『ゼロ秒思考』(ダイヤモンド社)という本が話題です。2013年12月の発売なのに、2020年度には過去5年で最多の売り上げを記録。累計では30万部を突破しました。その人気の秘密を、セロ秒思考の方法とともに紹介します。
- 1日10分で頭が整理される
- どんどん紙に落とし込む
- 読み直しは2回だけ
- 話題の心理学のトピックスとも一致
1日10分で頭が整理される
著者の赤羽雄二氏は世界的なコンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーで14年間働いた経験を持つビジネスマンです。そんな著者が独自に考えた頭が良くなるトレーニング方法をまとめたのが本書です。
その方法は意外とシンプル。A4の紙にメモを取るといったものです。
著者によれば、このメモ書きを実践することで、深く・はやく考えられるようになり、劣等感が減って腹が立つことも少なくなっていくそうです。そしてメモ書きをすることで、頭が整理できるので急成長するとも指摘しています。
しかも必要なものは紙とペンだけ。時間も1日10分程度というお手軽さです。
Web上には実践してみた結果を書いている人もいましたが、続けることができれば、それなりの効果が期待できそうです。
どんどん紙に落とし込む
では、赤羽氏の推奨するメモ書きの方法を、簡単にまとめておきましょう。
①A4用紙を横置きにする
②右上に日付を書き、左上にタイトルを記す
③左揃えで3分の2ぐらいの幅に、4~6行、20~30文字で1分以内に書く
④毎日10枚書く
⑤スピードを重視し、自分が読める程度の文字で書く
思いついたことはアイデアだろうと、そのときの気持ちだろうとドンドン書いていきます。思い立ったらすぐに書けるように、A4の紙とペンは複数の場所に用意しておくといいそうです。
また、同じようなテーマでも気にせずに書いて構いません。
赤羽氏は、このメモ書きを「アクティブ瞑想」だと評しているので、頭に浮かんだことを吟味せずに、どんどん紙に落とし込んでいきましょう。夢中になってペンを動かしていくなかで、言葉にならなかった気持ちやアイデアが整理され
ていくのだそうです。
読み直しは2回だけ
じつは心理学にも、書くことで心のモヤモヤを解消する「ジャーナリング」という手法があります。これは頭に浮かんだことを、ひたすら書いていくというもの。頭に浮かんだものを、そのまま文字化することで、自分のことを客観視できるようになったり、「今、ここ」に集中するマインドフルネス同様の効果があるとも言われています。
そうしたメンタルヘルスケアに加えて、頭脳を鍛えられるというのが、赤羽氏の推奨するメモ書きの特徴でしょう。また面白いのはアイデアなども書いているのに、5~10個に分類したクリアファイルに溜めていくだけで、見直すのは3ヵ月後と6ヵ月後の2回。流し読みでいいそうです。そして半年後の読み直しが終われば廃棄していいとのこと。というのも、このメモ書きの内容を、人はけっこう覚えているのだそうです。
話題の心理学のトピックスとも一致
人生100年時代となり、就労期間も長くなったことから、社会の変化に合わせて勉強する機会も増えています。そのため脳を活性化したいという思いも、強くなっているのかもしれません。
またメモ書きによって自分を客観視できるという指摘は、最近注目されているメタ認知にもつながります。メタ認知とは、自分の認知活動を客観的にとらえるもので、メタ認知が高まればさまざまなことに冷静に対処できるだけではなく、柔軟に対応できるようになると言われています。
メタ認知を高めるためには、自分が無意識に行っていた行動や考え方を観察することが重要だと言われており、先述したジャーナリングもメタ認知を高める効果があるそうです。
このようにまとめてみると、近年、注目されている心理学のトピックスと重なりあう部分も多く、ベストセラーになっているのも納得でしょう。
今日はベストセラーの『ゼロ秒思考』を紹介してみました。
仕事や日常生活に役立つ心理学の知識に興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:『ゼロ秒思考』(赤羽雄二/ダイヤモンド社)