「生産性の向上」に夢中になり過ぎないように注意して!

働き方改革で大きな問題となっているのは「生産性」でしょう。現在でも多くの人が生産性の向上に努めています。欧米でも生産性はビジネスパーソンにとって重要なためか、その行き過ぎが問題になっているようです。

  • 離婚やメンタルヘルスの悪化に
  • 6つの兆候に注意
  • 「生産性依存」的傾向の3つタイプ

離婚やメンタルヘルスの悪化に

「生産性」を検索すると、生産性向上のためのヒントを大量に知ることができます。どれだけのスピードで、どれだけの仕事をこなすのかは、ビジネスパーソンにとって非常に重要なトピックだからでしょう。

これは欧米でも同様のようです。BBCのサイトには、「生産性」は流行語の一つだと書かれています。そして生産性に過度にこだわる「生産性依存」といった行動まで指摘されています。

「依存」という言葉がついていますが、正式な病名ではありません。しかし大学の研究者が注目するほどの問題ではあるようです。「生産性依存」的な行動は、一時的には成功をもたらすかもしれません。しかし生産性に集中するようになると、さらなる生産性を求めるようになり、生産性を伴う行動からの離脱時には、不安の高まり、抗うつ症状、恐怖心の増加といった状態を引き起こすようです。

また「生産性依存」的な行動を肯定的にとらえる人が多く、会社や社会がその行動を評価する傾向にあるため、事態が深刻化しやすいともBBCは伝えています。確かに仕事の効率化に力を入れている人は、高く評価されるでしょう。そして仕事すればするほど、効率化はレベルアップしていきます。

テキサス大学ダグラス校のサンドラチャップマン博士は、「生産性依存」の傾向性について、次のようにコメントしています。

「多くの人は離婚で家族がバラバラになるか、メンタルへルスが悪化するまで、それが引き起こす有害さを理解しません」(「When productivity becomes an addiction」 Jessica Mudditt/BBC)

長期的に見れば、有害な影響は短期的な利益(メンタルが悪化するまでお金を稼いだことなど)を上回るようです。

6つの兆候に注意

ニューヨーク市立大学ハンター校の教員であり、パフォーマンスコーチのMelody Wildingは、「生産性依存」の傾向には6つの兆候があると書いています。

・自分が「浪費した時間」をハッキリと認識し、そのことで自分を責めている
・生産効率を上げるテクノロジーに、どっぷりつかっている
・自分が口にするのが最も多い話題は「死ぬほど忙しいこと」であり、「忙しい」という言葉に好印象を持ち、「暇」は怠惰を連想してしまう
・とにかく受信メールが気になって仕方がない
・to doリストを1つしか消せない日に罪悪感を感じる
・数ヵ月前に話していたプロジェクトに友人がようやく着手したと聞いて心底驚いた

多くの「生産性依存」の傾向のある人は自身の依存傾向を認めないため、上記のような行動が行き過ぎだと気づくことが、依存から抜け出す一歩だと、Melody Wildingは書いています。

「生産性依存」傾向の明確な判断基準はありませんが、複数の答えが自分と一致するようなら生産性の向上に夢中になり過ぎないよう気を付けた方がいいかもしれません。

また別の記事では、家族との食事をあわただしく終えて仕事に戻るといった行動も、「生産性依存」の危険な兆候だと書いてありました。

「生産性依存」的傾向の3つタイプ

「生産性依存」には3つのタイプがいると、オーストラリア・シドニーに拠点を置く生産性の専門家Cyril Peupionは指摘しています。

①効率に強くこだわるタイプ
彼らの机はすっきりとしており、ペンも色分けされているほどです。しかし、そうした効率化が有効かどうかは検証しません。つまり整理され、効率化された環境の整備だけにエネルギーを注ぎ、実際の生産性には目が向いていないのです。

②利己的な生産性タイプ
自分自身の目標に取りつかれ、他者との協力体制を組むことがないタイプです。自分だけでプロジェクトを進めるので、こちらも真の生産性から遠のいていきがちです。

③量にこだわるタイプ
生産性と生産量を間違えるタイプ。これは「生産性依存」の最も多いタイプらしく、生産性を上げるという名目でどんどん仕事を増やしていきます。結果、やる気をなくして虚脱感に襲われる「燃え尽き症候群」に向かうリスクが高まってしまいます。

この分類には一部の専門家からカテゴリーに収まらない人がいるといった異論の声もあがっているようですが、そもそも研究が始まったばかりなので1つの見方としてあげておきます。

BBCの記事では、本当にクリエイティブな仕事は、効率的ではない、例えばぼーっとした時間で思いつくことが多いことを指摘しています。効率化への過度の集中は、結局、効率化から遠ざかるという点においても避けた方がよさそうです。

メンタルヘルスについて興味のある方は、こちらもご覧ください。

参考:「When productivity becomes an addiction」(Jessica Mudditt/BBC)/「6 Signs You’re a Productivity Addict」(Melody Wilding, LMSW/『Psych Central』)

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