・待遇アップが利益を増加させる
マサチューセッツ工科大学の経営学教授、ジネップ・トンは、著書『The Good Jobs Strategy(グッドジョブ戦略)』の中で、人手を増やし、従業員の賃金を上げ、待遇を良くすると、企業利益の増加につながると指摘している。コストコやトレーダー・ジョーズ、スペインのスーパーマーケットであるメルカドーナの成功は、厚遇された知識豊富な従業員が利益に貢献することを示唆している。
・時給を1ドル引き上げるたびに、売り上げが28ドル増加
ウォートンスクールで教鞭をとるマーシャル・フィッシャーは、ある研究の中で、時給を1ドル引き上げるごとに売り上げが10~28ドル増加した小売業の事例を紹介している。 コストコの平均時給は21ドルで、ウォルマートの13ドルを大きく上回っているとのこと。相場の倍近くの時給をもらえるとなったら、それはもちろんやる気が出そうですね。
コストコの高時給は日本でも話題に
コストコは日本でも高時給でアルバイトを募集しており、その好待遇ぶりは数年前、日本でも話題になりました。なんと、全国一律1200円からというのです。当時、東京都でも最低賃金は900円台(令和元年10月現在1013円)。資格職ではないのにこれほどの好待遇を最初から受けられるなんて、日本の企業ではまず考えられません。
そんなコストコは現在、人手不足による人材獲得競争に打ち勝つため、時給を最大14ドル50セントにすると発表。さらに時給は23ドルまで上がると、コストコ・ホールセールのジェームス・マーフィー上級副社長はインタビューで打ち明けています。(https://globe.asahi.com/article/11631173)
難しい取り組みだけど、「同一労働同一賃金」から始めるのはアリ
「賃金から上げろって言われても、先立つものがないよ~」と悲鳴をあげる経営者は多いでしょう。優秀な人材が欲しければ、そして辞めない社員が欲しければ高い賃金設定をすること、と分かっていても、なかなか難しいですよね。もし、好待遇で迎えた人材が見掛け倒しだったら?社員たちが好待遇にあぐらをかいて、ろくに仕事をしなくなったら?不安は尽きません。
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そこで、まずは「ぜひ取り組まなければならないこと」から始めてみてはいかがでしょうか。2020年4月から全国で一斉に施行される「同一労働同一賃金」、別名「パートタイム・有期雇用労働法」です。基本的に同じ仕事をする正規雇用の社員と非正規との賃金差をなくす取り組みで、働く人たちの格差をなくす考え方から来ています。
たんに「労働者を平等に扱うため、給与水準を引き上げる」と考えると、経営者側からすれば負担が大きくなるだけの制度です。しかし、「社員のモチベーションを上げ、利益を上げるための取り組み」と考えれば、ストラテジーになります。施行後、利益がどう上下するか、働き手のモチベーションはどうなるか、観察していきましょう。
参考:
・『10年後、後悔しないための自分の道の選び方』ボブ・トビン、ディスカヴァー
・コストコバイト、地方で「時給1200円」地域の最低賃金はるかに上回り、近隣店に衝撃(JCASTニュース)
・ 東京都最低賃金を1,013円に引上げます(東京労働局)
・米コストコ、最低賃金引き上げ 人手不足で(日本経済新聞)
・最高で2500円 コストコはなぜ時給を上げたのか(GLOBE)