生産性に注目が集まっています。ただ仕事をこなすのではなく、生産性の高さを意識する必要があるのです。では、どうすれば生産性が上がるのでしょうか?「カイゼン」だけではない重要なポイントを心理学が解明しました。
- 生産性アップの鍵は好奇心
- 長時間労働をやめる
- 旺盛な好奇心がさまざまなメリットを生む
生産性アップの鍵は好奇心
2016年に実施したエン・ジャパン会社のアンケート調査によれば、「自分の仕事の生産性を上げたいと感じていますか?」という質問に、42%が「強く感じている」、42%が「感じている」と答えています。つまり8割以上が生産性を高めなければと思っているわけです。
実際、日本の労働生産性が低いことはよく知られており、2019年の調査でも主要先進7カ国(G7)の中では最下位。約50年間、この順位から脱出できていないのです。
では、どうすれば労働生産性は上がるのでしょうか?
組織としては、ボトルネックとなっている作業を洗い出して改善するといった方法があるでしょう。しかし個人としての生産性アップは、簡単ではありません。そもそも決まりきったやり方を見直し、生産性を高めようといった意欲がわかないと、生産性を高めにくいからです。
そんな中で注目を集めているのが、好奇心と生産性の関係です。
アナト・ケイナン氏とラン・キベッツ氏の研究によれば、生産性を高めたいと思うタイプは、面白い体験を求める傾向にあるそうです。
フロリダで週末の休暇を楽しむよりも、カナダにある氷でつくられた「アイスホテル」での宿泊を望み、「おいしい」チョコレートトリフよりも「ユニークでエキゾチック」と表現されるようなチョコレートトリフを選ぶのだそうです。
アイスホテルとフロリダでの宿泊を比べれば、心地よさはフロリダの方が上でしょう。しかし心地よさよりも、面白く斬新な体験に心惹かれる人たちがおり、こうした性格傾向を持つ人が生産性向上に励む可能性が高いというのです。
長時間労働をやめる
では、生産性を高める元になる好奇心は、どうすれば高まるのでしょうか?
OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、「新しいことを学ぶのが好きか」という質問に「ノー」と答えた国の人ほど、労働時間が長かったというのです。つまり好奇心を刺激するには、まず時間的な余裕が必要なのです。
またプライベートが充実すれば、プライベートの時間を確保するために、仕事の効率化にも力を注ぐようになるでしょう。少なくともムダな残業をしたいとは思わないはずです。
プライベートが活発な人ほど、仕事でも高いパフォーマンスを期待できることは、覚えておきたいポイントです。まず生産性だけに注目するのではなく、オフの時間の過ごし方も注目してみましょう。
旺盛な好奇心がさまざまなメリットを生む
好奇心が強くなるメリットは、生産性の向上だけではありません。
他者からの拒絶にも強いという研究結果があります。例えば営業を断られたとしても、落ち込むのではなく、次の目標に目を向けることができたりするのです。それは自分が拒絶される不安よりも、その経験から何を学べるのかに重きを置くからだそうです。
だからこそ先の見えない状況であっても、好奇心旺盛な人は苛立ったり、立ちすくむことが少ないのだそうです。確かに先述したようなアイスホテルを楽しめる人なら、旅行のさまざまなハプニングも楽しみの一つとなるでしょう。
パンデミックによって大きな価値観の変革が起こり、先行き不透明になっているからこそ、強い好奇心が必要なのかもしれません。
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監修:日本産業カウンセラー協会
参考:「How Your Opinion of Productivity Impacts Your Free Time」(Jake Teeny/Everyday Psych )