6月24日は「UFOの日」。そこで心理学で研究対象となったUFO関連現象を調べてみました。すると意外なことに研究されていたのは「アブダクション」(宇宙人による誘拐)でした!
- 11人集まれば1人からは「アブダクション」体験が聞ける!?
- どうして曖昧な記憶が宇宙人と結びつくのか?
- 幻覚が起きやすい条件に当てはまる
- 金縛りの内容は文化が決める
- 複数の人が同時に経験した「アブダクション」も
11人集まれば1人からは「アブダクション」体験が聞ける!?
UFOを見たという経験がある人は少なくないでしょう。ただ宇宙人による誘拐となると、一気に敷居が高くなります。知り合いに宇宙人に誘拐された人を探すのは日本だと容易ではないかもしれません。
米国でのアンケ―トでは90%以上の人が宇宙人の存在を信じおり、25%の人は宇宙人が地球に訪れていると、答えています。そして宇宙人と接触したことがある、あるいは接触したと主張する人を知っていると答えた人は9%もいるそうです。
人を11人集めれば、「アブダクション」(宇宙人による誘拐)に近しい人が1人は見つかるというのは、なかなかの確率と言えるかもしれません。
どうして曖昧な記憶が宇宙人と結びつくのか?
ハーバード大学の心理学研究者、スーザン・クランシー氏は50人もの「アブダクション」経験者にインタビューしたことで知られています。そして宇宙人誘拐の経験者は、職業や日常生活も一般人とまったく変わりがないことを報告しています。教員や医師などといった職業の人も、しっかりと仕事をこなす一方で、誘拐の体験もまじめに語るのです。
また、スーザン・クランシー氏はインタビューした人全員が、起きたことを詳細に記憶していたわけではないことも明らかにしています。
そして心理的な問題があるわけでもないのに、やや曖昧な記憶を宇宙人と結びつけた理由を、金縛りによる幻覚だと結論づけているのです。
幻覚が起きやすい条件に当てはまる
脳研究に携わる神経科医のエリエザー・スタンバーグ氏も、「アブダクション」は金縛りによる幻覚だと主張する一人です。スタンバーグ氏によれば、宇宙人に誘拐されたと主張する人の話は非常に似通っているとのこと。
①横になっているときに淡い灰色か白色の宇宙人が現れる
②動けなくなる
③被害者のそばに立って見下ろす
④実験や暴行を行う
⑤足音やささやき、振動、体への電気的ショックなどを感じる
そして、このような体験は、「暗闇であること」「身動きが取れないこと」「恐怖を感じていること」という幻覚を見やすい3つの条件に当てはまると指摘しています。
じつは金縛りで幻覚を見るのは、不安に苦しんでいる人であることが、別の研究でわかっています。ストレス度が高い状態で金縛りになると、宇宙人を見る可能性が高まるそうです。
金縛りの内容は文化が決める
さらに金縛りによる幻覚は、地域ごとに解釈が異なることをスタンバーグ氏は指摘します。カナダ連邦政府10番目の州であるニューファンドランドでは鬼婆に襲われた経験となり、カリブ海では洗礼を受けていない乳児の襲撃となり、メキシコでは死者からのいたずらとなります。
金縛り状態で見る幻覚や音・声などが、その地域で信じられている「物語」と結合するというわけです。日本人の金縛り体験の多くが、幽霊との遭遇であるのは、怪談などで長年親しまれてきた経緯を考えれば当然なのかもしれません。
そうなると米国人にとって、UFOや宇宙人がどんな存在なのかが気になるところでしょう。米国にはUFOとの関わりが噂されるものがあります。墜落したUFOが運び込まれているのではないかといった疑惑のある「エリア51」(アメリカ空軍ネリス試験訓練場内の一地区)は、その最も有名な例でしょう。政府がUFOの情報を隠しているといったことも、たびたび話題になるお国柄です。
さらに面白いことには、先述のスーザン・クランシー氏の調査によれば、「過去をやり直す機会が与えられたなら、アブダクションを再び体験したいか」という質問に、「体験しなければよかった」と答えた人がいないというのです。そこには神聖な存在と接触したという想いがあるということです。
日本人で金縛りに幽霊に再度会いたいと思う人は少ないでしょう。しかし三途の川や天国を経験する臨死体験、あるいは神様や仏様との遭遇ならプラスの経験と感じるかもしれません。
ハリウッド映画で『E.T.』や『メン・イン・ブラック』『スター・トレック』など、宇宙人が登場する映画が多いのも、米国人の宇宙人に対する熱い想いと関連があるのかもしれません。
複数の人が同時に経験した「アブダクション」も
ここまでUFOの幻覚論ばかりを書いてきましたが、もちろん米国には「アブダクション」の肯定派もいます。この現象を追いかけているテンプル大学のデビッド・ジェイコブズ準教授は、複数の人が一緒に体験した「アブダクション」があることを指摘。幻覚とは言い切れないといった主張をしています。
真偽は定かではありませんが、UFOの日ぐらい宇宙人の存在を信じて未知の世界を楽しむのもいいかもしれませんね!
日々の生活に使える心理学の活用法に興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『人はなぜ宇宙人に誘拐されるのか?』(エリエザー・J・スタンバーグ/竹書房)/『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』(スーザン・A.クランシー/早川書房)/「『宇宙人に誘拐された体験』を心理学的に分析」(Randy Dotinga/WIRED)