雑談の効力を知っていますか?仕事の効率を下げるようにしか見えない雑談ですが、ビジネスでは大きな力を発揮することがわかっています。その効力とテレワークの関係について説明しましょう。
- 組織を強化し、評価を上げる
- 雑談の効果を高める3つの方法
- 新型コロナ禍でどうやって雑談?
- 「なんか会社に活気がない」とならないために
組織を強化し、評価を上げる
雑談がビジネスにプラスに働くと聞いても納得できない人もいるでしょう。仕事の効率化が求められている最近の状況を考えれば、雑談が生産性を上げるとは思えないからです。
しかし、カナダのウィンザー大学の研究によれば、トイレや冷水機の周辺などで、同僚と交流する時間を費やす人は、そうでない人より能力は高く評価され、同僚からの好感度も高いことがわかっています。また、こうした雑談をする人は、新しいプロジェクトを任されやすく、必要なときに同僚からの助けを得やすいこともわかっています。
この原因については、
「他者と積極的に交流することで得られる、ある種の信頼や尊敬」(『スタンフォードの心理学講義 人生がうまくいくシンプルなルール』ケリー・マクゴニガル/日経BP)
を指すソーシャルキャピタルと関係があると言われています。
雑談のような意思疎通は「インフォーマルコミュニケーション」と呼ばれるものですが、先行研究では、こうした何気ない会話が組織の生産性を回復させ、組織での人間関係の強化に決定的な役割を果たしていることが明らかになっているのです。
つまり雑談は、組織を強化するだけではなく、個人の評価を上げる力を持つものだったのです。
雑談の効果を高める3つの方法
雑談の力を紹介したケリー・マクゴニガル スタンフォード大学教授は、雑談の効果をより高めるための方法をいくつか紹介しています。
① できるだけ会って話す
メールなど連絡を取るかわりに、席まで出向き手が空きそうなら声をかけるといったことを推奨しています。またお茶やランチに誘うといったことも効果的だそうです。
雑談が効果を発揮するのは対面するからであり、会う機会を増やすよう努力することが重要なのだそうです。
② スマホなどをしまう
スマホや携帯電話などが置いてあるだけで、会話のから生まれる共感や信頼の構築を邪魔するという研究結果があるそうです。雑談をするなら、携帯やスマホは手に持たない方がいいでしょう。
③ 前に話した会話をフォローする
以前の雑談の内容を覚えていれば、相手も嬉しいもの。その後の状況を確かめるなど、以前の会話をフォローしてみましょう。話す時間が限られているからこそ、相手と効果的にコミュニケーションを取りたいものです。
新型コロナ禍でどうやって雑談?
雑談の効果が分かっても、一つ問題があります。それは新型コロナウイルスの影響で、テレワークも進み、雑談の機会自体が少なくなっていることです。
2020年6月に『エン転職』が1万人にアンケートを実施した「テレワークにおける社員コミュニケーション」実態調査では、全体の66%が、テレワークでコミュニケーションが変わったと回答しています。
変化した内容については、「対面でのコミュニケーションがなくなった」が64%、「コミュニケーションの総量が減った」が60%、「コミュニケーションがほぼなくなった」が16%となっています。
テレワークについてアンケート調査をすると、生産性が高いという結果が多いのですが、逆にコミュニケーションが弱点としてあげられることも少なくありません。
情報通信系企業ラックは、テレワークについての社内アンケートを公表していますが、そこでも、コミュニケーションについて「特に問題がない」との回答が大半を占めますが、18%が「コミュニケーションに問題があり、業務に支障が出た」と回答しています。
理由としては次のようなものがあがっています。
「ブレインストーミングなど発散型の会議はやりにくい」
「ちょっとした頼み事がしづらい」
「打ち合わせ後や、席に立ち寄って会話する雑談の機会が無くなった」
雑談は業務に直接関係ないため、組織への影響がすぐに表れるわけでもないでしょう。それでも、このアンケート結果を受けて、ラックは毎朝オンラインで雑談する時間を設けたそうです。
「なんか会社に活気がない」とならないために
テレワークの割合が高まっても、雑談の意義は小さくなるわけではないでしょう。だからこそオンラインでもコミュニケーションを積極的に取るようにし、対面で会って話せる貴重な機会を大切にするといった意識が重要かもしれません。
雑談による組織の活性化は見えにくいものです。そのため組織の状況が悪化してから気付くこともあるかもしれません。そうならないためにも、雑談をどうすれば維持できるのかといったことを、個々人が考える必要がありそうです。
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参考:『スタンフォードの心理学講義 人生がうまくいくシンプルなルール』(ケリー・マクゴニガル/日経BP)