新型コロナウイルス対策で、「手洗い」は専門家からも強く推奨されています。ところで手洗いは、心理的にはどんな効果があるのでしょうか?「手洗い」の心理効果について調べてみました。
- 自分が持ち帰るCDの評価は高くしたい!?
- 手洗いでバイアスが消える
自分が持ち帰るCDの評価は高くしたい!?
感染症の専門家がインタビューで、新型コロナウイルス対策としては手指消毒を徹底するようにと話していました。医師であるその専門家は、1日20~30回もアルコールで消毒しているそうです。何かを触ったら消毒するという習慣が身に付けば、より安全に生活できるそうです。
ついつい忘れてしまう手洗いや消毒ですが、こうした行動は心理的などんな効果があるのでしょうか?
米国ミシガン州のリーとシュバルツ両氏が、2010年に『サイエンス』に掲載した論文は、手洗いの心理的効果を明らかにしています。
実験では、まず30枚のCDから上位10枚をランキングしてもらいます。その後、実験参加者が5・6位にランク付けしたCDのいずれかを持ち帰ることができると発表します。つまり、ここで持って帰るCDが決まるのです。
その後、改めて先ほどの10枚のCDを再評価します。すると自分が持って帰るCDのランクを高く付け直す傾向が確認されるのです。これは自分が手にするCDの評価が低いと不愉快に感じるという気持ちが根幹にあります。つまり所有するなら自分で納得したものにしたいという心理が、ランキングの変動を生んだそうです。
実際に再評価した人は、はじめのランクより2~3位くらい高いレベルにランク付けしたそうです。
手洗いでバイアスが消える
さて、ここからが手洗いの効果です。
上記の実験は過去にも成果が出ているものですが、この評価と再評価の間に手洗いを入れたのです。結果、再評価のときにランク付けの変動がほとんど起こりませんでした。
どうやら持ち帰れるCDを高く評価したいといった気持ちからの自由を、石鹸で手を洗ったことで手に入れたようです。
そもそも、この再評価でのランキング変動は、認知バイアスと呼ばれる考え方の偏りよって生まれるものです。本来のランキングを変えた認知バイアスが、手洗いによって消えたということは、余計な「偏り」が消えたともいえそうです。
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ストレス発散の一つとして手洗いやお風呂などが入るケースがあります。バイアスが消えるだけではなく、ストレス解消にもつながることは、手洗いを習慣化する上ではプラスの情報でしょう。
まだまだ新型コロナウイルスへの対策は続きますが、そうした行動のプラス面にも意識を配って続けていきたいものです。
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参考:『脳がシビれる心理学』(妹尾武治/実業之日本社)